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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/09/11 毎日新聞朝刊
つきぬ火ダネ=どこへゆく日教組・43年目の分裂・上=表付き
 
 日教組は、九日閉幕した第六十八回定期大会で官民統一の新連合への加盟を決め、新しいナショナルセンター入りをめざす反主流派(共産党系)との分裂が決定的となった。昭和二十二年、三つの教職員団体が大同団結して以来、四十三年目に迎えた痛み。「教え子を再び戦場に送るな」のスローガンの下、戦後の民主教育に大きな影響を与えてきた日教組は、かつて経験したことのない転換期にさしかかった。分裂・日教組の行方は−−。それに伴い教育現場はどんな影響を受けるのか。(敬称略)
 九月五日夜、鳥取市。大会前夜、福田忠義委員長ら幹部が泊まっているホテルで地元の政界や労働界など数十人の関係者を招いてのレセプションが開かれた。大会に来賓として出席する黒川武・総評議長はビール片手に上機嫌だった。
 「日教組はこれまで組織の中でイデオロギーのキャッチボールをやって来た。これからは政府としないといかん。子供や親を味方につけて、文相が会わないと言うならば、首相とじかに会うぐらいにならないと」
 黒川の言葉には労働界の統一を進めてきた総評議長として、官公労組で自治労に次ぐ大部隊の日教組がようやく新連合に加わる、との安どの気持ちがにじんでいた。
 その新連合への加盟を求めた主流派(社会党系)執行部の原案は、賛成二四〇、反対八二、白票一五で可決された。圧倒的多数だが、採決に加わった反主流派の代議員は三十人に満たない。反対「八二」は、主流左派から五〇票以上の反対票が流れた計算だ。
 福田執行部は反主流派や三分の一を上回る主流左派の反対を押し切り、永年の労戦問題に一気にケリをつけた。「硬直したイデオロギー集団」(主流右派幹部)と言われる反主流派と別れて「対話路線」へ明確にハンドルを切ろうというわけである。しかし新連合の一員としてこれまでの日教組運動を発展させていけるのか−−。足もとのハードルは少なくない。
 その最大なものは、日教組を迎える連合側に、なお不信感が根強いことだ。連合側のある幹部は「(反主流派という)火薬庫が来なくなったのはいいことだ」と一応評価しながらも、「日教組の人はモノを教えてやるという態度が強すぎる。自分が正しいと独善的だから一致点を見いだすことが出来ない。それを改めないと新連合の中で孤立するのは目に見えている」。
 今大会、主流左派の不満は新連合の基本文書に「反臨教審」など日教組が絶対に譲れない内容が盛られていないことに集中した。大場昭寿書記長は、新連合の具体的運動方針を詰める統一準備会の場で、日教組の考えを反映させると答弁したが、元来ハダ合いの違う連合側に「日教組独善論」が強い限り、日教組の思惑通りになるか難しい。
 さらに反主流派と別れても、自民党顔負けの主流派左右の派閥争いがある。路線論争と人事をめぐる「四百日抗争」で、運動はあちこちで停滞したばかり。今回も再選された福田委員長の任期や査問委員会設置に伴う規約改正問題で左右が衝突、調整機関である「社会党員党友協議会」が連日開かれた。特に規約改正では左派が強く反発し、同協議会が午前三時過ぎまで延々と続けられた日もあった。
 左派のあるリーダーは「新任教員の組織率がガタ落ちしているのは、彼らの教育実践上の悩みや不安に日教組が応えていないからだ。こんな内部抗争にエネルギーを使っているから有効な手だてが打てない」と自嘲(ちょう)気味に話していた。
 左右両派の対立は路線問題が背景にある。日の丸・君が代や反臨教審闘争で福田執行部が重心を「右」へ移しすぎると、左派強硬グループが新たな“火薬庫”にならない保証はない。
 日教組には労働組合としての顔と、子供達と日々接し教育を担う教師団体としてのそれと、二つの顔がある。労働組合の“路線”という要因によって組織が分裂したため、「国民の財産」と日教組が胸を張る全国教研集会も来年からは別々に開かざるを得ない。分裂で組織力が落ち、組織人数が減少すれば、日教組が掲げる平和や民主教育にも暗い影を落とすことになる。
 福田委員長が海部首相とじかに会う、という状況設定は、必ずしも新連合に入ったからといって成立するものではない。分裂を乗り越え、子供や父母、若い新任教員が納得出来る教育改革に取り組めるのか、それとも教師団体としての顔すら大幅に後退するのか−−。日教組総体の力量をどこまで回復できるのかにかかっている。


 
 
 
 
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