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1989/02/11 毎日新聞朝刊
「日の丸・君が代」守らねば処分――新学習指導要領
 
 天皇の記述が増え「国旗・国歌」を徹底したのが今回の新学習指導要領案の特色。大喪時の弔旗掲揚や黙とうなど学校現場はピリピリしており、「守らねば処分」の強い姿勢に、日の丸・君が代や管理教育に反対する教員や父母は警戒を強めている。
 キリスト教関係者や教師、市民らでつくる「日の丸・君が代の強制に反対する全国署名会議」(懸橋亘代表世話人)はこの日、二万一千十五人の署名を添えて、総理府、文部省に「指導要領に日の丸・君が代の強制を持ち込むな」と要請した。
 新指導要領には、小学校六年の社会で天皇の記述が現れた。歴史で「大陸文化の摂取や大化の改新などの様子について調べて、天皇を中心とした政治が確立していったことを理解すること」と指示、「内容の取り扱い」にも現行(昭和五十二年改定)にない「天皇についての理解と敬愛の念を深めるようにすること」という記述が登場した。前々回(昭和四十三年)には同様の記述があったが、「深めるようにすることが必要である」と今回より緩やかだった。 一方、日の丸・君が代は小、中、高とも特別活動で掲揚、斉唱を徹底、「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」と指示、現行の「国民の祝日などにおいて儀式などを行う場合には」という緩やかな表現を「入学式、卒業式」と特定。最後の部分も現行の「させることが望ましい」から「するものとする」と強めた。
 六年社会の「内容の取扱い」では「我が国の国旗と国歌の意義を理解させ、これを尊重する態度を育てるとともに……」と前回はなかった国旗・国家の項目が復活。前々回は「わが国の国旗に対する関心や、これを尊重する態度を深めさせるとともに、諸外国の国旗に対しても同じ様にこれを尊重する態度が必要なことを考えさせるよう配慮することが必要である」と持って回った表現で国歌はなかったのに、今度は国歌も入れた。
 天皇の記述について文部省は「前回改訂で削除した部分を復活させただけ」と説明、「国旗・国家」についても「入学式、卒業式という人生の節目で国に対する帰属意識を持つことは大切」という。
 これに対し父母や教師らは「学校が一層、息苦しくなるのではないか」「管理教育の柱になるのではないか」と不安を隠さず、日教組も「国家主義を持ち込むな」と訴えた。


 
 
 
 
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