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5 補給問題
 補給基地から遠く離れた海域での大規模油濁事故に対して、分散剤の散布を行う際最も問題になるのはその補給を如何に確保するかと云うことである。分散剤のみならず、イクストックIの場合にはジェット燃料、航空ガソリン、潤滑油、メタノール等の手配の問題もあった。また作業が順調に行われるためには、通関入国手続もスムーズに行われねばならなかった。
 
(1)分散剤の補給
 分散剤の大部分はヒューストンから各機ドラム缶100本を搭載したハーキュリーズ、ロッキードエレクトラ等の貨物機によって送られた。一部はドラム缶6,000本積みのバージでコート・ザコアルコスやタンピコ湾に送られ、そこから飛行場へトラック輸送された。
 
(2)航空機の燃料の補給
 航空ガソリン(100〜130オクタン)は最寄りの精油所からトラックで補給されたが、場合によっては240kmに及ぶ輸送であり、数ヶ所はフェリーボートで渡らねばならなかった。ハーキュリーズ、エレクトラ用のジェット燃料も必要であったが、これは比較的容易に手配することが出来た。散布機の燃料消費量は11.8l/kmである。例えば3機のDC−6型機が1日に3回、1回に220kmの散布飛行を行ったとすれば、1日約23klの航空ガソリンが必要になる。同時に大量の航空潤滑油(飛行1時間当り30〜40l)、メタノール(離陸時40l)が必要である。
 
6 将来の計画への示唆
(1)防除費用の比較
 Steel manは1979年、防除費用の比較を行い、流出油1単位に対する空中散布費用は機械的回収法に比して1/10以下、海岸清掃費用の1/20以下であるとしている。Steel manによれば、海岸清掃費は$700〜3000/Bbl 海上回収費は$400/Bbl、海岸への漂着を防止するための空中散布による処理費用は$40/Bbl或いはそれ以上である。又海岸清掃費の$700〜3000には被害補償や法務費用は含まれていない。
 
(2)小型機の使用
 小型機の使用も油塊の位置があまり遠くない場合には経済性の高い事を示している。油濁防除の重点が油による海岸線の汚染防止にあることから、緊急対策には分散剤散布の必要装備を持つ航空機の組み込みを考慮しておくべきである。現在の所、大型機を散布用に運航出来る専門業者は限られているが、農業用に使われている小型機を運航する会社は各地にあり、器具も必要に応じて換装出来るようになっている。これら小型機は対応が迅速であり、他の防除のための人員、機材の準備が整うまでの措置としても有効であろう。これらの散布用器材も比較的安価に整備出来るので、是非計画の中に組み入れておくことを奨める。
 現在では、航空ガソリンを使用する飛行機よりも、ジェット燃料を使用する機種がヘリコプターを含めて一般的になっている。航空ガソリンの入手の困難なことを考慮して、例えば、ハーキュリーC−130、フォッカーF−27、F−28、ロッキード・エレクトラ等の大型ターボ・ジェット機、或いは、ボーイング737、707、ダグラスDC−8等のジェット機による空中散布が可能になる日も近いと思われる。
 
V−3 油処理剤の空中散布に関する調査研究8)(昭和58年度)
 海上災害防止センターでは、昭和58年度に「油処理剤の空中散布に関する調査研究」を実施し、成果をとりまとめた。以下に関連する部分を抜粋する。
 
1 調査研究項目
 農薬散布に使用される散布装置を装備するヘリコプターが、同装置を使用して油処理剤(以下「油分散剤」と表記。)を散布した場合に、海面上の油を効果的に処理することができる飛行高度、飛行速度、散布装置のノズル口径、散布粒径等の散布諸元を調査した。
 
2 調査研究の方法及び結果
(1)供試油分散剤
 調査に使用した油分散剤は次の4種とした。
〔1〕型式承認品(国内品)3種(詳細は省略。)
〔2〕航空機散布に実績のある外国製品(濃縮型)1種
 外国品は、国内品に比べ、比重(0.995)、粘度(22cSt、38℃)とも大きく、また、空中散布用として開発された製品である。
 
表−V.3.1 供試油分散剤の性状
 
(参考)
S−7 備考
自己かく拌型  
淡黄色透明・液体  
0.9±0.1 15/4℃
25±15 mm2/s/30℃
80±20  
 
(2)使用機種
 油分散剤の空中散布は、農林水産航空事業の分野における液剤農薬散布の技術を応用することとし、農薬散布に使用されている散布装置を利用した。
 
〔1〕ベル47G−4A型
レシプロ型(詳細は省略。)
 
散布装置Simplex 1300
〔2〕ベル206B型
ジェット型
散布装置Simplex 4900
 
(3)実験の実施
 油分散剤の散布諸元を得るため、室内予備実験、室内実験及び実機実験を実施した。







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