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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1954/05/03 毎日新聞朝刊
[社説]七度目の憲法記念日
 
 きょうは憲法が施行されてから、七たび目の記念日である。ふりかえるとこの七年間に、世界情勢もはげしく変ったし、国内情勢も目まぐるしく動いた。この激動の波の間に間に、生れたばかりの憲法はこづきまわされた。諸外国の例をみると、憲法は制定される前に必ず対立が起り、論議が白熱する。ところがわが憲法は制定され公布されるまでは、これという論議も対立もなかった。そうして公布後年をふるに従って、賛否の論がいよいよ激しくなった。
 ここにこの憲法の多難な宿命がある。あの大戦争に完敗して国民が食うや食わずでいた昭和二十一年には早くも憲法議会が開かれた。当時国民は終戦の翌年に憲法を持ちうることを誇ったりもしたが、いまにして思えば憲法を作ることがあまりにも早すぎた。第二次大戦直後には、米ソ二大国は手をたずさえて世界平和を推進するものと期待されていたし、日本は戦犯的な国家として格づけされていた。ということは世界情勢も、また日本も希望的ないしは感情的に判断されていたのである。
 その後数年ならずして世界は二つに分裂してしまったし、日本の立場も変ってきた。国際情勢は戦後の理想主義をふみにじった。終戦直後の人心も定まらない時に作られた憲法は、このために早くもその根本理念においてズレを生ずることになった。
 
MSAで拡大した矛盾
 この四、五年間は国民の最大の論議は憲法、ことに第九条の戦争放棄の規定の可否であった。第九条の論争に世界の対立が、そのまま反映しているといってもよいくらいであった。しかしこういう論議も次第に具体的な段階にいり、この一年間に自由党や改進党は改正を意図する憲法調査会を設けたし、一方憲法擁護連盟も発足した。
 さらにMSA協定の承認をめぐって、賛否の両陣営はほとんど決定的になった。MSA協定は日本の防衛義務を積極的にし、アメリカとの軍事関係をいよいよ密接にしたからである。だがこのような段階にはいってもなお、吉田内閣は憲法問題と真正面から取組むことをさけて「戦力なき軍隊」の既成事実をきずくことに専念してきた。これがどれだけ国論を混迷に陥れたかしれないし、同時に順法の精神を傷つけたことも絶大であった。
 吉田内閣は戦力≠兵器の発達に応じて、どこまでも拡大解釈しようとしているが、国家の意思が外敵を防ぐために用いるということであれば、それはもはや軍隊であり戦力と考えるべきであろう。警察と軍隊の相違は兵器の差別ではなくて、国家の意思いかんにあるというべきだ。
 
第九条だけではない
 いずれにせよMSAの承認によって、憲法と現実の矛盾はいよいよ大きくなってきた。法律は社会とともに流動する。法律だけを固定化して、現実を法律に当てはめることは無理である。法律は厳守しなくてはならないし、それが不可能になれば改正されなくてはならない。国家の基本法としての憲法は、もちろん軽々しく扱われてはならない。しかし憲法も流動する点では、例外ではありえない。
 憲法の持つ問題点は決して第九条だけではない。この憲法はアメリカの大統領政治とイギリスの議会政治の混血児と評されるのだが、それが十分に調和をえていないために、首班の選挙とか解散などの大きな政治問題が起るごとに疑義を生じている。衆参両院の性格についても論議が絶えないし、最高裁の判事の国民審査の問題、あるいは議員立法とか予算の増額修正権などについても、現状に即しないもののあることは疑いをいれない。
 我々は吉田内閣のように憲法を勝手次第に解釈することの害毒を、強く指摘しなくてはならない。これでは国家の法秩序はくずれることになる。憲法の持つ平和主義と民主主義の二大精神はあくまで堅持しなくてはならないが、しかしもはや改正への意思をはっきり持つべき時だと思う。もちろん短時日に結論を出せというのではないが、現状では擁護論者でもおそらく憲法の矛盾や、不備を否定するわけにはいくまい。

(日本財団注:●は新聞紙面のマイクロフィルムの判読が不可能な文字、あるいは文章)

 
 
 
 
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