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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1995/08/27 読売新聞朝刊
[戦後教育は変わるのか]日教組の路線転換(3)地域にも参加求め(連載)
 
 「君が代は天皇をたたえる歌だ。上意下達で押し付けるのは戦前と同じではないか」「いや今、ファッショ的なものはストップされている。(反対は)教育の自由を履き違えている」
 文部省は現行学習指導要領で一九九一年度から、卒業、入学式での日の丸掲揚、君が代斉唱の指導は学校の義務とした。情報公開された神奈川県のある小学校の職員会議議事録は、指導要領実施直前の論議を生々しく伝えている。
 日の丸、君が代の性格をめぐる論議の後、組合員による反対派、校長らの賛成派双方が自説の正当性を主張するため、親、地域の反応を引き合いに出した。「親は、職員の反対を押し切って校長が無理強いすることに憤りを感じる」「いや、地域社会は(日の丸、君が代を)大方認めている」
 挙手による採決になり、この学校では校長側が小差で敗れた。しかし、「学校運営の責任は校長がとる」「学校のことは我々(教員)が決めていく」と、論議はさらに続いた。
 日の丸、君が代の学校行事への強制に、日教組は八八年まで、組織的な反対行動を呼び掛けてきた。その後、行動への言及は避けたが、反対の姿勢は明確だった。
 今回の運動方針案では、この問題に一切触れていない。文部省との「歴史的和解」に向け、最大の対立点を棚上げにする措置と受け取られている。
 
◆教師による強制批判の市民意識
 文部省の調査によると、昨年の卒業式で、国旗掲揚は小、中、高校とも九六―九八%、国歌斉唱も小、中学校に比べて少ない高校でも七四・九%で実施していた。だが、このとき十三人の教師が懲戒処分、二十一人が訓告を受けるなど、現場での対立は依然、深刻だ。
 新方針案に埼玉県の中学教師の一人は、「政治取引による原則の放棄だ」と怒る。「組織的後ろ盾を失うことになるから行動には慎重になるが、反対は続けていく」と言う。沖縄県教組は「沖縄では特別の感情がある」として反対声明を発表した。
 一方、都立高校長OBの一人は、「長い間、校長は教委と組合教師の板挟みになってつらい思いをしてきた。こんな時代が来たのかと、感無量だ」と言う。「本当に現場は変わるのだろうか」と半信半疑の面持ちでもある。
 「強制反対」をスローガンにした運動の転換に、学校現場での戸惑いは大きい。だが、「文部省が強制なら、教師や学校だって強制している」と、首をかしげている人も多い。
 兵庫県教組神戸支部による教育研究集会で母親たちが、「生徒に丸刈りを強制する理由は何ですか。髪形は親と子どもで決めることではないですか」と教師を追及したことがある。教師たちの反応は、「一生懸命にやっている我々教師を信用して欲しい」と煮え切らないものだった。
 神戸では最近まで、すべての公立中学で男子生徒は丸刈りが義務付けられていた。それに疑問を持った母親らが「神戸・子どもの人権と健康を考える会」を結成、髪形の自由化を求める運動を起こした。
 各校にアンケートを実施しても回答はなかった。教組の集会に参加しても、はかばかしい反応はなかった。だが、地元紙への意見広告などで運動は徐々に浸透、五年ほど前から各中学は「時代の流れ」などを理由に、次々に自由化に踏み切り、最後に残った一校もこの二学期から校則を改める。
 運動のリーダー、中島絢子さんは、「『丸刈りは文部省が強制しているものではない。教師が決めている。それなのに、なぜ反対するのか』と、組合の先生に詰問されたことがある。日の丸、君が代の問題に限らず、私たちにとって、強制はだれがしても同じなんです」と、教師の意識のおかしさを指摘する。
 「かつて教師は絶対的な善、それをいじめるのが教育行政という見方だった。それが、学校にも市民社会の風を求める親の意識が生まれたことで枠組みが変わった」と、日教組の21世紀ビジョン委員会メンバーの嶺井正也・専修大教授が指摘する状況がある。
 日教組対文部省の対立の構図が崩れようとしている今、「学校や先生も子どもに強制している」という親の声をどう受け止めていくのか。
 新方針案は、学校だけによる教育を見直すため、子ども、教職員、保護者、地域の人による中学校単位の「学校協議会」の設置を呼び掛けた。

 
 
 
 
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