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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/02/06 産経新聞朝刊
【教育再興】緊急報告 荒れる教室(17)苦悩する教師 暴力に対し制約多く・・・
 
 「毎朝(アメリカ映画の)ロッキーのテーマを車でかけながら出勤します。あれ、元気が出るでしょ」
 名古屋へのベッドタウンとして近年、急速に発展した岐阜県内の中規模都市。その公立中学校の男性教諭(三〇)はこう語った。自ら「登校拒否寸前」とも。
 理由は対教師暴力だ。昨年末の授業中、校舎の廊下にいた二年生の男子生徒を注意したところ、逆に「気に食わねえ」と胸ぐらをつかまれ突き飛ばされた。全治三週間の打撲傷と診断された。
 翌日、加害生徒の親はあやまりに来たが、本人の謝罪については「自分自身がその気になるまで待ちたい」としか言わなかった。生徒自身は「あいつは体が弱いんだよ」と笑っていたという。
 まもなく、その生徒と廊下ですれ違った際、突然、通せんぼをされた。生徒は笑ってガムをかみながら、「ごめんな」と一言だけ言った。
 教師になって五年目。殴られて診断書をとった経験は二回。「ふざけんな」「バカ」・・・。生徒から暴言を浴びせられることは日常茶飯事。つばを吐きかけられたり、目の前でたばこを吹かされたりもする。
 「初めはいちいち腹が立っていたけど、今は感覚がマヒしてしまった」
 そんな時期に栃木県黒磯市で起きた市立黒磯北中の女性教諭刺殺事件。「あすはわが身ですよ」。教諭は肩をすくめた。
 
 東京都日の出町に住む元教員、森田厚さん(六七)は黒磯北中の事件を聞き、十五年前を思い出した。
 教員を対象に行われたアンケート用紙に、森田さんは、「このまま教師と生徒の断絶が進めば、殺人事件さえ起こり得る」と書いた。当時は一笑に付された。
 森田さんは中学校での教師生活後、地元で公立の教育相談所長を五年務めた。その経験から、「黒磯北中の事件はどこの中学でも起こり得る事件」と考えている。全国の教師はほぼ等しく「多くの制約の中で、生徒指導をしなければならない状態」に置かれているからだ。
 「学校側はナイフの存在くらい、気付くべきだった」とする論調も事件後、一部にあったが、「それは違う」と森田さんは反論する。「今は持ち物検査はできないのです。やれば、プライバシーの侵害、人権侵害ということになる」
 黒磯北中の事件に続いて、東京・亀戸でも同じバタフライナイフを使った中学生による警官襲撃事件が起き、各都道府県の教育委員会もようやく、持ち物検査の実施を検討し始めたが、依然、「子供の人権」を理由に、反対論も根強い。
 もう一つ、森田さんの心にひっかかっているのが体罰の問題。
 「どんな教師にも、『体罰はいけない』という意識は浸透していると思う」とする一方、「体罰を肯定するわけではないが、中には必要な体罰もあるのではないか」と指摘する。
 「体罰をするんなら、辞める覚悟でやれ」と森田さんは後輩の教師たちに何度か話した経験がある。
 「話し合い」だけで荒れる教室に立ち向かわざるを得ない後輩たちへのぎりぎりのアドバイスだった。
 
 「体罰なんて、絶対にしないですよ。例えば・・・」と岐阜県の中学校教諭はこんな学校現場の例を挙げた。「生徒が殴りかかってくると、教師は自分のズボンのポケットに手を突っ込むんです」。無意識に反撃して生徒に手を出さないように−という配慮からだ。
 殴られっ放しの代わりに診断書は必ずとる。「損害賠償」「正当防衛」・・・。そんな用語が日常的に職員室に飛び交うようになった。
 「僕はルソーの『エミール』に感動して教育を志した。どんなに問題のある生徒でも悪い人間ではないんだ−という理想を信じていた。けれど現実は・・・」
 教諭は一息ついて、こう続けた。
 「理想を現場に持ち込んでも通用しない。教師にも限界はある。そうした苦悩の中で、みんな頑張っているのです」
 
 ■校内暴力
 昨年十二月、文部省がまとめた「生徒指導上の諸問題の現状調査」によると、全国の公立中学・高校で発生し、教育委員会に報告された校内暴力は平成八年度の一年間で一万件を超え、昭和五十八年度の調査開始以来、過去最悪となった。中学校での発生件数は前年度比三七・二%増(八千百六十九件)。中でも、対教師暴力は四八・二%増と高い伸びを示した。暴力を振るったりした中学生は延べ約一万千六百人で、うち警察に補導されたり少年院に入ったりした生徒は約千七百人に達した。一方、高校での発生件数は前年度比一五・八%増(二千四百六件)だった。


 
 
 
 
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