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2000/07/22 毎日新聞夕刊
「18歳で奉仕活動1年」――教育改革国民会議・分科会報告書原案
 
◇小中高での実施に加え
 森喜朗首相の私的諮問機関「教育改革国民会議」(江崎玲於奈座長)の3分科会の報告書原案が22日、明らかになった。子供の社会性や耐える力を養成するため、農作業や高齢者介護などを行うとされた奉仕活動について、満18歳のすべての国民に「一定の試験期間後、できるだけ速やかに満1年の奉仕期間を義務付ける」と明記した。初等・中等教育システムの見直しでは、現在6歳の義務教育の開始年限を1年程度早めることを検討するよう求めた。教育基本法見直しは「改正が必要との意見が大勢を占めた」と記したものの、具体的には各委員の意見の列記にとどめた。(2面に報告原案要旨)
 第1分科会(人間性)は「日本人へ」がタイトル。物質的豊かさや戦後教育の結果、子供が「苦しみに耐える力、自身で考える力を失った」と分析。「甘えるな」などのスローガンを各家庭で定めることや、「教育の日」制定を提案した。また、道徳を教科として位置づけ、小学校で「道徳」、中学校で「人間科」、高校で「人生科」の設置を求めた。
 教育基本法見直しは「国家や郷土、文化、家庭、自然の尊重が抜けている」「宗教教育の規定のため、情操教育が十分に行えず、人格形成に問題が生じている」などの意見を挙げた。
 奉仕活動については、18日の第1分科会最終会合で小中学校で2週間、高校で1カ月間実施を盛り込むことを決めていたが、これとは別に、満18歳の国民への義務付けについては、実現性が疑問視されたことから、表現が注目されていた。
 第2分科会(学校教育)は、「起業家精神を持った人」が校長や運営スタッフとなって市町村が設置する「コミュニティースクール」や教員・学校の評価制度導入を提案した。さらに私学設置の基準明確化や研究開発校制度の拡充を指摘したほか、適性を欠いた教員の転職・免職の必要性にも言及し、教員免許更新制を「検討に値する」とした。ただ教員・学校評価制度やコミュニティースクールには慎重・反対論が出たことも付け加えた。
 第3分科会(創造性)では、「特に優秀な子供」が飛び入学できるよう原則18歳の大学入学年齢制限撤廃を明記。高校での学習達成度試験の導入を全教科について行い、現行の大学入試センター試験を見直し、達成度試験を大学選抜に活用するよう求めた。また、合格ラインに近い学生を暫定的に入学させ、1年間の勉強の成果によって合否を判定する「暫定入学制度」の導入もうたった。
 報告書は今月末に決定し、9月に国民会議総会として中間報告をまとめる。


 
 
 
 
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