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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/01/01 産経新聞朝刊
【年頭の主張】政治改革から憲法改正へ国家改造の道筋を明示せよ
 
◆国民は被害者なのか
 英国のサッチャー前首相が来日したとき、塩川自治相(当時)に対し「日本の最大課題は政治改革らしいけど、いま何が問題なのか」と質問した。
 塩川氏は派閥政治の弊害を説明したうえで「議員は金をもらうために派閥に入り、族議員にならざるをえない。それもこれも中選挙区制が原因で、同じ党の人間が相争うから政治に金がかかり過ぎるわけです」と話した。
 するとサッチャー前首相は「それで分かりました。いまの日本は百年前の英国と同じです」と言ったあと、別の機会に「じゃあ、日本の国民は一体、何を基準に議員を選んでいるのでしょうか」と疑問をぶつけてきたという。
 日本は顔が見えない国だという。日本の政治にも外交にも、国家の理念、原則というものがない。そのため目先の利益だけで動くヌエ的な国だといわれてきた。しかし、政府がそうなら、その政府をつくってきた国民もまた、そうなのではないか。
 ロッキード事件からリクルート、東京佐川事件と繰り返される政治スキャンダルで、国民ははっきりと「ノー」の答えを出したのかどうか極めて疑問である。政治腐敗に対して国民が真に怒りを感じているのなら、日本の政治を震かんさせるほど明快な投票行動を取れたはずである。しかし結果はどうだったか。
 国民は何を基準に選んでいるのかというサッチャー女史の疑問に対し、塩川氏は言葉に詰まって答えられなかったというのも当然である。
 有権者はむしろ、地元への利益誘導型の議員を選ぶことで、金がかかる選挙と政治腐敗を自ら招き寄せているのではないか。国民は政治の一方的被害者ではありえない。福沢諭吉が「学問のすゝめ」で述べた次の言葉は、いまも政治の実相を示している。
 《我日本国においてもこの人民ありてこの政府あるなり》
 
◆平和は“国益”である
 国民が利益誘導型の政治を選択するなら、政府も政党もそのレベルに落ち込んで行くのは、少数者による寡頭政治を否定する限り必然の経過である。いま、国際社会から決断を迫られているコメ問題にもそれは現れている。
 世界の自由貿易体制の発展は日本の国益に合致する。経済大国であり通商国家である日本の生きて行く道は、そこにしかない。だれもがそのことを認めていながら、コメ問題で自由化、関税化を打ち出した既成政党がひとつもないのは何を意味するのだろうか。
 自由主義経済の理念も国益さえも主張することなく、ただ農村票を失うことを恐れ、攘夷派のように動いているのが既成政党の姿である。
 さらに日本の将来にとって、自由貿易体制より重要な条件がある。世界平和の維持である。平和こそ大国日本の存立の基盤であり、それ自体が日本の国益といっても過言ではない。
 ところがPKO論議に見られたように、国連の平和維持活動への自衛隊派遣にさえ体を張って反対するポーズを取らなければならなかったのが日本の野党第一党、社会党である。
 ドイツではどうだったか。基本法(憲法)はNATO圏外に部隊を出すことを認めていないが、野党第一党の社会民主党は基本法の改正方針を打ち出し、最近では武力行使による国連の平和創設活動(PMO)についても、ドイツ国防軍の派遣を積極的に検討することを党大会で決定している。
 地域の平和を守る段階から、国連軍または多国籍軍による平和の創出へ、冷戦後の世界は大きく踏み出そうとしているのである。
 
◆改憲是非で政界再編
 わたしたちは昨年、首相が各界の有識者を集め、憲法臨調(臨時憲法調査会)を設置すべきことを提言した。その構想は実現に至っていないが、この一年、憲法論議が急速に盛り上がってきたことは事実である。
 民社党は憲法見直しのための「世界平和と憲法問題特別委員会」(仮称)を党内に設置することを決めた。日本新党も政策大綱で、現行憲法の平和主義の原則を堅持しながら憲法改正に取り組む方針を示している。さらに社会党の若手改革派からも安全保障基本法の制定が提唱されるに至った。
 これに対し宮沢首相は昨年七月、参院選中の記者会見でオランダ人記者の質問に珍しく気色ばんでこう答えている。「今の憲法は立派だと思っているから、わたしは変えるつもりはない」
 これが宮沢首相の揺るぎない意思であるなら、自民党は現行憲法擁護に固執する守旧派と、羽田派などの改革派に分離すべきではないか。
 これから動き出す政界再編の試金石は、憲法改正問題だとされている。各党、各派は明快に理念を示し、国家改造の道筋を国民の前に明らかにすべきである。それによって有権者は国家的次元での選択の基準が得られるのだ。
 かつて行革の牽引車となった臨調の土光会長は「政治改革なくして行政改革はない」と断言した。いまこの国は許認可行政から国会のあり方まで、すべての面で制度疲労を起こしている。改革は待ったなしである。
 行革から政治改革へ。そして土光氏の言葉を踏襲するなら、憲法改正なくして真の政治改革はない。今年こそ、そのための第一歩を踏み出す国家改造元年でありたい。


 
 
 
 
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