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「月報 CAPTAIN」 第352号?356号

 事業名 子供達に海と船を語る企画「船長、母校へ帰る」
 団体名 日本船長協会 注目度注目度5


第21回 熊本県三角町立三角小学校
国際エネルギー輸送(株) 高浜 洋嘉
 
1. はじめに
 平成14年9月15日、約10ヶ月の乗船勤務を終えて休暇を迎える。いつもより長く乗船したせいか、10月はアッと言う間に過ぎ去り、11月には妻との約束で1週間の夫婦旅行に出かけた。半袖から長袖、そしてセーターにジャンパーと衣も冬の身なりとなり、気がつけば師走の月を迎えていた。そんなおり、月報Captainで、「船長、母校へ帰る」の記事が目に入った。この企画は以前から興味を持ってはいたものの、具体的にいつやろうとは考えていなかった。休暇も3ヶ月が過ぎ、残る休暇は約一月、何かこの間に有意義で思い出に残せるものができればと思い、船長協会へ問い合わせの電話をした。
 
2. 小学校への講演の依頼
 船長協会の村田常務からこの企画についての具体的なアドバイスを頂き、12月6日母校である、三角小学校を訪れ、藤田校長に面談した。その際に具体的な話の内容として、以下の3点を話した。
1. 30万トン型の巨大タンカーの規模や船での生活のこと。
2. 外国航路の船員としてこれまでに見た、世界の海や港のこと。
3. 混乗船の体験から、語学の重要性と必要性。
 そしてこれらを通して子供たちに船のこと、世界のことをより理解して貰えればと、講演のお願いをした。
 藤田校長からからは、「本校出身者で地元の方からこのような申し出があることをありがたく思う。また子供たちにとっても大きな夢を与えることができるので先生方と検討させて頂き、後日具体的な日時をお知らせする。」との返事を頂いた。
 すでに12月のスケジュールは決まっていて、実際には1月中旬から末までという厳しい日程のお願いをしたことが心苦しかった。
 余談だが、この藤田校長も三角町の出身者であり、藤田校長の弟さんと私が同級生、藤田校長と私の姉も同級生でかつ、同じ教員で家族ぐるみでお付き合いしているとのことであった。(船乗りというのはこうした世間のつながりに疎い人種でもあると改めて反省した。)
 12月11日に藤田校長より、1月14日午後3時にお願いしたいとの連絡を受けた。
 12月13日に船長協会から講演の際の資料としてビデオテープやパンフレットが届き、その後もタンカーに関するポスター、三角港の海図、DVDプレイヤー等が送られてきた。これらの資料を学校側にも持参し、船長協会の取組みについても説明を行った。
 日程、教室、参加人数も具体的に決まり、あとは私の講演原稿の出来上がりを残すのみとなってきた。
 講演の内容については以下を柱にして組み立てた。
(1)船(タンカー)について:大きさやスピード、燃料消費量、原油の輸入量等
(2)自身の体験:アフリカ航路でのモザンビークやダーバンでの奴隷制度や人種差別、混乗船の生活
(3)まとめ:子供たちに夢と希望をもてるような内容
 
3. 「船長母校へ帰る」講演
 1月14日午後2時30分、東京からの村田常務と共に、三角小学校に到着。
 校長室で挨拶、村田常務が三角小学校での開催が21回目であり、今年度に入って5校目であることを説明。藤田校長は、「子供たちに夢を持ってもらいたい。学校の現場だけでなく、外部からのこうした応援が子供たちに夢を持って貰うのに役立つと思う。」と語られた。
 
 午後3時、校長の先導で制服姿の両名が会場である音楽室に入る。教室には4年生の生徒46名と各クラブの生徒60名、それと先生方9名が待っていて元気な挨拶で迎えてくれた。
 田中教務主事、藤田校長の挨拶(この時、船長協会村田常務の紹介と私のプロフィルを紹介された)。村田常務が船長協会についての紹介と海の記念日や制服の袖章について説明。その後、ビデオ「海と船」約25分を放映。入渠中のVLCCの船首部と渠底に人が立っていて大きさを比較している場面と、パナマ運河を通過中のコンテナ船が船側とドックの隙間すれすれに動く場面では子供たちから喚声が上がった。また、海賊の場面にも子供たちは大変に興味を示していた。
 ビデオ放映の後、3時40分から私の講演が始まった。
 
