第23回国際水槽委員会 本会議出席報告
正員 小林弘明*
第23回国際水槽委員会本会議が2002年9月8日より14日まで、イタリアのベニスにおいて開催された。筆者は日本財団による助成事業にとして日本造船学会から本委員会へ派遣された。本会議についてはITTC本会議報告として本誌に掲載されているとことから、本稿においては筆者が委員長を勤めたEsso Osaka Specialist Committeeに関して述べることとする。
VLCC・Esso Osakaの名前は30代後半以上の操縦性研究者には馴染み深いものである。1973年に建造されたEsso Osakaは実船試験で浅水域での旋回やZigzagをはじめとする通常では得られない各種の性能試験が行われた。このことから、Esso Osakaを供試船として操縦性能の推定に関して共同研究が行われた。わが国においても、曳航水槽を保有する大学、研究所、造船各社が日本造船学会の試験水槽委員会の下にJAMPと称する操縦性検討委員会に集い研究活動を行った。JAMPの検討結果は日本造船学会誌668号にまとめられている。
では、なぜ2000年を迎えた今、Esso OsakaがITTCの場に再度登場してきたのか。CFD研究が発展している現状で、流体力推定の精度を評価する必要性が生じることとなった。各種の船型に対して多くの研究成果が蓄積されてきている一方で、国際的に多くの研究機関における実績と実船試験結果が要望されることとなった。このような背景から23期のITTCではEsso Osakaを対象船型としてSpecialist Committeeを創設しBenchmark Dataの作成を行うこととなった。
Esso Osaka Specialist Committeeへのわが国の参加に対してはいくつかの背景があった。第一はITTCにおけるわが国の役割についての配慮があった。又一方では操縦性研究におけるわが国のリーダーシップを確定化する意味も持っており、特にわが国の研究活動の成果として国際的に提唱している操縦数学モデルであるMMGモデルの確定化の意図を含んだ対応であった。
Esso Osaka Specialist Committeeは他のSpecialist Committeeと同様に構成メンバーは通常委員会に比べ少なく、以下の5名により検討が進められた。
Prof. H. Kobayashi Tokyo Univ. of Mercantile Marine, Japan(Chairman)
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Dr. J.J. Blok
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MARIN, Netherlands (Secretary)
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Dr. R. Barr
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Hydronautics, USA
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Dr. Y.S. Kim
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KRISO, Korea
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Dr. J. Nowicki
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FSNEP, Poland
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検討は構成メンバーによる分担作業で行われ、次に示す5回の専門委員会の会合において各方面からの検討が行われた。
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第一回
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2001年7月
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MIT (USA)
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第二回
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2001年11月
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MARIN (The Netherlands)
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第三回
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2001年5月
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FSNEP (Poland)
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第四回
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2002年10月
