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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1954/07/01 毎日新聞朝刊
[社説]自衛隊と新警察の発足
 
 自衛隊、防衛庁および新警察制度がいよいよきょうから発足する。昨今の梅雨空のように、うっとうしい出発である。いずれも多くの問題を残しているだけに、花々しくその出発を祝福する気になれず、むしろ建造に大きな手抜きのあった船の進水をみるような不安な気持が国民一般に共通しているのではないだろうか。独立後の日本において最も重要な問題、最も重要な法律が、一般的な不安と、相当程度の不信のうちに既成事実≠ニして大きな座を占めるということは国家的不幸である。
 これらの法律は国会で十分の審議を経、多数をもって可決成立したものとして、政府は問答無用≠ニいいたいところであろう。だが新警察法が第十九国会で果して成立したものかどうかという疑問は依然解決されていない。この問題は当然臨時国会において解決すべき課題となっているのものと我々は理解している。にもかかわらず政治は『成立したもの』という一方的な態度ですべてを押しまくっている。我々は単に形式だけにこだわるものでない。吉田内閣の常とう手段である既成事実の押しつけ≠憎むのである。自衛隊法、防衛庁設置法においても、このような既成事実主義がいかんなく発揮されている。
 国会における十分な審議、といっても、重要な点はぼかされ、紋切型の答弁で打ちきられ、結局、審議の空転に終ったことの多かったのを思い出さざるをえない。
 
自衛隊は軍隊
 自衛隊、防衛庁両法の審議の際に、木村防衛庁長官あたりの答弁では、しばしばかくされた危険≠ェ顔を出し、国民の不安をそのつどかき立てていた。MSA協定、防衛秘密保護法に援護され、直接侵略に対抗する陸海空十六万四千の自衛隊は、政府の紋切型の国会答弁では、もはや収拾できないものに成長していることが明らかである。直接防衛の出動に当っては国内的には旧軍隊なみの強権が与えられるし、国際的にも、戦時国際法規の適用をうけて各国の軍隊と同時の行動がとれる。一方、国防会議あり、統合幕僚会議あり、旧軍人の全面的進出ありで、組織、装備、権限、行動いずれも軍隊たるの実質をそなえてきた。
 このような実体は、すでに国会における戦力問答℃ゥ体がいかにバカげているかを示している。我々が国会審議の空転をいうのはこの点である。問題は、なぜこのような論議の空回りのうちに、既成事実を作っていかねばならないのか、ということである。吉田首相は、再軍備せず、と言明している。しかし、軍隊を作っても、それによって国が軍国化せず、それが平和的目的のためにのみ存在するという保障があるならば差支えないという、意見が強い。吉田首相はこの程度の意見さえ表明することができないのである。憲法に軍備を禁じているから再軍備を口にしない、というだけのことのようだ。そして逃げ道を既成事実に求めているのだろうが、徴兵や海外派兵などの重大問題について、納得できるような何の見解も明らかにせず、国民の不安を放っておくのも、結局、国民にはできるだけ真実をいわず、既成事実の押しつけで観念させるという、首相のやり方から必然的に出てくることであろう。
 
公安委の責任重大
 新警察法は、占領政策のいきすぎ是正という点で有効な面も少なくない。警察力の能率化、人員、施設の節約などその大きな点であろう。その半面、警察力の中央集権化や実質的な警察大臣の設置など、警察力が時の政府の都合のいいように利用される危険の生じたことは否定されない。この吉田内閣がいつまで続くか知らないが、検察力に対し逮捕中止の指揮権を発動するような内閣のもとで新警察制度が運用されることは好もしいことではない。
 警察の場合は、検察庁とちがって、公安委員の存在がある。国家公安委員長は大臣であっても各公安委員がしっかりしておれば、警察力の政治的利用は相当防げる。したがって公安委員の責任は極めて重大であって、我々は委員の人選に大きな関心をよせざるをえない。ただ、最も大切な国家公安委員は、総理大臣が両議院の同意を得て任命することになっているから、人選にはかなり問題がある。結局、新警察力を生かすも殺すも時の内閣および警察当局者の良識ということが根本になってくる。その点、新警察法の不明朗な成立を強行するような吉田内閣に果して国民は期待できるのかどうか。政権の維持のためには、法の乱用はもとより、一切の政治的、道義的責任を無視するという吉田内閣が、ただ警察制度の運用に関する限り、公平無私、民主的運用の妙を発揮するということは、まさしく奇跡的なことであろう。


 
 
 
 
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