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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1997/01/04 毎日新聞朝刊
「個性」伸ばせる学校に 新しいシステム模索――「教育改革」具体化の年
 
 1997年は教育改革をめぐる議論が沸騰する年になりそうだ。公立校での中高一貫教育、大学や高校の入試改革、数学など特定分野で優秀な子供の才能を伸ばすための「飛び級」など中教審が検討しているテーマに一定の方向が示される見通しだ。1872(明治5)年の学制発布=「第1の改革」、そして1947(昭和22)年の戦後学制スタート=「第2の改革」から今年は50年の節目に当たる。改革論議を具体化し「第3の改革」を形で示す時にきている。【城島徹】
 
◇中高一貫教育
 中教審のディスカッションで合意しつつあるのが公立の中高一貫教育だ。
 学制改革の論議は、71年の中教審答申が小中高の接続の見直しについて、一部の学校での試行を提起。「時期尚早」という現場側の抵抗があった。続いて、87年の臨教審答申が「6年制中等学校」を提言。これも「受験競争を低年齢化させる」との批判があるうえ、「6・3・3制」の見直しに対する消極論が根強く、議論が宙に浮く状態が続いた。
 現在の学制の枠内では宮崎県立五ケ瀬中学・高校のわずか1校だけが都道府県立として設置されている。94年に宮崎県北西部の過疎の町に開校した同校は、今春以降は中学生が無試験で高校に進学する本来の一貫体制に入る。
 「森の中で環境を学ぶなど、地域の特性を生かした教育カリキュラムを実践しています」。岩切正憲校長は説明する。全国からの視察が殺到。中教審は岩切校長からヒアリングした。現地視察した小杉隆文相も「積極的に検討する意味がある」と、五ケ瀬の取り組みを評価している。
 「いじめ」の多発に苦慮する中学校現場から見ると、高校受験のない点は大きな魅力という。中教審も「選択肢の一つとして公立の一部に導入することは有意義」という意見が大勢を占めている。
 「この中教審の動向を複数の自治体がかたずをのんで見守っている」と文部省幹部は言う。「五ケ瀬」に続く動きが出てきそうだ。
 「十五の春を泣かすな」という高校入試への複雑な思いは、昨春の高校進学率が過去最高の96・8%になったことも併せ、中高一貫校に対する積極論の追い風となっている。
 
◇入試改革
 古くて、また常に新しいテーマだ。中教審は受験競争の緩和はもう先送りできないと意識し「高校と大学入試の大胆な改革論議を提起する」(有馬朗人・中教審会長)考えだ。
 企業の思惑を背景に、学歴偏重の「いい学校」主義がはびこる大学入試の改革論議も焦点だ。親や高校の勧め、あるいは偏差値を目安に受験して入った大学で「やる気」を喪失してしまう“燃え尽き症候群”に陥ったり、授業中に「私語」をまん延させる学生の実態も「受験とは何か」を再検証する手掛かりとなる。
 住専や薬害エイズ問題、福祉を食いものにした汚職など、失態を重ねた霞が関の官僚への失望が“偏差値エリート”への失望となり、詰め込んだ知識量を測るペーパーテストに対する不信感が重なる。従来の評価のモノサシを変えようという社会の怒りも入試改革の大きな原動力となる。
 ペーパーテストへの依存を離れる試みは広がりそうな気配だ。今春の国公立大入試の2次試験は、面接や小論文を課す大学が増加。1次試験(大学入試センター試験)で一定レベルの学力を確認し、2次試験では大学の特色を反映させた試験を、という傾向だ。2次試験を小論文や面接だけにする大学は134大学(全体の91%)で406学部となり、前年より16校、57学部増える。
 「改革には少子化の今こそチャンス」という見方がある。昨年度入試の私大の延べ志願者は大学で383万人(前年度比13万人減少)、短大55万人(同7・6万人減少)で、4年連続して減少した。「少子化が進めば、これまでの過熱した受験競争も緩和する可能性があるのではないか」と有馬会長は話す。
 
◇飛び級
 中教審は大学入学年齢の制限緩和による「飛び級」を念頭に置いて議論している。義務教育段階では消極的な意見が大勢だ。
 経済成長に行き詰まった産業界の「個性的で創造性ある人材がほしい」との思惑が背後にある。だが、「早期エリート養成教育」に直結しかねない発想だけに、「日本の風土に相いれない考え方」と慎重な対応を求める声もある。
 こうした点について、有馬会長は「勉強が優れてできる子には少し進んだことを教える一方で、ちょっとつまずいた子にはていねいに教える。あくまでも子供たちが元気を出し、希望を持つことを前提に、平等の原則をちょっぴり変えることが可能かどうか」をポイントに挙げ、飛び級に限らず、習熟度別に学ぶシステムも視野に入れている。
 名古屋大など複数の大学では、文部省のパイロット事業として「特定の能力を持つ生徒に大学教育を受けさせる」科目履修生を受け入れており、高校生たちが大学の授業を体験。土曜の午後などを利用して授業をしている名古屋大は出席数とテストの点数を大学入学後の単位に認定する試みを始めた。
 
◇戦後教育年表◇
1947年 ・教育基本法、学校教育法施行・新学制による小学校、中学校発足
(6・3制スタート)・日教組結成
48年 ・新制高校発足
49年 ・中学・高校の「生徒指導要録」を制定
・文部省、中学社会科に「民主主義」の単元設定を通達
51年 ・全国中学校長会議、6・3制の堅持を声明
53年 ・旧制大学が最後の卒業式、新制国立大学が最初の卒業式
・中教審が「義務教育」6・3制の堅持を答申
56年 ・経済白書が「もはや戦後ではない」
60年 ・政府が「所得倍増計画」を打ち出す
62年 ・文部省、高校生徒急増対策を決定
64年 ・東京オリンピック
66年 ・中教審「期待される人間像」
71年 ・中教審「今後の学校教育の総合的拡充整備のための基本的施策」発表。
「第3の教育改革」をうたう
72年 ・学制100年
74年 ・日教組、43都道府県で初めての全一日ストライキ
76年 ・学校給食に米飯導入
79年 ・初めての国公立大共通1次試験実施
81年 ・校内暴力激化。家庭内暴力も問題化
86年 ・東京都中野区立中学校の男子生徒がいじめを苦に自殺
87年 ・臨教審答申。個性重視。生涯学習体系への移行をうたう
90年 ・初めての大学入試センター試験
・兵庫県の高校で女子生徒の校門圧死事件。
「体罰」や「校則」の論議広がる
91年 ・中教審「教育改革」高校の総合学科設置と入学者選抜の改善
92年 ・新学習指導要領施行。
文部省は脱偏差値を唱え「業者テスト」追放を指示、
「新学力観」に基づく教育を提起
・2学期から学校週5日制月1回試行始まる
94年 ・愛知県でいじめを苦に男子中学生が自殺。
その後も全国で相次ぎ、文部省が対策に乗り出す
95年 ・1学期から学校週5日制隔週実施に移行。
日教組、文部省との協調路線明確に
96年 ・文部省「いじめ対策」を発表
・中教審「21世紀初頭をめどに学校週5日制の完全実施」を答申。
これを受け、教育課程審議会が発足、学習指導要領改定に着手


 
 
 
 
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