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東京商船大学 (Japan)
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第五回
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2003年2月
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KRISO (Korea)
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以上、足掛け3年にわたる検討により、本専門委員会の主要な命題を達成することが出来た。この検討結果が本年9月に開催されたITTC本会議において報告することとなり、日本財団による助成事業として日本造船学会から筆者が派遣されたものである。
筆者は9月13日に行われたEsso Osaka Specialist CommitteeのChairmanとして本会議に出席し委員会活動の報告を行った。報告の内容はITTC報告のとおりであり、その概要をいかに列挙する。
1. 本委員会は、前回のITTC総会時に設立された専門委員会である。
2. 本委員会の使命は特定の船舶(船名:Esso Osaka)の操縦性能を表現する指標値を提言することにより、今後の研究活動を円滑に進めることにある。
3. 使命に基づき過去に世界各国で実施された30件以上の試験結果を検討した。
4. 水槽試験に関する供試船の操縦性能は操縦性を表現する数学モデルの係数として提出されていた。係数には使用している数学モデルの内容が反映されるが、提出されている各機関の数学モデルの内容については十分な資料が提供されていない状況であった。さらに、計測流体力は模型試験実施時の実験状態が大きく影響すること、かつ試験結果の解析方法も影響することも明らかになった。
5. 既に提出されている操縦性に関する係数は、その実験状況や解析過程も不明なことから、検討対象から除外することとなった。新たなデータを収集する必要が生じ、このために日本国内の研究機関の協力により新たなデータが提供された。
6. 専門委員会の使命であるEsso OsakaのBenchmark Data作成は検討の結果、現在各国で主に用いられている2種の操縦性能表現方法に準拠して操縦性能を提言した。
7. 浅水域における同船の性能については、今回委員会より提示された手法を用いることにより、同様に提言できることを示した。
今回ITTC本会議に出席し以上の報告を行った事により、次の成果が得られたと考えられる。
精密な性能推定のためには研究と実験方法についての十分な理解と知識が必要であること、そしてこのことを実現しているわが国における操縦性研究のレベルの高さと層の厚さを国際的に示すことが出来た。又、ITTCが今回計画した専門委員会の成果を得るためにわが国の研究機関が多大な貢献をしたこと、そして、わが国の操縦牲研究者が提唱するMMGモデルの有効性を再度示すことが出来たものと考えている。
*東京商船大学
第23回国際水槽委員会 本会議出席報告
正員 児玉良明*
1 はじめに
筆者は、日本造船学会により、日本財団による助成事業として、2002年9月8日から14日までイタリアのベニスで開催された第23回国際水槽委員会(ITTC)本会議に派遣された。会議の詳細については本誌の「第23回国際水槽会議(ベニス)報告」に報告されているので、ここでは、筆者が務めた抵抗委員会(Resistance Committee、以下、RC)の委員活動と本会議での出席経験に基づき、いくつかの感想を述べさせて頂く。
2 “走りながら考える”CFDのV&V
最近のRCの特徴の1つは、2期にわたり委員長を務めたIowa大学のStern教授の指導の下、CFD(Computational Fluid Dynamics、数値流体力学)について、V&Vと略称されるVerification and Validationに力を入れたことである。Verificationとは、計算に用いられた格子が充分細かく、得られた離散解が連続解の良い近似になっているかどうかを調べること。Validationとは、verifyされた計算結果が実現象(実験結果)にどれだけ一致しているかを調べることであり、両者を合わせると、要するにCFD計算結果の信頼性を調べることである。
CFDの信頼性に影響を与える要素には、(1)物体形状表現の正確さ、(2)格子解像度、(3)乱流モデルの有効性、(4)自由表面の取り扱い(波がある場合)、(5)計算の収束性などがあるが、現状では、これらのどの要素も技術的に未完成である。従ってユーザはCFDを、勘と経験を頼りに使うことになる。
V&Vは、このような状況を改善し、誰でも安心してCFDを使えるようにするための努力である。第22期ITTCで承認されたV&VのためのQuality Manualは、2000年にGothenburgで開かれたCFDワークショップなどで、実際に使ってみるとうまく行かない場合が多いと指摘され、それを受けて第23回のRCで改良が図られた。しかし、最後までRC全員の意見の一致が得られないまま作られた改良版は、ITTC本会議で承認されたが、引き続き第24期のRCにその改善のタスクが課された。このようなことが起きたのも、V&Vの技法が未完成であるためである。しかし、IMOの操縦性暫定基準に見られるように、数値計算によって性能保証が行われる時代になりつつあり、CFDに関するV&Vの重要性は高まっており、当分“走りながら考え”ざるを得ない。
3 実験か?計算か?
