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「月報 CAPTAIN」 第352号?356号

 事業名 子供達に海と船を語る企画「船長、母校へ帰る」
 団体名 日本船長協会 注目度注目度5


月報 Captain 平成15年4月・5月合併号
(拡大画面:81KB)
 
表紙写真
<アカバ>Aqaba:ヨルダン南西部にある唯一の港湾。紅海最北部のアカバ湾の最北端に位置する。古代シナイ半島横断隊商路の起点で付近の山から銅が産出した。1917年アラビアのローレンス指揮下のアラビア軍が奇襲攻撃した。西はエジプトのシナイ半島、隣はイスラエル領、南東はサウジアラビアで湾の周辺は紛争が絶えない。1967年湾口の封鎖問題で第3次中東戦争が勃発した。
[武馬猛氏撮影]
 
船長 母校へ帰る
第22回 千葉県館山市立館山小学校
元三光汽船船長 大野 幹雄
 
講演日時:平成15年2月28日、14時−16時
対象者:同校6年生102人
 
講演の経緯
 昨年船長協会会長、澤山様から「船長、母校に帰る」の話を伺った。小生は4年前に勝浦に引越したので、勝浦で行なう事にした。
 勝浦の教育委員会委員長にこの話を持ち込んだが、あまり積極性がなかったので大学のクラスメイトで現在でも親交がある沼田氏(館山海上技術学校校長)にこの話をした。
 館山市教育委員会、同時に館山市長も興味を持ち、館山で小生が講演を行なう事になった。本来は沼田校長が行なうのが適当であったが、同君によれば海上技術学校の校長をしている関係上、自分の学校の宣伝に思われても困るということであり、小生が講演を行なう事で船長協会の承諾を得た。
 
講演の準備
 日本船主協会はじめ航海訓練所、練習船教育後援会、郵船クルーズ、商船三井客船、日本海事広報協会、日本外航客船協会、日本海運集会所などからパンフレット、ポスター、資料などを頂戴し、ポスターなどは小学校、市役所、教育委員会に配布、小学校宛てのポスターは会場となった体育館に展示、さらに、救命浮環、旗流信号、海図などを館山海上技術学校から拝借して展示をし、加えて、小生は自動車専用船の話をする事にしたので、車を固定するクラスパーを横浜から宅配してもらった(あわせて、小生が自動車専用船に乗船中の写真も準備した)。
 
講演内容
 皆さん今日は
 今日で試験が終わったそうで、よかったですね。よくできましたか。
 本当はこれから遊びに行きたいのでしょうけれども、私が船のお話などをしますので、20−30分ほど我慢をしてください。
 船にはいろいろな種類がありますが、今日皆様にお話するのは自動車だけを専門に輸送する船のことです。テレビコマーシャルなどで、この船を見たこともあると思います。
 先ず、この写真を見てください(船主協会の壁新聞第6号「日本の優れた技術を運ぶ、自動車専用船」を提示。同時に生徒数名に協力を求め壁新聞を皆によく見えるように広げさせた)。
 さて、ここでクエスチョンです。
 この写真に写っている自動車の数は何台ぐらいと思いますか。
 (生徒たちは98台、100台、7,000台、100,000台・・・などと思い思いのまま解答をしてきた)。
 この写真にはおおよそ2,200台の車が写っています。
 では、次のクエスチョンです。
 この2,200台の車はここに写っている2隻の船に積み込むことができるでしょうか。
 (全員ができると答えた)。
 では、1隻の船ならばどうでしょうか。
 (半数以上の生徒が1隻に積めると答えた)。
 はい、答えはできます。この船1隻で約5000台の車が積めます。
 ではどうして積めるのでしょうか。
 それは船の中が立体駐車場になっているからです。段数は10階から12階建てになっています。車同士の距離も左右は握りこぶ10センチ、前後は手のひら20センチでびっしり積み込みます。この写真の船の大きさは長さが180メートル、幅30メートル、深さ20メートル程度です。
 皆さんの学校の敷地の大きさは縦横約150メートルです。これは教頭先生に教えていただきました。この学校の敷地にびっしりと船に積むのと同じように透き間なく駐車すると約2600台程度の車が駐車できます。
 