講演中の高浜船長
 
 冒頭、私が通った校舎は建て替えられて変わってしまったが、手作りで掘ろうと言い出して完成した長さ15メートルのプールは今でも残っていることを話した。この切出しは村田常務のアドバイスで、これが子供たちに間違いなく私たちの先輩だなと心を開かせたようだ。先生方もお互いに「へー」と言いながら隣同士でうなずき合っていた。
 第19回の橋本 進先生の「まず生徒全員の関心を一身にひきつけることが大切」を体験させて頂きました。
 そして、まず船についてということで専門分野のタンカーの話に移りました。
 大型タンカーの寄航地、船のスピード、ペルシャ湾までの航海日数、燃料消費量とその金額、原油の日本での年間消費量(インターネットで事前調査)、バラストの注排水についてでした。子供たちが興味を示したのは、燃料消費量が一日94トンで金額にすると約94万円、片道で約1,500万円かかることや、停止させるまでの距離が約10Km、これを具体的に三角町からJRの駅を示して話した時でした。30万トン型タンカーで原油積載量が30万トン、34万キロリッターという数字のデータだけより、ドラム缶で170万本、それを並べるとどこから、どこまでとか、身近なたとえが受けました。
 
 次に、初めて乗船した1万トン型の雑貨船で寄港したモザンビークでポルトガル人が作業員である黒人を棍棒で殴る姿、南アフリカ・ダーバンで見たWhite Onlyという看板から人種差別のこと、そして混乗船のことについて話しました。
 最後に、私が船員になったきっかけは、三角という港町で多くの外航船を見て育ったこと、小学校の修学旅行の長崎港で見た大型船に感動したことであると語り、小学校時代の体験は皆さん方にとっても大変貴重なものになるのではないかと話した。学校から見える海は世界に広がっている、皆さんも世界に広がろうとの夢を抱いて頑張って下さいと結び、話を終えた。
 
熱心に聴き入る三角小学校の生徒達
 
 引き続き質問会を持ち
(1)フィリピン人との混乗船では会話はどうするのか?
(2)なぜ混乗船になったのですか?
 の質問があった。
 質問が少なかったのは「人に接することに慣れていない傾向がある」からではとの藤田校長の話であった。
 「今日の話を参考にして、船のことや海のことそして世界のことに興味を持っていきたい」
 との生徒からのお礼の言葉を受け、午後3時に始まった講演も16時10分に終了、生徒の拍手に送られて教室を出た。
 
4. 講演を終えて
 準備期間が短い中、藤田校長始め担任の先生方のご理解により、時間を作って頂いたことにあらためて感謝申し上げると共に、子供たちに少しでも喜んで貰い、それが私を育ててくれた母校への微力ながらの恩返しにつながるものとなればこれ以上の喜びはない。
 最後に暖かくも力強いバックアップを頂いた船長協会の澤山会長、九州まで遠路足をお運びいただいた村田常務理事に厚く御礼を申し上げます。
 
5. 三角町について
 わが町、三角町は熊本市の南西端に位置し、天草への入口となる人口約1万人の港と農業(みかんと花の栽培が有名)の町である。周囲に天草の島が点在し風波をさえぎる天然の良港として、明治20年に開港(西港)した。明治30年には鉄道が開通、さらに昭和19年には1万トン型の貨物船の出入港も可能な三角港(東港)が完成した。昭和30年代には県下の海の玄関として内航貨物船や東南アジアからの外航船の出入り、天草や島原への交通の要として、また、天草一帯の商業の中心として賑わいをみせ、人口は現在のほぼ倍の1万8千人の町であった。
 私が入社した昭和49年当時には、「三角港には何度も行ったぞ。いい所だな。」と語ってくれた先輩が大勢いたことが懐かしく思い出される。
 昭和41年に天草五橋、八代港が完成、交通の流れは大きく変わり、現在は実質人口9千人、買い物や食事も天草の橋を越えて行くようになり、さびしい限りである。
 しかし、幸いにも三角西港には730mの石積み埠頭や水路、建造物が明治に築港されたままのたたずまいで残り、国の重要文化財として港町三角のシンボルとなっている。
 また、旧郡役所は、日本でただ一つの町立の「九州海技学院」として利用され、昭和32年に開校、3級から6級までの海技講習と試験が行なわれている。(3級は講習のみ)
 JR三角駅を降りると目の前に港と海と島々が広がり、振り返ると標高300mの天翔台が緑のシャワーを降り注いでくれる、風光明媚な港町である。
(参考:三角町ホームページ http://www.town.misumi.kumamoto.jp/
 
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更新日: 2019年2月16日

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