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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/04/15 毎日新聞朝刊
[新教育の森]問われる先生の力 手探り「総合的な学習の時間」
 
 2002年度から小中学校で導入される新学習指導要領(高校は03年度)で「総合的な学習の時間」が始まる。21世紀を生きる子供たちにとって、ぜひとも必要とされる「自ら考え、問題を解決する力」を養うのが目的だ。毎日新聞・毎日中学生新聞の全国調査によると、移行期間に入る今年4月から全国の8割以上の公立小中学校で先行して授業が開始される。小学校だけでみると、先行実施は約9割に上る。「何を題材にどのように授業をすればいいか」。各学校では先生たちの試行錯誤が始まるが、前例のない学習だけに、テーマ設定も含めた先生の力が問われることになる。今回の調査結果を紹介する。【五十嵐英美、澤圭一郎】
 
■文部省例示
 47都道府県と12政令指定都市の教育委員会へのアンケートの中で、「実施する学習の内容は、文部省が例示した『国際理解』『環境』『情報』『福祉・健康』の中のどの範囲に入るか」という質問をした。
 これに対し、岩手県は四つの分野の割合を示した上で、「福祉・健康」が小学校では72・5%と最も多く、「この分類に入らない特異なケースは見当たらない」と回答。このほか、▽小学校では「環境」、中学校では「福祉・健康」が多くなるだろう(宮城県)▽小学校、高校とも「環境」を取り上げるところが多い(岐阜県)▽最も多いのが「環境」、次いで「福祉・健康」「国際理解」が続く(北九州市)――などの回答が寄せられた。
 一方、▽文部省の例示にはこだわらない(山形県)▽研究校は文部省の例示テーマに加え「防災」「人権・平和」「郷土」の7テーマ(神戸市)――など、例示にとらわれないケースも見られた。
 
■不安と課題
 「総合的な学習」についての課題や要望、問題点も聞いた。従来の教科学習と違い、教科書もなくマニュアルもないことなどから、不安を抱いている教師も多いという。その点を課題として挙げた自治体も見られた。
 「子供の態度や意欲の変化を見抜く力が教師にあるかどうか。『生きる力』を評価できる目を教師側が持てるかどうか、指導計画が立てられるかが課題」(東京都)というのをはじめ、▽学校は実践例をほしがるが、それでは一様の取り組みになる。創意工夫を凝らしてほしい(秋田県)▽教師は悲しいかな「教える習慣」が身に着いてしまっており、子供の主体性を生かした授業をなかなか行えないのが現状。授業の事前準備が大変で、教師の負担が重いなどの問題点がある(福島県)――など、教師の力量を心配する声も多く寄せられた。
 このほか、▽「情報教育」を掲げながら、実際はパソコンの利用法の習得どまりとなる事例もある。パソコンを使って何をするのか、という視点の掘り下げが要求される(島根県)▽児童・生徒の学力が低下しないか、保護者から懸念が出てくる(大分県)――など、これから出てくる可能性がある不安や課題も示されている。
 
■取り組み例
 「総合的な学習」を始めるにあたって、教員らに事前研修を実施した自治体は8割に上った。学校や教員も、何らかの手掛かりがほしいのが実情だ。外部協力をしてくれる企業などを登録しているところも7割(市町村レベルなどの対応も含む)ほどあった。大阪府では「学校支援人材バンク」という名称で各分野の専門家、文化人、スポーツ選手など約760人を登録。連絡先などを一覧表にして各学校がコンピューターでいつでも見られるようにしている。今年度の予算も1億5000万円を計上するなど、積極的に取り組んでいる。
 すでに事例集を作っているのは25自治体。「指導の指針がある」とするのは17自治体だった。大阪府では、教育センターのプロジェクトチームが小中高校別に小冊子を作成。指導上の注意点やカリキュラムの作成方法、事例紹介が盛り込まれている。高知県では、県内の教育改革の実践事例集をまとめて、その中で総合的な学習について積極的な取り組みを紹介している。
 だが、自由な発想や取り組みを縛る可能性を指摘する声もある。「県でも手引を出すことを検討したが、右へならえの危険性があり、今のところ『総合学習研究協議会』で出すことを検討中」(沖縄県)、「事例集はあるが、指針はない。学校が独自に特色ある活動をするのがねらいなので、指針を示すようなことは避けたい」(東京都)、「各校の主体性、自主性を保つ目的から事例集は作成していない」(青森県)と、あくまで独自性を尊重する姿勢を貫く自治体もあった。
 
