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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/02/09 産経新聞朝刊
【教育再興】緊急報告 荒れる教室(18)忠生中事件から15年
 
 東京都町田市の市立忠生中学校で、英語の男性教諭=当時(三八)=が三年の男子生徒を刺し、逃走する−という衝撃的な事件が起きたのは昭和五十八年二月。事件から十五年たった今、荒れる学校の面影はない。
 同中の林田晃PTA会長(五〇)は「学校に初めて来たとき、掃除が行き届いていてきれいなこと、行事が盛んで上級生がよく下級生を指導していることが印象的だった」と話す。
 当時は、「まかり通るいじめ」「団結なかった職員室」などといわれた。学校は立ち直れるのか−。教師たちは頭を抱えた。「学校再生に最も効果的だったのは『地域との連携』」と関係者は強調する。
 
 「温厚でまじめ」と評価されていた教諭が生徒を刺すまでに追い詰められていった背景には、同校のすさまじい荒れ方がある。
 《問題生徒による授業妨害やエスケープなどが連日毎時間のように起こった。チャイムが鳴っても廊下でたむろし教室へ入ろうとしない者。自宅へ帰り、友達とマージャンをする者。校舎からありとあらゆる物が階下へ投げられた。放課後、ちりとり一杯の吸い殻を集めることさえあった》=同中「学校再建の歩み」より。
 当時、同中二年だった町田市職員の男性(二九)は「それでも、『まさか先生が刺すなんて』と驚いた。しばらく、授業はうわの空だった」と話す。
 事件当時、同中は生徒数千四百三十五人、教員数六十人の都内最大級のマンモス校だった。教師の指導の目は行き届かず、学校と保護者、学校と地域の連携は無に等しかった。
 「もはや、能書きは通用しない。ただ、勇気と実行力が必要」とする新年度から就任した長谷川義縁校長の下、(1)問題行動を見つけたら徹底的に指導する(2)地域と連携して生徒指導に取り組む(3)生徒が進んで学校行事に参加できるようにする−などの路線を決めた。
 五十二年から六十年まで忠生中に勤務した同市立つくし野中の新田利子校長(五二)は「休む時間もなく校内を巡回し、行き届かなかった問題行動を注意し、毎朝、校門で生徒を迎え、『おはよう』とあいさつした。学校と保護者、生徒は一緒になって、落書きなどで汚れた校舎のペンキ塗りをやった」と振り返る。
 校門で毎朝、「一声かける運動」はPTAの力も借りた。学区内全域を五つに分けた地区懇談会も発足させ、学校・保護者・自治会・商店会が一体となって非行防止に取り組んだ。「喫煙など生徒の問題行動を見たら一声かけよう」と訴えるステッカーも作成した。
 「一年たったころは、生徒が授業中に騒ぐことも減り、校舎が壊されることはなかった」と新田校長。
 当時の活動の中には、今も形を変えて続いているものがある。朝のあいさつ運動は保護者が毎週三回、校門に立って生徒にあいさつしている。林田PTA会長は「あいさつによって、お互いが見守り、見守られている−ことが分かり、信頼が生まれる」と話す。
 阿見正三校長(五九)は五十九年まで忠生中で奮闘し、一昨年、再び戻った。
 「当時から始まったことがずっと続いているのを見て、感慨を覚えた」
 
 「地域との連携」は事件後、市内にも広がった。つくし野中では、平成八年から「つくし野中フェスタ」を開いている。学校と地域住民が一体となって開催する手作りイベントだ。企画したPTAの大野信江さん(四二)は「フェスタのおかげで、自分の子供と同じ学校に通う子供たちと家族の顔が地域の中でだんだん見えてきた」と話す。
 同市教委指導室の宮崎和敏副参事(五三)は「教師一人の指導力には限界があり、市は現在、あらゆる機会をとらえて学校を地域に開いている」と学校・家庭・地域が一体となった指導方針を強調した。
 忠生中の玄関には、事件後ずっと住民が生け続けている花が飾られている。この一月下旬は、スプレー菊やチューリップなどが生けてあった。
 
 ■忠生中事件
 昭和58年2月15日午後4時ごろ、東京都町田市忠生の市立忠生中学校の教員用玄関で、3年生の男子生徒2人=いずれも当時(15)=が英語の男性教諭=当時(38)=をからかい、1人が金網の泥よけマットを振り上げたところ、教諭は1人の生徒の胸を果物ナイフで刺し、全治10日間のけがをさせて逃走した。事件の3日前、横浜市で中学生グループが路上生活者を襲って死亡させる事件もあり、戦後、少年犯罪の第3のピークといわれた。今は第4のピークの時期にあたる。


 
 
 
 
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