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4 考察
(1)飛行速度と散布状況
〔1〕飛行速度
 実機による散布実験は、ベル206B型ヘリコプターの場合、基準飛行速度40、50、60MPH、基準飛行高度10mの諸元により実施した。この場合の実測飛行速度は、散布飛行時に100m間の飛行所要時間を測定し算出した。その結果は、表−V.3.5に示すとおりである。
 飛行速度に対する油分散剤の散布状況を見ると、ベル206B型ヘリコプターは、実験後半の気象条件が劣悪であったこと等、不確定要素があるが、概して50MPH区が良好な散布状況を示しているといえる。
 
表−V.3.5 散布飛行速度実測値
 
〔2〕落下散布幅
 落下散布幅については、一般に、ヘリコプターのローター径と正の関係を示し、ローター径が大きくなれば散布幅も広がり、飛行速度や散布油分散剤の特性とは負の関係を示し、飛行速度が速くなったり、粘度比重が大きくなれば散布幅は狭くなる。
 しかし、表−V.3.6からは、飛行速度30〜60MPHのなかでは飛行速度と散布幅の間に明瞭な傾向は、見出し難い。
 
表−V.3.6 粒子落下指数から判定した有効散布巾(m)
 
(2)散布飛行諸元と単位面積当り散布量
 実機実験では、飛行高度を10m(ベル206B型)について実施したが、有効散布幅は、ほぼ40m程度と認められるので、高度一定(10m)、有効散布幅一定(40m)とした場合、散布装置からの圧力変化による吐出量及び飛行速度の関係から単位面積当りの散布量を算出し、表−V.3.7、図−V.3.4に示した。
 ヘリコプターによる散布の横方向の間隔(飛行間隔)40mは、有効散布幅の最大限で散布した場合であり、それより飛行間隔を更に狭くして20m、30mにおいて散布した場合は、重ね散布となる。
 
表−V.3.7 散布飛行諸元と単位面積当り散布量(cc/m2
 
 油分散剤の所要散布量は、油層厚によって変化するものであり、油膜の外見による油層厚の識別は、一般には表−V.3.8が利用されており、通常油分散剤で処理対象とする油層厚はこの範囲内と考えられる。しかし、同様の厚みの油膜であっても油種により外見が異なり、それは、大体表−V.3.9のような関係となっている。
 従って、油分散剤の空中散布により処理対象とする油層厚は拡散途中にある50〜100μ程度と考えられる。
 外国品の対油散布量を3%、油層厚50μとした場合、油分散剤の単位面積あたりの所要は、外国品は、1.5cc/m2となる。
 この場合の散布諸元は、外国品の場合、ベル206B型機 ノズルD7−45、ノズル数32、吐出圧40PSIで散布の場合、飛行間隔40mで飛行速度50MPHで散布すれば所要の散布量が得られることになる。
 
5 まとめ
 ヘリコプターによる油分散剤の空中散布法を確立するための基礎資料を得るため、本調査研究を1年間にわたって実施した結果、現用の液剤農薬用散布装置の使用が可能であることが判明した。この場合油分散剤の粘度に応じ、ノズルを選択する必要があり、低粘度の場合は、使用ノズルD6−45、高粘度の場合は使用ノズルD7−45を使用することによって、適正な散布を行うことができる。また、散布速度、吐出圧は漂流油層厚に応じ決定する必要がある。
 
図−V.3.4 散布飛行諸元と単位面積当り散布量
(拡大画面:21KB)
 
表−V.3.8 油膜の外見による油膜の厚さ・油の量
油膜の厚さ
(10−6m:ミクロン)
油の量
(リッター/平方キロメートル)
油膜の外見 標準
0.05μ 50 光線の条件がもっとも良いときにかろうじてキラキラ光る油膜が見える状態  
0.1 μ 100 水面が銀色にキラキラ光って見える状態 E
0.15μ 150 水面がほんの少し褐色に色づいて見える状態 D
0.3 μ 300 水面に明るい褐色の帯がはっきり見える状態 C
1.0 μ 1,000 油膜がくすんだ褐色を呈する状態 B
2.0 μ 2,000 油膜の色が黒ずんで見える状態 A
(Oil Spill Manualより)
 
表−V.3.9 油種による外見の変化
(資料出所 日本海難防止協会)







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