◇「地域の人から話」「人権」「芸能」…
 小学校は今年度から、約9割が「総合的な学習の時間」に取り組む。中学校も小学校に比べるとやや少ないが、約8割が先行導入する。小中とも全校が行うとしたのは京都府や鹿児島県、千葉市など9自治体。そのほかも「ほとんどの学校でやる」という自治体が多い。2002年度の本格導入にスムーズに対応できるよう、移行期間の今年度にスタートさせる学校が多いようだ。
 京都市は昨年度すでに全小学校(181校)と全中学校(79校)で試行した。今年度は目標時間を増やし、小学校で年間45時間以上、中学校で35時間程度とする。同市教委によると、京都ならではの伝統工芸や文化について地域の人から話を聞いたり、身近な自然や環境を調べるという課題が多かったという。
 大阪では在日外国人や同和問題など、「人権」を取り上げる学校も多い。大阪市の東淡路小は昨年度、人権をテーマに近くの公園を調査した。
 沖縄県も全小中学校で年間30〜40時間を予定しており、歴史や三線(さんしん)などの芸能を学ぶ学校もある。
 高校は教科制のため、総合的な学習を取り入れにくい。専門学科高校では「課題研究」の時間で、企業や福祉施設の訪問など、総合的な学習をすでに行っており、移行しやすい。しかし普通科は取り入れたことがなく、課題設定が難しい。今年度はまだ文部省や県の研究校での試行がほとんどのようだ。
 山形県は3校でスタート。進学校の山形北が将来の進路学習に力を入れようと、夏休みに職場の就業体験を実施する。
 
◇試行錯誤すればいい
 ベネッセ教育研究所・高階玲治顧問の話 先行実施率が「小中学校で8割」という数字は予想していたより高い。特に中学校は時間割の操作が難しく、総合的な学習の時間を生み出しにくいが、かなり前向きな雰囲気になってきたということで、今後に期待が持てる。高校は特に普通科高校が何をやればいいのか教師側に戸惑いがあるようだ。移行期間は「試行期」というぐらいの余裕を持って、最初から最良のものを目指すのでなく、試行錯誤しながら、本物に近づけていけばいい。
 
◇02年度スタート−−総合的な学習の時間
 国語や数学など従来の教科学習の枠を超えて、生活や生徒の興味に根差した問題解決型の学習をする時間。1996年、当時の中央教育審議会で「生徒が主体的に学ぶ重要性」が強調され、導入を推進することが文相に答申された。さらに98年の教育課程審議会答申で、具体的に小中高校などに導入することが提言され、2002年度から始まる新学習指導要領(高校は03年度から)に盛り込まれた。小学3年から高校まで、週2〜4時間が標準とされており、地域の特色などを生かした学習が奨励されている。評価については従来のような数値によるものはなじまないとされているが、具体的には現在検討中だ。
 
◆8割が先行実施−−本社全国調査
◇今年度の実施予定◇
 
  小学校 中学校
北海道
札幌市 99.5% 52%
青森県
秋田県 ほとんど ほとんど
岩手県 ほぼ全校 ほぼ全校
宮城県 約8割 約8割
仙台市 全校 96%
山形県 ほぼ全校 ほぼ全校
福島県 ほとんど ほとんど
茨城県
栃木県 ほぼ全校 ほぼ全校
群馬県 98.8% 91.6%
埼玉県
千葉県 86.1% 88.7%
千葉市 全校 全校
東京都 9割 6割
神奈川県 ほとんど 多く
横浜市 50%程度 十数校
川崎市 ほぼ9割 ほぼ5割
新潟県
富山県 97.3% 89.4%
石川県
福井県
山梨県 約9割 約9割
長野県 7割以上 6割以上
岐阜県
静岡県 88.4% 81.0%
愛知県 約3分の2
名古屋市 全校 全校
三重県
滋賀県 ほとんど ほとんど
京都府 全校 全校
京都市 全校 全校
大阪府 約77% 約49%
大阪市 35%以上 多数
兵庫県 ほぼ全校 ほとんど
神戸市 全校 全校
奈良県 6割以上 6割以上
和歌山県 約8割 約8割
鳥取県 ほぼ全校 ほぼ全校
島根県
岡山県 全校 8校
広島県 3分の2 小学以下
広島市 95% 95%
山口県 9割以上 7割以上
徳島県 全校 91.3%
香川県 97.5% 92.5%
愛媛県 約8割 約8割
高知県
福岡県 ほぼ全校 ほぼ全校
福岡市 全校 全校
北九州市 全校 全校
佐賀県
長崎県 ほとんど ほとんど
熊本県 ほとんど ほとんど
大分県 約70% 約45%
宮崎県 ほとんど ほとんど
鹿児島県 全校 全校
沖縄県 全校 全校
(静岡県の実施率は県教頭会調べ)


 
 
 
 
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