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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1992/11/23 産経新聞朝刊
【21世紀への提言】政治改革 憲法見直し含む改革を
 
 今、国民は政治に強い怒りを感じている。リクルート、東京佐川急便事件など相次ぐ金権スキャンダルによって、国民の政治に対する信頼感は根底から崩れ、絶望感さえ広がりつつある。政治への絶望は民主主義の基盤そのものを揺るがしかねない。
 国民の信頼を早急に回復し、国際社会への貢献を立派に果たすためにも、今こそ大胆な政治改革を断行すべき時だ。
 
◇国民は怒ってる
 民主主義の基本は、自由で公正な社会を実現することにある。社会の各分野で公正な競争と、真面目な努力が正当に評価されてこそ、はじめて国民は活力を持つ。その点で、現在のわが国の政治構造はこの基本を大きく踏み外している。
 東京佐川急便事件に対する国民の怒りは、庶民感覚からかけ離れた巨額のカネが政治家の懐に右から左に流れ込んでいる現実、そして政治家と 着することで悪質企業がどんどん業績を伸ばしてゆける構図に向けられている。国民の真面目な努力をあざ笑うかのようで、「公正な社会」への“挑戦”とさえいえるだろう。
 最近、政治家が刑事責任を問われた事件として、阿部文男元北海道・沖縄開発庁長官が受託収賄に問われた「共和事件」。株取引にからんだ稲村利幸元環境庁長官の脱税事件などがある。これまでは「政治家がらみの事件は十年に一度」といわれたが、昭和六十三年に発覚したリクルート事件以来、ほぼ毎年のように起きている。その点で「カネ」と「政治家」との“かかわり”は構造的とさえいえるほどに深まってきた。政治腐敗がきわめて速いスピードで進行していることを端的に示している。
 
◇選挙制度に問題
 なぜこれほどまでにカネがかかるのか。
 与野党議員の多くが、現行の選挙制度に問題がある、と認めている。とくに衆議院選挙の中選挙区制が「カネのかかる政治」に拍車をかけている。
 一選挙区に同一政党、とりわけ自民党から複数の候補者が出ることで、政策論争よりも、とかく選挙民への“サービス合戦”が優先しがちだからだ。
 自民党内では、それが派閥政治の横行につながって、金権スキャンダルの一因にもなっていることは否定できない。
 「政治改革推進協議会」(民間政治臨調)は今月十日に発表した緊急報告のなかで「中選挙区制度の弊害は、もはやその利点を上回って余りある。むしろ中選挙区制度の存在が日本の政治を停滞させ、堕落させ、疲弊させ“制度疲労”という危機状況を生み出している」とまで言いきっている。
 中選挙区制にかわる新制度を思い切って導入する時期にきている。
 昨年自民党は小選挙区・比例代表併立制を採用することを党議決定したが、選挙法改正案は国会で十分に審議せぬまま廃案になってしまった。
 ただ、自民党が中選挙区制に代わる制度を導入しなければならない、との判断を下したことは政治的には大きな意味を持つ。民間政治臨調が国会議員に行った意識調査(別表)でも八六・三%の議員が「衆院中選挙区制度は抜本改革すべきだ」と答えている。与野党を問わず、中選挙区制に代わる新制度の導入が必要、との認識では一致している。
 どのような制度をいつ導入できるかが、政治再生の大きなポイントといえるが、現在自民党の政治改革本部の選挙制度部会には、選挙制度改革の議案が十三も提出されており、百家争鳴の感がある。政党間ばかりでなく、政治家個々にも利害や思惑の差があるだけに、この差をすべて埋めることは不可能である。とすれば、自民党内の合意として“生き残っている”小選挙区・比例代表併立制を当面導入するのが最も現実的ではないか。宮沢首相(総裁)のリーダーシップが強く求められるところで、早急に決断をすべきだ。この問題では、野党も同等の責任を負っているのであり、制度改正の具体的な行動を一日も早く起こすべきである。
 