講演中の大野船長
 
 車は一台一台専門のドライバーが運転をして船内に積み込みます。船内でドライバーが車から降りたら、また次の車を取りに陸に来なければなりません。このときは船内に専用のマイクロバスが待機していて、10人程度のドライバーを乗せて、船内から陸に出てきます。
 積み込んだ車はその都度、固定します。
 それがこのベルトです(現物3本を提示)。この小さい方は普通乗用車用です。この大きい方は大型バス、タンクローリ、土木用重機、つまりブルドーザーとか、シャベルカーという大型車か重量のある車の固定に使います。
 使い方は、この一方のフックを車下部のフックに引っ掛け、反対側のフックは船内のデッキに引っ掛けます。デッキは鉄板でできていまして、5センチ程度の穴が規則正しく開いています。その穴に引っ掛けるわけです。航海中、船は揺れますので揺れないようにこれらのベルトでとめるわけです。
 
船の絵を描きながら話をする柳原良平画伯と澤山会長
 
 止めかたは車の前後左右の移動を防止するためですが、それぞれ前後左右を止めるのではなく斜めにして止めます。また止める場所も単に車の四隅ではなく、車の前と後ろの中央部に交差するようにします。こうすればベルトが隣の車のベルトと交差しにくくなるわけですから。
 船が航海するには車でいえばガソリンに当たる燃料が必要になります。この船は昼夜一日で800キロメートル走ります。一日で消費する燃料は25トンになります。金額にして50万円程度です。皆さんの学校にあるプールに燃料を入れるとすれば350トンです。350トンの燃料は2週間で使ってしまいます。プール一杯の燃料の値段は700万円程度です。太平洋を横断すれば、このプール一杯分の燃料を使ってしまいます。
 この船の値段はおおよそ30億円です。車はいろいろな種類を混ぜて積みますが200万円の車5,000台で100億円です。大型バス、建築用重機などを積みますので、200億円になることもあります。船長はこの船と貨物、それに乗組員20名の生命を預かる最高責任者です(突然、生徒からの質問、「沈没したら、そのお金はどうなるのですか」に対して「保険屋さんが払うことになります」と答える。
 
