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3 各散布方法による分散性能試験方法
(1)予め混合法
イ. 人工海水量
 分液ロート(300ml)に人工海水100mlを入れる。
ロ. 混合油の作成
 C重油5mlと油分散剤の散布率に応じた一定量を、ケミカルスターラーで約1分間攪拌して混合油を作成する。
ハ. 混合油量
 ロ項で作成した混合油5mlをシリンジを使用し、分液ロート内の人工海水面に投入する。
ニ. 振とう法
 ハ項の分液ロートを横向きに振とう器にセットして、振とう回数120(回/分)にて5分間振とうし、3分間静置した後、分液ロートの下部から60ml抜き、採取した混合油水を攪拌しながら正確に50mlを別の分液ロートにピペットを用いて採取する。
ホ. 油分抽出試薬
 油分抽出方法は、「工場排水試験方法 JIS K 0102」に準拠するものとするが、油分抽出薬は、クロロホルムを使用するものとする。このため、抽出試薬に適合する抽出法を採用する。
ヘ. 油分の計量
 クロロホルムで抽出した油分は水分を除去した後、105℃±2℃の恒温室でクロロホルムを蒸発させ、残量を油分量として電子天秤で計量した。なお、試験は2回実施し、それぞれの残量油分を合計して海水100ml中の分散油量とする。
(2)原液散布法
イ. 人工海水量
 分液ロート(300ml)に人工海水100mlを入れる。
ロ. C重油量
 イ項の分液ロート内の人工海水面にC重油5ml(計算上油層厚が1.5ml程度となる)を、5mlシリンジを使用して投入する。
ハ. 油分散剤量及び滴下法
 ロ項の分液ロート内に油分散剤を散布率(%)に応じた量を500μlマイクロシリンジを使用して必要量油面に滴下する。
ニ. 振とう法
 ハ項の分液ロートを横向きに振とう器にセットして、振とう回数120(回/分)にて5分間振とうし、3分間静置した後、分液ロートの下部から60ml抜き、採取した混合油水を攪拌しながら正確に50mlを別の分液ロートにピペットを用いて採取する。
ホ. 油分抽出試薬
 油分抽出方法は、「工場排水試験方法 JIS K 0102」に準拠するものとするが、油分抽出薬は、ク ロロホルムを使用するものとする。このため、抽出試薬に適合する抽出法を採用する。
ヘ. 油分の計量
 クロロホルムで抽出した油分は水分を除去した後、105℃±2℃の恒温室でクロロホルムを蒸発させ、残量を油分量として電子天秤で計量した。なお、試験は2回実施しそれぞれの残量油分を合計して海水100ml中の分散油量とする。
(3)海水希釈散布法
イ. 人工海水量
 分液ロート(300ml)に人工海水100mlを入れる。
ロ. C重油の投入量
 イ項の分液ロート内の人工海水面にC重油5ml(計算上油層厚が1.5ml程度となる)を、5mlシリンジを使用して投入する。
ハ. 海水希釈分散剤の作成
 分液ロートに必要量の海水と油分散剤を入れ、振とう器(振とう回数300回/分)で約3分間攪拌して海水希釈分散剤を作成する。
ニ. 海水希釈分散剤の滴下
 ロ項の分液ロート内に、ハ項で作成した海水希釈分散剤を500μlマイクロシリンジを使用して必要量油面に滴下する。
ホ. 振とう法
 ニ項の分液ロートを横向きに振とう器にセットして、振とう回数120(回/分)にて5分間振とうし、3分間静置した後、分液ロートの下部から60ml抜き、採取した混合油水を攪拌しながら正確に50mlを別の分液ロートにピペットを用いて採取する。
ヘ. 油分抽出試薬
 油分抽出方法は、「工場排水試験方法 JIS K 0102」に準拠するものとするが、油分抽出薬は、クロロホルムを使用するものとする。このため、抽出試薬に適合する抽出法を採用する。
ト. 油分の計量
 クロロホルムで抽出した油分は水分を除去した後、105℃±2℃の恒温室でクロロホルムを蒸発させ、残量を油分量として電子天秤で計量した。なお、試験は2回実施しそれぞれの残量油分を合計して海水100ml中の分散油量とする。
 