◇国会機能がマヒ
 政治改革の要点が選挙制度の変革にあることは明らかだが、これだけですべての問題が解決するわけではない。「国権の最高機関」である国会もまた、本来の機能を失いつつある。
 現在の国会をみても、景気対策をはじめ内外に多くの課題を抱えているにもかかわらず、東京佐川急便事件問題にのみ関心が集中し、事実上国会はマヒしている。外の情勢に対応することはできない。
 湾岸戦争ぼっ発時に見られたように、国会が休会中ということで対応が遅れるといった旧態依然たる国会運営では、とても国際的な責務を果たすことはできない。こうした事態に即応するためにも通年国会の実現をはかる必要がある。
 現在の国会は一度閉会すると、会期不継続の原則から、審議の終わっていない法案は審議末了、廃案となる。このため与野党の対決法案が出ると、野党は会期末まで審議を引きのばし、何とか廃案に持ち込もうとする。牛歩戦術や審議拒否など“物理的抵抗”で国民の失望を買う風景がくりかえされるゆえんで、これも政治不信の一因である。会期不継続の原則は最近多くの国が見直しを行い、議案は議員の任期中は継続する国が多い。わが国の国会もそろそろシステムを変更する時期にきている。
 さらに言論の府としての役割を果たすために、形がい化しつつある委員会審議の改革が必要だ。
 現在の国会質疑は野党は「質問するだけ」、閣僚は「答弁するだけ」の一方通行であり、答弁も官僚の“作文”を読み上げるだけのケースも多い。これでは政治の緊張感は生まれず、政治家が自分の言葉で政策を語ることもない。国会は政治家同士の質疑応答の場であり、官僚はあくまでも補佐的な“説明要員”との立場であるべきだ。こうした点が実現できれば、国会審議が活性化し、議員の質の向上にもつながる。
 現在の憲法では、国民投票は憲法改正が国会で発議された場合のみが想定されているが、国会で与野党の意見が二分するなど、事態が行き詰まった場合には、国民の判断を仰ぐことも必要だろう。
 例えば、湾岸戦争の際の自衛隊派遣問題、カンボジア和平への自衛隊の参加などは国民の判断を敏速に仰ぐシステムがあれば、あれほど政策決定に時間がかかることもなかっただろう。
 この他にも、「衆院のカーボンコピー」といわれる参院を放置していいのかといった基本的問題にまで踏み込んで国会改革を考える必要がある。
 
◇改憲を考える時
 「国民投票の実施」「国会の通年審議」といった政治改革の実現は、言うべくして簡単なことではない。いずれも憲法問題とからんでくるからだ。憲法では国会の会期制を定めており、「国民投票」は憲法の精神からいえば、“予定外”のことである。
 しかし、憲法に触れなければ、政治を活性化できないのであれば、この際、憲法問題にまで踏み込んで政治改革を考える必要性があるのではないか。
 憲法にかかわる問題はこれだけにとどまらない。自衛隊の海外派遣にあたっても憲法違反との声が根強くあった。憲法の規定ゆえに国際的な要請にも応じられない、ということがあるのなら、これらの点も合わせて総点検すべき時期である。
 憲法制定以来約半世紀。わが国の憲法は改正規定がきわめて厳格であることや、憲法論議がタブー視され続けてきたこともあり、一度の改正も行われずにきた。しかし、これは世界的にみても極めて異例のことであり、憲法の内容が社会の情勢に対応しきれない部分が出てくれば、これを改正し、補うことはむしろ当然の政治的責任といわなければならない。
 東欧、旧ソ連の崩壊によって東西冷戦構造が終えんした今日、イデオロギー抜きで、国際的な政治視点に立って憲法問題を論議する環境が整ってきたといえるのではなかろうか。
 政治の改革なしに日本の二十一世紀はない。今こそ、憲法見直しまで踏み込んだ政治改革を断行し、きたるべき世紀に備えなければならない。


 
 
 
 
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