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「ケアする人のケア」日米フォーラム 東京
2002.11.10 Sun. 10:00〜16:20
魂の触れあう営み
一人ひとりの生が輝くために
 生きているということはどういうことなのか―これは、現代社会に生きる多くの人たちがかかえる問いではないでしょうか。私たちは人と人のかかわりのなかで、生きている意味を探し求め、不毛な相克をのりこえ、自分と他者の存在感の回復をはかる実践をはじめています。それはまさに「ケアの時代」の生き方といえるでしょう。
 ケアという言葉は一般に「世話する」といった意味で広く使われています。現在では、医療や福祉や教育といった分野だけでなく、人間の普遍的な営みという次元でとらえ、そこから新たな社会の価値観を見出そうとする動きもあります。
 しかし現実には、ケアにおける経済性、効率性の追求、サービス向上の要求などから、ストレスが増大し、しかも、家族や学校や企業や地域社会などコミュニティにおけるつながりの希薄化から、苦しみが孤立化していることが「ケアの時代」の大きな問題となっています。
 この問題にたいして、日米両国においてもさまざまな取り組みが始まっています。とりわけ、アメリカでは、アートを用いたプログラムが先駆的に実践されています。アートをとおして、ケアする人が生きなおしをするということだけでなく、人と調和しながら主体的に生きることを学ぶことができるからです。
 このフォーラムでは、「ケアする人のケア」という問題にどのように対処していけばいいのか、さらにはケアを介した魂の触れ合いをとおし、どのような社会をつくっていくことができるかを探っていきたいと思います。
 
プログラム
10:00−10:10 オリエンテーション
 
10:10−10:30 イントロダクション
「一人ひとりが輝くケアの時代」
 「ケアする人のケア」の研究をとおして浮き彫りになってきたのは、ケアをめぐる苦悩の孤立化である。この日米に共通する状況の根底には、自他の存在感の希薄化という現代社会のかかえる問題がある。日米のケアする人のケアの取り組みをとおしてケアの時代の個のあり方を探る。
 播磨靖夫(財団法人たんぽぽの家理事長 芸術とヘルスケア協会代表理事)
 
10:30−11:20 キーノートスピーチ
「生命を生かしあうケア」
 生命に向き合うケアの現場では、他者を生かし、他者によって生かされる関係のなかでおたがいの存在が際立ってくる。このような相互的な営みのなかで気づく人間のかけがえのなさ。そこから生まれてくる新しい医療・福祉のあり方、ケアの文化の築き方について考える。
 堂園文子(堂園メディカルハウス総合マネージャー)
 
11:30−12:30 事例報告1
「医療をめぐるケアする人のケア」
 患者の治療が最優先される病院においては、家族や医療スタッフなど、ケアする人の心身の健康は後回しにされがちである。このようなケアする人を癒すには、人と人との魂の交流が重要である。とりわけアートをもちいることは、スピリチュアルな深い次元でのかかわりができるために有効であるといわれている。病院における取り組みを紹介し、人が病や死に向き合いながら、それとどう折りあいをつけ、おたがいの生を充実させていくかについて考える。
 エイミー・ハンブリン(ワシントン大学病院アートプログラム・ディレクター)
 斉藤悦子(静岡県立静岡がんセンターボランティアコーディネーター)
 
13:30−14:30 事例報告2
「癒しのコミュニティの回復」
 看護や介護をになうことによって地域のなかで孤立しがちなケアする人にどのように対応していくか、さまざまな試みが今はじまっている。苦悩が孤立化しがちなケアする人を、どのようにサポートすればいいのか、そして、ケアという営みを生きるエネルギーに変えていくためのコミュニティをどうつくるのか、その方法と課題について考える。
 ジュディ・ロリンズ
 (ワシントン・ベリースペシャルアーツ・アーツコネクション・プログラム開発ディレクター)
 牧野史子(介護者サポートネットワークセンター・アラジン)
 
14:50−16:20 パネルトーク
「ケアにおけるアートの役割」
 西洋人は人間の葛藤をロジックで解決するが、日本人は葛藤を美的に解決する手段をもっているといわれている。おたがいを理解しあうことが求められるケアの現場では、存在の仕方や価値観の違いから生じる悩みが少なくない。現在アメリカでは、こうしたケアをめぐる葛藤をアートをとおして解決する取り組みがはじまっている。ここでは、ケアの現場における人間の葛藤をどのように解決していけばよいかを語り合う。
 ジル・ソンク・ヘンダーソン(フロリダ大学アートとヘルスケアに関する研究教育センター・ディレクター)
 齋正弘(宮城県美術館教育担当学芸員)
 佐々恭子(現代美術家)







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