 なお、海水希釈及び散布率は次の定義による。
希釈率(%)=分散剤量(ml)/海水量(ml)×100
散布率(%)=分散剤量(ml)/油 量(ml)×100
 
 上式から供試油5mlに対する自己攪拌型分散剤(S−7)及び通常型分散剤の散布率と希釈率の関係を表−VI.2.2に示す。
 
表−VI.2.2
自己攪拌型分散剤及び通常型分散剤の希釈散布量(ml)の関係 単位(ml)
- 希釈率(%)
2 3 4 5 6
散布率(%) 2 5.000 3.333 2.500 2.000 1.667
3 7.500 5.000 3.750 3.000 2.500
4 10.000 6.667 5.000 4.000 3.333
5 12.500 8.333 6.250 5.000 4.167
6 15.000 10.000 7.500 6.000 5.000
10 25.000 16.670 12.500 10.000 8.330
20 50.000 33.340 25.000 20.000 16.670
30 75.000 50.000 37.500 30.000 25.000
対象供試油を5mlとして計算
注)
海水希釈散布法は、消防船あるいはタグボートに装備されている泡消防設備の200〜300 L/min の消防ノズルにエジェクター等を介して分散剤を海水とともに放出する。このエジェクターは消防ノズルの放水量の3〜6%の比率で分散剤が吸引される。
 例えば、消防ノズル200L/minでは分散剤量は6L〜12L/minの範囲で調節が可能であり、消防ノズル300L/minでは分散剤量は9L〜18L/minの範囲で調節が可能である。
 本試験において、海水希釈率については2〜6%について調査することとした。
 
4 使用機材等
(1)横揺れ振とう機(振幅4cm 振とう周期 毎分50〜300回 可変式) ヤマト科学製 ShakerSA31型
(2)電子天びん(最小秤量0.1mg)
(3)分液ロート(スキーブ型、テフロン製)300ml容量
(4)5mlシリンジ
(5)500μl マイクロシリンジ
(6)100ml メスシリンダー
 
VI−3 供試油及び油分散剤
 試験に使用した供試油は、中質原油のアラビアンライト原油と我が国周辺の流出油事故の大半が燃料油であることから、C重油(3種、1号、JIS K 2205)の2種とした。また、供試分散剤は、通常型分散剤及び自己攪拌型(S−7)分散剤の2種とした。
 供試油及び油分散剤の性状等を表−VI.3.1に示す。
 
表−VI.3.1 供試油及び油分散剤
- 密度
(15℃/4℃)
動粘度
(cSt)
引火点
(℃)
油量(ml)
(g)
アラビアンライト
原油
0.8677 9.54 (30℃) - 5ml 4.3385
C重油 0.9607 304 70< 5ml 4.8035
通常型 分散剤 0.8±0.01 3.9 124 -
S−7 分散剤 0.9±0.01 25±15 80±20 -
※ 油量(g)=密度(g/cc)×油量(cc)
 
VI−4 試験結果
1 原油の軽質油分及び分散剤の蒸発量の調査
 本試験法の油分の抽出は、攪拌混合水中の油分をクロロホルムで抽出し、水分除去後、105℃±2℃の恒温室でクロロホルムを蒸発させ、残量を油分として計量する方法である。
 本調査の試験油は、アラビアンライト原油及びC重油で、上述の蒸発時に原油中の軽質油分がクロロホルムと共にかなりの量が揮散することが懸念された。そこで、原油中の軽質油分の蒸発量を把握するため、次の要領で調査した。
 
海水量50ml+原油2.5ml⇒混合油水を作成
 
 この混合油水にクロロホルムを投入して油分を抽出し、水分除去後、恒温室に入れてクロロホルムを蒸発させた後、油分を計量した。
 この結果を表−VI.4.1に示す。なお、表中に示す残量率(%)は次式より求めた。
 
残量率(%)=抽出油分量(g)/原油投入量(g)×100
蒸発量(g)=原油投入量(g)−抽出油分量(g)
 
表−VI.4.1 原油の残油量
原油投入量(g) 抽出油分量(g) 残量率(%)
2.1412
2.3500
2.3423
2.2778
1.2992
1.4557
1.4245
1.3931
60.68
61.94
60.82
61.10
平均残量率 61.15%
 
 更に、分散剤S−7についても下記の混合水を作成して上記と同じ要領で蒸発量を調査した。
 
海水量50ml+分散剤0.1ml⇒混合水を作成
 
 この結果を表−VI.4.2に示す。なお、表中に示す残量率(%)は次式より求めた。
 
残量率(%)=抽出分散剤量(g)/分散剤投入量(g)×100
 
表−VI.4.2 S−7分散剤の残量
分散剤投入量(g) 抽出分散剤量(g) 残量率(%)
0.0912
0.0937
0.0947
0.0932
0.0472
0.0488
0.0498
0.0486
51.75
52.08
52.59
52.15
平均残量率 52.14%
 
 以上の調査結果からアラビアンライト原油の蒸発量は約39%でS−7分散剤の蒸発量は約48%であることが判った。
 海上に流出した原油等は、気温、水温、風、波浪状況の環境条件により、蒸発量及び蒸発時間が異なるが、経験則から軽質油分はほぼ24時間以内に蒸発することがわかっている。
 本試験に使用するアラビアンライト原油は、海上に流出した際の軽質油分の蒸発量は前述した予備試験からほぼ39%と推量することができる。
 このことから、次項で実施する各散布法による分散性能中の蒸発量については検討しないこととした。







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