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2001/08/27 読売新聞朝刊
[社説]学級規模 証明された「少人数」のメリット
 
 ひとクラスの人数は何人が適正か。教育界で長い間議論されてきた問いに、初めて科学的な答えが示された。今後の教育改革に一つの方向性を与えるものとして注目したい。
 国立教育政策研究所が、学級規模と学力の関連を調べた調査結果を発表した。全国一万人以上の小中学生に実際に学習到達度を見る筆記試験を課し、学級規模別に分析したものだ。
 学級規模と成績に明確な相関関係はない、というのが一応の結論だ。確かに、少人数になればなるほど成績が上がる、もしくはその逆、といったきちんとした法則性は見られなかった。
 だが、見過ごせないのは、五つに分けた学級規模のうち最も小さい二十人以下のクラスの好成績だ。小学校の算数と理科、中学校の数学と理科のいずれもで平均得点が最も高かった。
 発表では、試験ごとの平均得点差に統計上の有意差はないという。しかし、四つの試験すべてでトップだったことは、偶然ですますわけにはいかない。
 やはり、小規模クラスは学習効率を高める。あるいは少なくともその可能性がある。この結果はそう解釈するのが素直と言えるだろう。
 これとは別の調査だが、日本では学級規模の大小によって教師の指導方法にほとんど違いのないことがわかっている。小規模クラスに応じた指導が工夫されるかどうか。それが、得点差を有意差にまで広げるカギなのかも知れない。
 今回の調査ではもう一つ、子どもたちにクラスでの生活意識について尋ねるアンケートも実施している。
 二十人以下学級では、他の規模の学級と比べて、級友や教師との関係を肯定的にとらえる傾向が目立ち、これには明らかな有意差があった。小規模クラスは、生活指導上もプラスに作用しているらしいことが分かる。
 文部科学省は現在、全国の小中学校で算数、理科など基本教科について、二十人程度の少人数で指導できるように、教員の定数改善を進めている。
 今回の調査結果は、その方向を基本的には支持しつつ、しかし、それにとどまらず、生活単位としての学級も小規模にするのが望ましいことを示している。小規模学級が、将来の重要な検討課題として浮上したと言っていい。
 過去、定数増によって教員一人あたりの持ち時間が減るという実態が何度も指摘されてきた。現在進行中の定数改善が教員のためでなく、本当に少人数指導に生かされるかどうか。小規模学級実現の一つのポイントはそこにある。

 
 
 
 
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