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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1950/08/09 毎日新聞朝刊
[社説]警察力と戦力
 
 警察予備隊はいよいよこの十五日ごろ第一次の募集をするということであるが、その組織、機能は相当強力なものと予想されており、近ごろは、この警察予備隊は日本軍隊再建の萌芽となるのではないかという流説がしきりである。わが国は憲法第九条第二項で「陸海空軍その他の戦力」を保持しないことを誓つたのであるから、もし今回生れる警察予備隊が軍隊と似たものになるとすれば、その似て非なる理由を十分明らかにしておかなければならぬ。
 岡崎官房長官の談話として伝えられるところによれば、国外に出ていく場合のあるものが軍隊で、国外に出ていくことのないものが警察であるとのことである。これは至極簡単明りようなようでもあるが、もし国外からの侵略をうけた場合、これを国土の内部で防衛する軍隊というものも考えられる以上、岡崎氏の見解には、にわかに同感しかねる。しからば警察予備隊とはもつぱら国内治安のための存在だという見解はどうであるか。政府のつくつている政令案によれば「警察予備隊は治安維持のため特別の必要ある場合に内閣総理大臣の命をうけ任務を行う」とあつて、国内治安のための存在であることをうたつているが、その国内治安ということを一応掘り下げてみる必要がある。なぜなら今日のいわゆる国内治安とは、主として共産主義勢力を対象として考えられていることは政府もしばしば表明しているとおりであり、したがつて国内といつても必ず国際的背景をもつているからである。
 今日、警察予備隊というものが生れようとしているのも、全く共産主義勢力の脅威に備えようとの時局的要求にもとづくものであり、その共産主義勢力は、決して国内にのみ独立しているわけではない。三八度線以北を支配していた朝鮮の共産主義勢力も、決して孤立的存在ではなくその大きな背後勢力につながつていた。かようなことは、どこの国の共産主義勢力についてもいえることである。わが国の場合も、もし今日の治安の主たる対象を共産主義勢力とする以上は、その治安維持機関すなわち警察予備隊の活動に当つては、つねに国内のみならず国際的な動きをも念頭に置かざるを得ないだろう。かような警察活動は、地理的には、わが国土内にかぎられていても、国土防衛戦争とのあいだに区別のつきにくいことが起る場合をも、予想しなくてはならない。
 こうした予想は、近ごろ日本人の間でしばしば口にされている。そして、国内治安維持の行動が、ついには戦争放棄の憲法の条章にふれてきはせぬかが危ぶまれている。戦争の放棄は、わが憲法の最大眼目の一つである。「陸海空軍その他の戦力を保持しない」という第九条第二項も、戦争の放棄(第九条第一項)という大原則を貫くための方法として建てられた。戦争を放棄するから戦力をも放棄するのである。いいかえれば、わが国は、戦争を否定するがゆえに再軍備をも否定するのである。しかるに現実の上では、治安の維持は国際的視野にまで発展せざるを得ない情勢にあり、それに伴つて、警察力は戦力にまで拡大されるおそれをも感じさせるというのが昨今の実情である。この際、国の治安維持と警察予備隊の運用とに全責任をもつ政府が、こうした国民一般の危惧に対して明確な説明を与えることは、何よりも緊要なことだと思う。
 もとよりわれわれは警察力の充実を希望する。七万五千の警察予備隊が高度の装備を施されるということにも、われわれが経済的負担に耐えるかぎり異議はない。ただその組織に当つて、部隊活動の経験者を集めるに汲々たる余り、旧日本軍隊の復活という傾向に陥るならば、わが国の将来にむかつて禍根を植えるおそれなしとせぬ。時あたかも西独首相が再軍備反対の声明をしているこの際、わが国民が憲法と現実の間に徒らにさまよう如きは、どんな方角からみても看過できないことだといわなければならぬ。

(日本財団注:●は新聞紙面のマイクロフィルムの判読が不可能な文字、あるいは文章)

 
 
 
 
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