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1996/08/08 毎日新聞朝刊
[特集]データは語る・日本の学校はいま――96年度・学校基本調査(その3止)
 
◇大学・短大への進学率、今世紀中に「2人に1人」
●高学歴神話●
 今春の大学・短大への進学率(浪人生を含む)は男子44・2%、女子48・3%、男女平均46・2%と、いずれも過去最高を記録した。3年前の93年度の男女平均40・9%に比べ5・3ポイントも増加。この傾向が続けば、今世紀中にも50%台に達し、「2人に1人」が大学・短大に進学する時代が到来しそうだ。進学熱の指標となる大学・短大への現役志願率は54・4%で前年度より0・2ポイント増の過去最高で、この予想の有力な根拠といえる。
 また別表のように、大学に絞ってみると、進学率はこれも過去最高。志願率と併せみても女子の大学進学志向が強まり、全体を押し上げていることが分かる。女性の社会進出や、就職での有利不利など、さまざまな社会的要因がからんでいるとみられるが、キャンパスの女子学生の増加は今後も衰えることなく続きそうだ。
 また地域別学生数をみると、大都市圏への「偏在」傾向は変わらないものの、東京集中率は相対的に低まり、他地域への広がりもみせている。
 気になるのは、今後の定員がどうなるか、だ。
 文部省が86年度から期限付きで認めた大学・短大の臨時定員枠(臨定)の約11万人分の扱いが注目される。臨定は第2次ベビーブームで増えた受験人口に対応する措置で、受験人口が減少する2000年までに全廃する計画だが、大学審議会は臨定を一部残す方向で見直し作業を進めている。
 11万人という数字は、今春の大学・短大の入学定員約69万人の約16%に相当し、その9割は私大が引き受けている。大学審の高等教育将来構想部会は、2000年に臨定を全廃すれば、私大の経営に重大な影響を与えるうえ、2000年春の入試で志願倍率が跳ね上がり、受験生に混乱を与えるとみる。
 同部会は2000年度から10年間の高等教育計画を近くまとめる方針だが、今回の進学率について部会側は「予想以上に進学率が高くなっており、臨定の大幅な修正が必要」としている。
 
◇多様化できるか評価のモノサシ
 住専やエイズ薬害問題に直面し、解決能力も感受性も持ち合わせない官僚の姿に象徴されるように、知識ばかりを詰め込んだ“偏差値エリート”への失望と危機感が指摘されている。大学や企業が偏差値というモノサシに固執する姿勢を改めない限り、学校はさらに魅力を失った存在になるだろう。
 ペーパーテストの学力ばかりを競わせる日本の教育が深刻な「制度疲労」を起こしていることを不登校のデータは示す。高校で成果が表れつつある教育内容や学校運営の「柔軟化」や「弾力化」は、深刻ないじめや不登校を抱える義務教育こそ実践を急ぐべきだろう。
 評価のモノサシを多様化する作業は、社会の価値観を変えることとも密接にかかわっている。
(この記事には図「大学進学の現役志願率」「大学進学率の推移」があります)
 <編集・レイアウト 中坪央暁>


 
 
 
 
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