また、自動車専用船に乗船中の写真を小さなアルバムにして3冊を生徒に回覧させる)。
 さて、ここに展示してあるものの一部を説明いたします(館山海上技術学校より拝借してきた救命ブイ、自己点火灯、旗流信号旗、六分儀、館山湾の海図などが展示または掲示されていた)。これらは国際信号旗といい、船のマストに掲げて情報を交換します(生徒数名に広げさせる)。どのような情報を交換するかはこの厚い本(国際信号信号書)に書かれていますので、今から皆さんに回しますので、お話を聞きながら見てください。
 これはよくご存知の救命ブイ、ライフリングともいいます。これにはこのような信号灯が付いています。船上に設置している場合はこのようにして逆さまにしていますが、海に投げると錘でひっくり返り、このように自動的に明かりがつきます。人が海に落ちた場合など、これを投げてあげれば夜間でも探しやすくなります。
 救命ブイは中に一人ぐらいしか入れません。ブイ外側の、このロープは飾りではありません。掴むためのものです。ですから中に入れない人はこのロープを握るようにしています。また、人を助ける時、手を出して引き寄せなければならないことがあります。実際に皆さん、お隣同士で手を引っ張り合ってください(生徒全員が隣同士で握手をするような形で手を握り合う)。
 ・・・そう、ですね・・・。
 では、これから私が言うようにしてみてください。
 先ず、一旦手を離して。(生徒は一斉に手を離す)
 はい、ではこのようにお互いの手首を掴んで引っ張ってください。
 どうですか。違いが分かったことと思います。手首を掴んだ方がしっかりと力強く引っ張れますね。これは何も海とか川だけでなく日常的にも役に立ちます。例えば、道路の穴に落ちたとか、コンクリートとブロックの間などの透き間に嵌ってしまって場合とかに、その人を引き揚げたり、引き寄せたりしなければならないことがあります。このような場合にも活用できます。
 さて、私が子供の頃父に叱られたことがありました。それは丁度、皆さんの年頃でした。私が友から漫画の本を借りていました。そのとき私は自分で買った本などは大切にして、借りた本などは大切に扱っていなかったことがあったのです。それを見て父が言ったことは「人に借りたものは自分のもの以上に大切に扱いなさい」と言うことでした。それから、例えば駅、道路など公共の場所は自分の部屋とか自分の家以上に汚さないように綺麗にしておきなさいということも言われました。
 今度、日本の客船が館山に来るそうです。残念ながら沖で錨を入れるので近くで見ることはできそうにありませんが、市役所の人たちがこれから港を拡大して整備をし、桟橋に停泊できるようにするようです。皆さんが大人になった頃には外国の豪華客船も入港するようになるでしょう。今まで以上に町とか砂浜などをきれいにしておけば、多くの人たちが感激するでしょう。館山はきれいでよいところだ。館山の人は親切だ。こういうよいうわさが世界中に広がるでしょう。
 私は4年程前に埼玉の所沢市から外房の勝浦市に引っ越してきました。館山に18歳の時からの友達、沼田校長先生がいますので、パソコンを教わるためにたびたび館山に来るようになりました。皆さんはまだよく分からないと思いますが都心の空気はホコリが多く、苦くてまずいことがあります。館山の空気はいつもきれいで、甘くて美味しいのです。この館山は非常に景色がよく、街並もきれいで、親切な人が多く、私はこの町が非常に好きです。
 もうそろそろ終わりにしますが、時間は過ぎ去るといいます。月日が過ぎるのは早いともいいます。そのとおりです。しかし、時間が過ぎ去るというのはあくまでも時計またはカレンダーとしての話です。つまり数字の上で時間が過ぎているのです。人が生きていく上で時間は過ぎ去るのではなく、時間を積み重ねているのです。
 先生、ご両親の言うことを聞いて、勉強するときは勉強して、遊ぶときは遊んで、集中するときは集中して、我慢するときは我慢をして、時間を大切にして積み重ねてください。今のこの時間も過ぎ去るのではなく、皆さんにとっても私にとっても、この時間は積み重ねです。時間をきちんと積み重ねる場合には我慢をしなければならないこともあります。そこで最後に我慢についてお話をします。
 私が36、7歳の頃、お習字を習っていました。それは字が下手だったから習ったのです。
 そのとき書道の先生から教わった言葉があります。今でも気に入っている言葉です。それは「雪」「竹」とかいて「雪竹(せっちく)」という言葉です。この意味を簡単に説明します。
 冬に雪が降り積もって青竹がその雪の重さに耐えて、弓なりに曲がっても、折れないで、雪が解けるまで待って、雪が解け初めたら、その積もった雪を一気にはじき返し、何事もなかったように元のように真直ぐ伸びます。そして春になれば竹の子を生えさせます。つまり、我慢しなければならないときは、じっと我慢しなさい。そうすればいずれその我慢したという努力が実るという意味です。
 時間を積み重ねながら、この素晴らしい館山を大切に守っていって欲しいと思います。
 それらをするのは皆さんです。健康に気をつけて元気でがんばって下さい。そのためには、好き嫌いをなくして、まずくても、苦くても、硬くても何でも食べるようにして早く大きくなってください。
 最後になりましたがここに展示してあるものは館山海上技術学校からお借りしてきました。それに今日のために館山小学校の校長先生はじめ多くの先生方、館山教育委員会の皆さま、館山市役所の多くの人たち、それに柳原良平先生と日本船長協会の人たちが忙しい中、時間を割いて頂きました。皆様もこのように関係した多くの方がたに感謝してください。
 さて、今日は私たちが一方的にお話をしましたが今度皆様に逢うときは皆様からのお話を聞きたいと思います。それまで時間を積み重ねてください。では再会を楽しみしています。どうもありがとうございました。
 
講演終了後
 講演当日は館山市長と館山教育委員長と昼食、館山市では、客船「飛鳥」が3月5日に入港、8月には客船「にっぽん丸」が入港するというタイミングのよさと、同時に館山市では客船専用桟橋を含めた港湾の拡張整備作業が予算化され、館山市全体が大きな興味と期待を抱いていた。数日後、生徒さんからの礼状が届き、20数名の質問事項に解答し、返事を出した。
 
マスコミ関係
 朝日新聞(千葉版)、房日新聞に写真入で掲載され、その他、暮らしの映像社が取材に来た。
 
 







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更新日: 2019年6月22日

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