CFD研究は、船舶に限らず航空・機械の分野でも、悪く言えば停滞、良く言えは実用に向けた改良の時代にいるように思われる。V&Vの議論が盛んなのも、CFDが一般ユーザの時代に入りつつあることの反映であろう。一方、実験的研究は、各種の光学的計測法など、新しいものが多いように思われる。
ITTCは、技術の最先端について議論するところであるよりも、いかに最先端の技術を実用に活かし、高い品質のアウトプットを日常的に生産し続けるかについて議論するところである。最近のRCの委員は、実験関係よりもCFD計算関係の方が多い傾向があり、特に今期についてそれが言える。これは上記のITTCの性格の現れであり、自然な成り行きであろうが、一方、船舶関係に実験系の研究者が少なくなっていることを反映しているとも思われ、やや心配である。
4 実船実験
RCの活動の究極の目的は、模型実験あるいは数値計算を基に実船性能を正確に推定できるようにすることであると考える。CFDを用いると、現在でも実船レイノルズ数の計算が可能である。しかし、得られた計算結果をvalidationをするための詳細な実船実験データが決定的に不足しており、これが技術発展のボトルネックになっているように思える。しかし、従来の海上公試で得られるマクロ的なデータだけでなく、流速や圧力などの分布データを取得する実船実験は莫大な費用がかかり、実施できる機会は殆ど無い。従って、得られる実験データは貴重であり、一部の組織が独占するのは余りにももったいない。ITTCのような国際的な組織が音頭をとり、国際的な体制の実船実験が実現すれば良いと思う。
*海上技術安全研究所
国際試験水槽会議 本会議出席報告
正員 影本 浩*
1 はじめに
日本財団の援助で、平成14年9月8日から14日までにかけてイタリア・ベニスで開催された第23回国際試験水槽会議(ITTC)の本会議に出席することができたので、会議の概要、会議を通じて感じたことなどをご報告したい。
2 イタリア・ベニス
ベニスについては、ゴンドラで有名な運河の多い町くらいの予備知識しか持ち合わせていなかったが、着いてみてびっくり。町の中は迷路のような細い道が縦横にはりめぐらされ、車は一切入れず、交通機関は船だけであった。写真(右)は、船からとった運河の様子であるが、このように日本でいえば通勤電車に相当する乗り合い船、トラックに相当する荷物運搬船、あるいはタクシーと称するモーターボートなどが絶え間なく行き来し、その中で観光客やカップルをのせたゴンドラがゆったりと進んでいくというのが、ベニスの日常風景である。世界中がこのようであれば、船の研究に対する一般の人々の関心ももっと高くなったであろうなどと思ったが、いずれにしても、通勤電車感覚で船に乗ってターミナル間を移動し、最寄りのターミナルからは2人がやっとすれ違えるほどの狭い迷路のような路をくねくねと曲がりながら、目的地にたどり着くという生活を会議の期間中続けたわけである。
3 第23回国際試験水槽会議本会議
今回の国際試験水槽会議本会議は第23回目にあたり、INSEAN(イタリア船舶試験水槽)の主催で開催された。参加者は配布された参加者名簿によれば217名で、その内、日本からは40名であり、主催国のイタリア(31名)を凌いで最多の参加者であったと思われる。内訳は、民間から9名、公的機関(主として海技研)から7名、大学から24名である。日本、イタリアについで参加者が多かったのは韓国からの19名で、内訳は民間から7名、公的機関(KRISO)から4名、大学から8名で、日本に比べて民間からの参加者が相対的に多いのが目立った。
国際試験水槽会議(ITTC)では、会議内に設けられた各技術委員会が、水槽試験に関わる技術(試験技術、理論計算法)をレビューし、今後の課題をrecommendationという形で抽出するという活動を行っている。3年毎に開催される本会議では、それぞれの技術委員会がその活動結果を発表し、それについて討議するといった形式で進められる。今回は、その他に次のようなテーマでグループディスカッションの時間が設けられた。
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9月9日(月)
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A1:
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新しい実験技術と装置
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A2:
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CFDによる推定の精度
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9月10日(火)
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B1:
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モデルの製作と製作精度
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B2:
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IMO(国際海事機関)規準とITTCの関係(特に操縦性と転覆に関連して)
