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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/01/31 産経新聞朝刊
【教育再興】緊急報告 黒磯北中の教諭刺殺事件(12)「普通の子」(中)
 
 中学一年の男子生徒(一三)が女性教諭(二六)をナイフで刺殺する事件が起きた栃木県黒磯市の市立黒磯北中は工業団地の進出などで生徒数が増加し、十二年前にできた新しい学校だ。
 土色の台地が広がり、牛のなき声の響く酪農地区と、アスファルトで固められた新興住宅街が学区を大きく二つに分けている。
 少年は小規模な酪農家の三男として生まれた。両親と高二、中三の兄、祖母の六人家族。離れで暮らす曽祖母もいる。
 少年の家のある地域は国が明治時代の軍師に払い下げ、戦後、旧満州からの引き揚げ者らが開拓した土地。少年の曽祖父、曽祖母も引き揚げ者だ。
 引き揚げ当時を知る主婦(五九)は「火薬やくわを使って、大きな木の株を掘り起こした」と苦労を語る。青木盛久・前ペルー大使の故郷としても知られる。
 少年の曽祖父は当時、地区の代表を務めるなど村の信頼も厚かったという。二代目の祖父は二十年近く前に亡くなり、少年の父が三代目を継ぐ。
 三人兄弟の長男だったという父はそれまで、家業の酪農を手伝う一方、新聞配達もするまじめな人だったという。
 母は少年の小学校時代、PTAの副会長も務めた。「運動神経も良く、ママさんバレーなどでも活躍していた」(別な主婦)、「教育熱心といっても、ヒステリックな教育ママではなかった」(近所の男性)と評判はよい。
 長男はゲーム好きだったというが、二人の兄も少年に悪影響を与えるような子供ではなかった。
 祖母についても「そりゃ、孫をかわいがっていましたよ」と周囲は口をそろえる。
 「あそこの家の人たちはみんな常識的で、面倒見もよかった。夫婦仲が悪いとか、家庭環境が悪いなんてことは聞いたことがない。もっとも、昔の子供は中学でも先生の言うことをちゃんと聞いたが、今の子供はテレビの影響もあるんでしょうかね…」
 引き揚げ当時から一家を知る主婦はこう言って首をひねった。
 
 黒磯北中ができたとき、地域の人は「町の学校に入れてもらった」という感じがしたという。
 市の中心部から学校の辺りまで商店街や新興住宅地が広がる。学区内の小学校教諭は「町の子と比べると村の子は素朴」と話す。「町の子」は新興住宅地の子供、「村の子」は酪農地帯の子供たちだ。保護者間の関係が希薄な点も指摘されてきた。
 事件が起きた二十八日夜の臨時保護者会後、ナイフを持っている生徒が多数いることを知った三年男子の母親は「学校や保護者間のコミュニケーションがとれていなかったかもしれない」と話した。「初めて知った。自分の子にも確認してみるが、学校に行かせるのが不安」(一年男子の父)、「こういう時だけでなく、学校はもっと頻繁に保護者会を開くなどして学校の現状を知らせてほしい」(三年男子の父)と話す親もいた。
 
 事件から二日たった三十日朝、同中の塩山元久校長は、少年が夏休み前の昨年六月と七月に連続四日間ずつの欠席があった事実を明らかにした。担任教諭は「友達や部活での悩みや心配がある」と判断し、計四回の家庭訪問を通じ、少年や家族と話し合っている。
 少年は二学期も断続的に七日間、欠席した。三学期は一日休んだほか、六回の保健室登校を繰り返し、事件直前の二十八日の三時限目の英語の授業では、少年が「殺してやる」とつぶやき、その授業後、悲劇的な事件が起きる。
 学校は「普通の子」と思われた少年の微妙な変化を察知し、何もしなかったわけではない。しかし、家庭や地域社会がその変化にどこまで気づいていたかは分からない。
 事件翌日の二十九日、栃木県教育委員会は、「子供」には他人へのいたわりと思いやりと命の大切さ、「家庭」には子供との触れあい、「地域」には子供たちをしかったり、励ましたりすることを訴える緊急メッセージを作り、配布することを決めた。
 
■14歳未満の少年事件
 少年法や児童福祉法によると、刑罰法令に触れる行為をした十四歳未満の少年(触法少年)の場合、警察は児童相談所に通報。同相談所は犯罪の内容に応じて、少年を家裁に送致する。家裁は調査した上、審判開始を決定。家庭環境などを考慮し、四週間後をめどに保護処分を決める。処分には教護院送致や保護観察、児童相談所への再送致がある。審判途中で少年が十四歳になった場合、初等少年院送致となるケースもある。


 
 
 
 
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