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<指導者からの提言>
「海洋少年団の活性化および団員拡充について」
藤倉 信一郎(名古屋団)
 海洋少年団は創立50周年をむかえ歴史を重ねていっています。しかし、残念なことに海洋少年団はいろいろな奉仕活動や海にかかわる活動をしているのにもかかわらず、いまだに全国に知名度は低く団員数も年々減少傾向にあります。ではどのようにしたら活性化ができ、かつ団員拡充できるのでしょうか?昨年の会議を参考に私なりに3項目に分けて考えてみました。
 
1. 各団のつながり
 それぞれの団には団の特色があります。しかし、隣同士の団でもなかなかお互いを知る機会は多くはありません。たとえ、ある団がユニークな活動をしていたとしてもそれが他団に伝わなければ全体としての団員の拡充にはなりません。団と団との交流ができれば最高なのですがやはり日程の事もありお互いの日程を合わせることは難しいと思われます。そこで、指導者だけでもEメールを使ったりしてお互いの団の日程を(例えば月単位で)教えあい、いつでも参加できる形にすればどうでしょうか?1年に何回か若い指導者間で報告会をしても面白いと思います。まずは県単位でまとまり、若い人から協力し「古き」から「新しき」にかえていく必要があると思います。
 
2. 国際交流のすすめ
 「海のような広い心で団結しすべての人を友とします」今の日本の海洋少年団はこの誓いに対し消極的な気がします。今はカナダ、香港、韓国そしてオランダと交流がありますが参加団員名簿を見るとだいたい同じ団からの参加ばかりで幅がありません。日本国内だけではなく国外を見るという事は今後の国際化社会を知るうえで大変プラスになり団の活動にもカンフル剤的役割をすると思います。
 実際私も国際交流に参加し団員が一生懸命に使い慣れない英語を使って会話や活動そして異国の友達作りなどに取り組む姿勢が印象に残っています。何人かの国際交流体験者に聞いたところ、ほぼ全員がもう一度参加したいと感じている団員ばかりでした。現在の傾向は“世界中のすべての人”との意味合いが“団内のすべての人”になっているような気がします。年々団員数が減ると言うことは、海洋少年団は続けていても魅力を感じられないということを深く考えなければいけません。ある交流で地方の団員と話す機会がありましたが、その団員は国際交流そのもの自体知りませんでした。地方にいくほど情報量が少ないようです。そんな地方にも平等に行き渡る情報の仕方を改善していく必要性があるのではないでしょうか?
 これからは訓練の一部に国際交流など新しい分野を作っていくことが肝心だと切に思います。限られた場所で限られた訓練をするのではなくもう少し柔軟性をもって普段体験できないような新しい事をそしてその感動を後輩に伝えていくそんなシステムが作られるのが理想です。
 
3. 若い指導者の育成と中心となる活動
 昔の伝統を守るのも勇気ですが変えていくのも勇気だと思います。若い人の意見が取り入れられるような体制を作っていくことが大切だと思います。まだまだ若い指導者が足りず、またいても勉強や仕事などで、なかなか活動にでられない方が多いのが実情で年輩の方に頼らざるを得ません。また活動に参加できたとしてもすべてを教えきる力を持った若い指導者はまだまだ少ないと思います。
 若い人を育てるにはやはり時間がかかります。そこで、いろいろな方面から講師を呼んだり(たとえばヨット、カヌーそして英会話など)今後海洋少年団にとって必要な分野を一般公募で他の子ども達を団員とともに参加させてはどうでしょうか?団員にとっては今後の教育にもなりますし、一般の子ども達も楽しければ入団してくると思います。
 
 今後の活動は目先ではなく何年か先をみておかないと指導者がいなくなってしまいます。いきなりは変えることができませんが少しずつ一人ひとりがお互いに協力し合えば海洋少年団はもっともっと伸びていくと信じています。
 
「海洋少年団の活性化と団員拡充について」
富田 隆信(中日団)
 海洋少年団に入団して20年が過ぎました。団員からのたたき上げで、現在は指導者をしております。全盛期に近い海洋少年団を体験し、海洋少年団が衰退し始めるころから指導者となりました。我らが中日団もひと時期勢いをなくし、衰退の一途をたどった時期がありました。団員数は全盛期の4分の1以下になり、新入団員は10分の1になりました。それからが、私にとって本当の海洋少年団活動だった気がします。まずは、現場組織の建て直しを着手しました。現場に最も近い指導部を改編して、指導者の統括と団幹部との連絡系統をしっかりしました。次に団員との交流に努めました。団員との会話をする機会を増やし、レクリエーションに一緒に遊び常に現場にいるようにしました。そして、子供達の会話の中から新しいものを発見しました。また、自分自身の中で良いと思ったことはまずは実践して、万が一失敗しても反省をし、成功するようにがんばってきました。現在の中日団はそんな課程を得て、出来上がってきました。
 
 さて、現在の海洋少年団を自分なりに検証したいと思います。現在の海洋少年団の指導者、団幹部は各団ともに高年齢化が進んでいます。海洋少年団をやることは、時間が必要となるために、なかなか後継者が出来ないということは考えられます。後継者作りの遅れは、団に新しい風が吹かないために、活性化が出来ないように思えます。だからと言って、後継者を適当に作るわけにもいかず、現在のような形になっているのではないでしょうか。私自身も指導者を10年やってきて、団員に近いお兄さんから、今はおじさんになってしまいました。現場の指導者は、常に団員に年齢が近い指導者がやることにより、団員が楽しい行事が出来るのではないでしょうか。しかし、団の運営には力を持った団幹部も当然の事ながら必要で、団組織を維持していくためには、現場で実際に指揮を若手指導者、パイプ役となる中堅指導者、そして、団運営を行うベテラン指導者が共存していくことが必要でありますが、その事が最も難しい問題でもあります。
 
