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3 実験の実施
(1)室内予備実験
 比重、粘度、散布粒径等農薬と異なる油分散剤を散布する場合、農薬散布装置での散布が可能かどうか、また、散布により均一な所要の粒径が得られるか等について、主として農薬散布装置を使用した場合の油分散剤散布の可能性の確認及び実験方案作成のための基礎データを得ることとした。
〔1〕試験項目
イ. 供試油分散剤の粘度の確認
ロ. 室内実験用散布装置を使用した試験散布
ハ. 散布粒径とSpread factorの調査(詳細は省略。)
〔2〕試験結果
 油分散剤の場合は、諸外国の実施した実験結果によれば、風による流失、蒸発による逸失を抑えるため粒子の大きさは600〜900μ程度が最適とされており、農薬の粒径に比べて粘度ではほぼ同程度であっても大粒径が要求される。従って、ノズル噴射によって得られる粒子はその径が600μ〜900μの範囲で得られるようノズルの吐出圧及びノズルディスクを決定するための予備試験を実施し、併せて農薬散布装置の使用の可否を検討した。
イ. 室内実験用散布装置による散布試験
 散布粒子のドリフト(風、気流等によって目標地点から離れて流されること。)を軽減し目標点へ油分散剤を正確に落下させるためには、微細な粒子の発生を極力抑える必要がある。
 液剤の散布粒子と飛散距離の関係は、図−V.3.1、表−V.3.2のとおりである。
 
図−V.3.1 風速と粒径及び飛距離の関係
 
表−V.3.2 水滴の粒径と落下速度・落下距離
落下粒径 3mの高さから地上に落下するまでの時間 落下速度 風速1.34m/秒のとき3mの高さから地上に落下するまでに吹き流される距離 この粒径をもつ水滴の例
5(μ) 4,050(秒) -(m/秒) 5,500(m) 海霧
33 93 0.034 125
50 - - 50 -
100 11 0.28 15 薄霧
150 - - 8 -
170 4.9 0.61 6.7 (細かい噴霧粒)
200 4.2 0.73 5.8 霧雨
290 2.6 1.2 3.5 (中程度の噴霧粒)
380 1.9 1.6 2.5 (粗い噴霧粒)
500 1.6 2.0 2.1 小雨
1,000 1.1 2.8 1.5 中程度の雨
3,000 0.87 3.5 1.2 豪雨
 
図−V.3.2 水滴の落下粒径と落下距離
 
ロ. 試験結果
 室内実験用走行式散布装置にTeejet−Nozzle 1個を取付け、散布状態を観察した結果、表 に示すノズル構成でほぼ適正な噴射と望ましい散布粒子が得られることが判明した。この単一ノズルによる毎分の吐出量を示すと表−V.3.3、V.3.4のとおりである。
 
表−V.3.3 ノズル構成と吐出圧
油分散剤 オリフィス・コア 吐出圧力 備考
濃縮型 D7−45 60PSI(4.2kg/cm2 ホロコーンスプレー
 
表−V.3.4 使用ノズルと吐出圧・吐出量
ノズル 2.8kg/cm2 (40PSI) 4.2kg/cm2 (60PSI)
吐出量 吐出角 吐出量 吐出角
D7−45 2.57 86° 3.18 87°
 
ハ. 散布(落下)粒径とSpread factor(SF)の調査(省略)
 
(2)室内実験
 室内予備実験によって得られた散布ノズルのディスク及び吐出圧力をもって室内実験用散布装置を使用した実験を行い、粒子の生成、密度及び乳化分散率等の基礎データを得た。
〔1〕試験項目
イ. 散布粒径及び散布密度の調査
ロ. 各対油散布量における乳化率の調査
〔2〕試験方法及び結果
イ. 散布粒径及び散布密度
 室内実験場の床面から5m上方に設置されたレールを走行する散布装置を使用して試験を行った。
 散布試験は、予備試験で内定した散布諸元
 
濃縮型
使用ディスク
D7−45
散布圧力
60PSI(4.2kg/cm2
により、約18km/時(5m/s)の速力で、走行散布した。
 
〔3〕Spot粒径及び粒子数の計測結果
イ. Spot粒径
・数中位粒径(※1)Spot粒径200μ付近
・量中位粒径(※2)Spot粒径2,500μ付近
ロ. 落下粒径
 量中位で700〜800μとなり所要の粒径が得られることが確認された。
 
※1 量中位の粒径(Volume median Diameter)
 この径より大きい粒滴が量において50%、小さい粒滴が量において50%を占める直径値
※2 数中位の粒径(Volume mean Diameter)
 この径より大きい粒滴が個数において50%、小さい粒滴が個数において50%を占める直径値
 
(3)実機実験
 室内実験の結果をもとに、ヘリコプター2機種を使用し、次のとおり散布諸元を決定して、散布試験を実施した。
〔1〕調査項目
イ. 油分散剤散布量及び散布幅
ロ. 散布粒径及び散布密度
 
写真−V.3.1 五面体調査紙とミラコート調査紙
 
写真−V.3.2 散布飛行中のベル206B型機
 
〔2〕調査方法
イ. 粒子の計測
 散布飛行基準線に対して直角方向に地上1メートル間隔に支柱を設置し、その上面、地表から1メートルの位置に五面体の調査紙(図−V.3.3参照)を固定した。同一地点の地表面にSFの調査に使用したミラコート調査紙を配置して粒子の判定用とした。
ロ. 飛行速度
 ベル206B型機の場合40〜60MPHとし、各飛行ごとに調査線をはさむ100メートル間の通過時間を計測し、実測飛行速度を算出した。
 
図−V.3.3 五面体調査紙 展開図







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