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今回の各技術委員会報告では、水槽試験に関して特にブレークスルーとでも言うべき技術の発展は見受けられなかったが、反面着実に進歩しているという印象を受けた。24時間無人運転可能な操縦性試験装置などといった興味深い水槽の紹介もあった。概してヨーロッパ各国からの参加者の元気がよく、逆に言葉の問題もあろうがアジアからの参加者があまり目立たなかった。また、ブラジルも先端的な大型水槽を新設するなど、新興海洋石油生産大国としての海洋への傾注ぶりが窺えた。我が国の海上技術安全研究所に新設された深海水槽も紹介されたが、近年は深いピットを備えた水槽がトレンドのようである。
特記事項としては、来期の第24期ITTCでは海洋工学に関する技術委員会(Ocean Engineering Committee)が独立の常設委員会として復活し、さらに海洋環境に関する技術委員会(Committee on Assessment of Ocean Environmental Issues)(常設ではなく時限付きのもの)が新たに設けられたが、これらは、我が国の強力なイニシアチブのもとに実現したものである。
ともあれ、会議は淡々と進み、そしてつつがなく終了し、再び3年後の第24回本会議に向けて各技術委員会の活動が始まった。日は沈み、また日は昇り、水槽試験技術の発展という崇高な目標に向けてITTCは粛々と進んでいるかに私には思えたが・・・。
4 国際試験水槽会議の裏−同床異夢−
会議が終わり、ベニス空港に向かうバスで、ヨーロッパの某大学教授とたまたま同席し、空港へ到着までの間話をする機会を得た。会話の中で、彼は「ITTCはPoliticsだよ。そのために僕は今回あえて(技術委員会の)委員長の座を降りたんだ」と平然と言っていたことが強い印象として今でも記憶に残っている。つまり、「ITTCはパワーゲームだ。委員長という立場でパワーゲームをやるわけにはいかないので、あえて委員長の座を降りた」という意味であろう。自身で言う通り、彼は大きなEUプロジェクトのリーダーを務めるなど、その分野ではやり手の研究者として知られており、はたから見れば第24期も当該技術委員会の委員長を務めて当然の人物である。3年前から技術委員会に初めて参加し、日本代表委員として日本の名を汚さぬよう、与えられた仕事をこなし、それでよしと考えていた私としては、頭をガーンと殴られた感じてあった。無邪気な自分が恥ずかしくさえ思えたのである。
振り返ってみれば、今回の本会議のプログラムの中で一番盛り上がったのは、グループディスカッションで、中でもIMO規準とITTCとの関係(ITTCの成果をIMO規準にどのようにして反映させるか)についてのディスカッションはチェアマンが困るほど発言したい人か多く、その発言内容も一見本題とは離れて、ただ自分の研究の宣伝じゃないかと思えるものか多かったのであるが、既にパワーゲームは始まっていたのだ・・・。任意団体であるITTCに比べて、国際連合という強大な機関の1組織であり、国際的な強制力を持つ規準の決定権を持つIMOははるかに強大な権力をもっているわけであるから、IMOでの決定プロセスに何らかの形で影響力を行使できる立場に食い込むことができれば、その研究者にとっては研究資金の獲得を始め様々な意味で大きな実質的メリットがあるはずである。
ITTCでは現在、水槽試験の標準試験法マニュアル(ITTC standard procedure)と水槽試験結果や理論計算結果の不確かさ解析(Uncertainty analysis)の標準解析法マニュアルを各技術委員会で鋭意作成中であるが、これらについても単に水槽試験や理論計算の信頼性向上という崇高な目的だけのためにやっているわけはなく、たとえば自分のところの水槽にしかできないような高度の技術をこれらの標準マニュアルに入れ込み、IMOやISOを通じて世界標準とすることによって、水槽試験ビシネスに役立てようというパワーゲームが水面下で戦われているのかも知れない。
5 あとがき
ITTCはパワーゲーム(かもしれない)と述べたが、翻って我が国の対応はどうであろうか。あえて生意気なことを言わせてもらえれば、ITTCに参加している我が国各機関のITTCに関する考え方が今ひとつ明らかでないというのが、3年前からITTCに関わってきた者としての率直な感想である。明らかでないというのは、明確な意思表示が感じられないということである。ベニスでの会議期間中に我が国から参加していたある大学の先生から言われたことの受け売りであるが、ITTCを単なるサロンと考えるのでなく、ITTCをどのように利用するのかといった明確な方向性・戦略、ビジョンを持った上で活動すべきであろう。この中には、ITTCから撤退するという選択肢もあり得る。
この意味では、韓国代表団の意気込みは明確であったといえる。委員でないいわゆるオブサーバの参加が目立ち、その中の一人で私の友人である大学教授は「今回はITTCがどのような活動を行っているのかを見るために参加した」と言っていた。参加費が非常に高いITTC本会議に、ただ興味本位の様子見たけのために参加していたとは考えられない。どうでもいいことのようであるが、帰りのベニスからパリまでの飛行機で一緒になった韓国からの参加者はすべてビシネスクラス利用であった。これらを考え合わせると韓国代表団の後ろには明確な戦略を持った強力なスポンサーがついていたということではなかろうか。
6 謝辞
私の今回のITTC本会議参加にあたっては、「国際学術協力に係わる海外派遣 国際会議派遣」として日本財団からの助成をいただきました。この紙面をお借りして深く感謝いたします。また、助成をいただくにあたり、各種手続きをお世話いだたいた日本造船学会の久保田事務局長及び吉田様にもお礼申し上げます。
*東京大学
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