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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1995/08/31 読売新聞朝刊
[戦後教育は変わるのか]日教組の路線転換(5)発足、文部省後押し(連載)
 
 日教組は戦後間もない一九四七年六月八日、奈良県橿原市の橿原神宮外苑で産声をあげた。各地にできた教組を糾合した複数の全国組織を一本化し、結成大会が行われたのだ。
 規約もなく、議事は混乱した。その度に、五人の進行係が走り回り、妥協点を探った。山本種一さん(88)も進行係の一人だった。
 山本さんは、終戦を大阪府池田市の小学校教師で迎えた。校舎は空襲で焼け、授業は青空教室で行われた。「戦争に勝ち抜くための教育をしてきてそれが崩壊し、どうしてよいか茫然(ぼうぜん)自失だった」と振り返る。
 「教育の民主化、文化国家の建設が我々の使命。そのためには教員の組合が必要だ」と本気で思った。同市では教員が自分たちで校長を選挙で選び、市に発令させた。そうした校長を中心に組合結成が進んだ。
 教員組合結成の動きは、戦後数か月後から各地で起きた。岡山県では、戦前の大政翼賛団体がそっくり、組合に衣替えした。のちに第五代委員長となった槙枝元文さん(74)は同県都窪郡早島町の中学教師だった。「組合のことなど何も知らず、新教育指針を読んで勉強した」と言う。
 新しい教育を教師に理解させるため、文部省は四六年五月、GHQ(連合国軍総司令部)の指示で「指針」を作成、全国の学校に配布していた。そこには教組結成の勧めとその役割の解説があった。
 様々な流れが一つになっての日教組の発足。結成大会は当時の文相に激励電報を打った。五一年十一月、栃木県日光市で開かれた日教組主催の第一回教育研究集会では文部省の政務次官があいさつした。日教組と文部省の蜜月(みつげつ)時代だった。
 山本さんは、大阪教組の委員長を経て、公選制の大阪府教育委員となった。しかし、占領政策の見直しが進む中、保革の対立が激しくなり、それが教育の世界にも持ち込まれてきた。結成大会の進行係五人のうちの一人は、日教組を「偏向」と批判して離れていった。
 公選制教育委員制度は五六年、国会に警官隊を導入しての採決で廃止。その後、日教組と文部省は対立路線をひた走ってきた。
 そして今、日教組は新運動方針案で、教組と政府の「パートナーシップ」の確立を呼び掛けている。
 槙枝さんは日教組委員長として、数々の闘争を指揮した。「文部行政の変質に抵抗しなければ、日教組の存在意義はなかった」と、闘争もやむを得なかったとする。
 だが同時に、「日教組と文部省が協力してGHQと交渉し、意見は違っても個々の問題について話し合えた時代がある。あれが本当だ」と振り返る。「今回、学習指導要領を大綱的基準とするなど、文部省も従来より引いている。文部省も変わってきている」と、話し合い路線への転換を評価する。
 一方、結成大会に代議員として参加し、山本さんの後で大阪教組委員長となった東谷敏雄さん(75)は「日の丸、君が代を棚上げにするのは、平和を守るという日教組の方針から変質したと言わざるをえない」と批判する。
 第一回教研に小学校教師をしていた川崎市から自転車で駆け付けた阿部進さん(65)(現在、教育評論家)は「文部省では今、臨教審の実務を担当した若手が中堅官僚に育ち、生活科や学校五日制の実施など、日教組より新しい感覚で政策を推進している」と、日教組=革新、文部省=保守の構図が崩れたことを日教組の転換の背景に見る。
 結成大会から四十八年、公選制教育委員会の廃止から三十九年。新しい形の「パートナーシップ」はできるのだろうか。
 高知市では民間教育団体を通して教委と教組が意見を交換し、教委主催の研修会に教組の意見も反映する。山梨県ではこの夏、県教組、県高教組などによる「甲府空襲を考える戦争と平和展実行委員会」主催の展示会に県教委、甲府市教委、校長会などが後援団体として名を連ねた。こうした動きは各地である。だが、ストレートな協力関係はなかなか結べない。
 「日教組も文部省も教育をよくするために存在するというところでは同じ。しかし、対立の陰で子どもはどこかに忘れられていた。和解は遅過ぎた」と山本さんは言う。
 山本さんは教育委員をやめた後、学校現場に戻る道は残されていなかった。各地の元委員と協力して全国修学旅行研究協会を発足させ、修学旅行列車の運営や各種の調査活動を行ってきた。「教育国家、文化国家の建設という日教組発足の理念を、私なりに考えてのことです」と話す。

 
 
 
 
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