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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/01/29 毎日新聞朝刊
[社説]荒れる学校 再生へ果敢な取り組みを
 
 栃木県の中学校で女性教師が1年生の男子生徒に刃物で刺され、死亡するという衝撃的な事件が起きた。動機や背景などまだはっきりしない点が多いが、事態は重大であり十分に時間をかけて解明してほしい。
 教育現場ではこのところ「荒れる学校」の再来を憂慮する声が上がっていた。授業が成立しない「学級崩壊」が、小学校の高学年段階から、あちこちで起きている。いじめは依然として深刻な状況にあり、校内暴力は過去最高を記録した。特に中学校での対教師暴力は、1996年度には前年度のほぼ5割増にあたる1300件に達している。
 教育、学校の意義が改めて問われている。先に鹿児島県で開かれた日教組の教研集会でもこの問題に論議が集中した。社会構造が変わってきており、学校再生は容易ではない。教師の苦悩も深いが、それでもまず学校現場での改革がなければ、始まらない。とりわけ学校生活の大半を占める授業の改革が、大切になるだろう。詳細のわからない栃木の事件と結びつけるわけにはいかないが、「荒れる学校」に立ち向かう一つの取り組みとして、福島県三春町の試みは参考になるのではないか。
 教育課程を考える分科会で、三春町の中学校教師は、授業の1単位時間を50分に固定せず、「1モジュール25分」とする試みを報告した。集中力の必要なものは短く、時間をかけた方が良いものは、長くするなど自由に組み合わせる方式だ。
 こうした授業改革は、三春町では全小中学校で取り組まれている。きっかけは、荒れる学校に対する危機感からだったという。中学校に警官が出動するなどの騒ぎが相次ぎ、荒れる学校が社会問題になったのは、80年ごろだったが、三春の中学校でも例外ではなかった。
 「なぜ子供たちは荒れるのか」。新任教育長のこの問いかけから、三春町の改革は始まった。学校が面白くないから、だという。なぜ面白くないのか。授業がわからなくて苦痛だから。なぜわからないのか。個々の子供の状況におかまいなく、画一的一斉授業で、大量の知識を覚え込まそうとしているから――。
 それならそこから変えていこう、と決まった。子供の夢を育てる学校にしようと、まず取り組んだのは校舎の改造である。四角い教室が一列に並びその北側に長い廊下という殺風景な校舎を、図書スペースを中央に配し、オープンスペースや吹き抜けを組み合わせた明るい開放的な構造にした。
 ソフト面でも、一つの授業に複数の教師がかかわるチームティーチングを積極的に採用。複数の教科を組み合わせた合科をいくつか用意して選択させたり、自ら課題を見つけ、調べ、まとめる総合学習を実施するなどの試みにも取り組んだ。モジュール制もそうした流れの中で出てきた。ゆとりの中で生きる力をはぐくもうという狙いが見てとれる。
 学校を変えるには、対症療法ではなく、学習の変革に持っていかなければいけないとの意見は、いじめ・不登校問題を考える分科会でも出された。大事な視点だと思う。衝動的な行動が増えるなど、状況は難しくなっているが、学校でできることはある。教育委員会や地域社会がそれを支え、バックアップしていくことが必要だ。さらに多様で、果敢な取り組みを期待したい。


 
 
 
 
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