 さて、若手指導者をいかにして育てていくかということになりますが、具体的にどうすれば良いかということになります。私自身が考えるには、技術も必要ですが、人とのつながりはもっと必要ではないでしょうか。そして、その人とのつながりは海洋少年団を続けるひとつの要素になるのではないでしょうか。人とのつながりはいつの時代も大切なものです。そして、その人とのつながりの中で大切なのは、人情なのではないでしょうか。人情とは思いやりや情けなどの事で、人として生きていく為には、最も大切なことではないでしょうか。また、人との出会いで新しい世界に出会えることが出来ます。また、会話することにより、今までの自分自身が見直すことが出来ます。また、会話を続けることでその人を認めることもできます。そして、その中から人と言うものを学び取っていくことも出来ます。海洋少年団には本当にたくさんの個性を持った人がいます。個々に優れた能力があり、その能力は他にまねが出来ないことばかりです。本当に生きた教材がたくさんいる現場だと思います。海洋少年団には、研修会が非常に少なく、せっかくの生きた教材と出会える機会が少なくて残念で仕方がありません。会話能力に優れた人、親分肌で面倒見のいい人、他人を引き寄せるオーラを持った人、気持ちが熱くてやけどしそうな人、たくさんの人がいます。こんな人たちと出会うための機会を作ってほしいと思います。指導者ばかりでなく、年長団員や中等団員にも必要ではないでしょうか。研修会では、技術や知識を学ぶことは大切なことですが、人との出会いはそれ以上に大切なことではないでしょうか。人との出会いは活性化の重要なポイントになるのではないでしょうか。
 活性化と同じくらいに考えないといけないものは、団員の拡充です。団員募集は各団の特徴を活かして考えていかなければなりません。行政関係を利用できる団、学校関係を利用できる団、新聞やテレビなどの報道機関を利用できる団など、各団がさまざまな方法があると思います。しかし、ここで一番の念頭に置くことは、各団のPRも必要ですが、海洋少年団を知っていただくことが最も重要なものではないでしょうか。社会的に知名度の低い海洋少年団をメジャーなものにするために各団の協力が必要不可欠になってくるのではないでしょうか。そして、各団の特徴を十分発揮するためには、その土台をしっかりと作り上げていく、運営が求められていくのではないでしょうか。
 
 私自身が現在の海洋少年団に求めるものは、楽しい仲間作りと、正確な知識・技術作りだと思います。楽しい仲間作りは全国大会や地区大会を有効利用するものと、地区行事を増やし、指導者ばかりでなく団員にもたくさんチャンスを与えるべく、活動内容を考えていかなければならないのではないでしょうか。また、知識・技術は研修会も必要不可欠ですが、そればかりではなく現場の伝統や知識を伝える活動も必要なのではないでしょうか。活動を続けるにあたり、現在の海洋少年団の良いところは残し、時代に合わないものは時代に合わし、そして、悪いものは治していくことが重要なのではないでしょうか。ものごとを変えることは、とても勇気のいる事ですが、その勇気がなければ物事は何も前には進まないのではないでしょうか。これからも、海洋少年団を盛り上げて、活動を充実させていきたいと思います。
 
「海洋少年団の活性化と団員拡充について」
―若手指導員および近所の団同士の交流を―
嶋田 善和(蒲郡団)
 私が蒲郡団に指導員として入団した当時、約20年前の故畑川団長の頃、団員数は約300人代だと思いました。その後、浅井団長の頃には新4年生の募集100人に対して150人以上が応募するようなり、入団試験をして落としたにもかかわらず400人を越える団員数になっていました。そのため、訓練時の隊割も初等6隊×60人前後に、中等・高等がつく形となり、指導員も常に20人弱の出席が必要でした。設備の面においても水泳訓練には、1中学校と隣の1小学校を同時に借りて泳力分けで訓練していましたし、ボート訓練においては、他団にない競艇場という波のない水面を利用させていただくにも、かかわらず4年生以上は水上訓練が時間的にとれない状態でした。
 
 その後、蒲郡市の総人口は大きな変動をしていないにもかかわらず、団員数は毎年のように減少して、現在約50人。上記の1割位にまでになりました。団員数の多かった時と比べて小子化による市の総人口に対する小学生人口の減少が一つには団員数の減少の原因としてあげられますが、主として子どもたちの行動内容の変化が大きいのではないかと思われます。少年団活動としては、当時男子のみの少年野球があったくらいでしたが、現在、ボーイスカウト、ガールスカウト、交通少年団、緑の少年団、各種スポーツ少年団、電能(コンピュータ)少年団などが作られ、一般の習い事も当時より多種になり子ども(親)の選択肢が増え、子どもの自由時間が減少しているなど、多数の説明がつけられると思いますが、その中で団員数の減少をくいとめるかが問題となります。
 今年度の活性化及び団員拡充についての活動が話題にされる以前より、当団の内でも色々対策がとられてきました。その例として成功したもの、失敗したもの、好ましくなかったものなどを挙げてみます。
 
・団員募集を公報・教育委員会などを通して呼びかける。
 公報にて募集をする。教育委員会より校長会にお願いする。指導員が各学校を訪問して教頭さんなどに直接お願いし募集要項を渡す。
・団員を通して知人を入団するように頼む。
・団員の父兄に活動をより理解していただくため、父兄参加の訓練をする。耐寒歩行、カッターなど。
・一般市民の目につく所で訓練をする。
・子どものきらう訓練と楽しみを組み合わせる。(出席率のアップ)
・潮干狩りや海釣りを行事に入れる。
 
 以上のように色々な試みをしましたが、海洋少年団活動は訓練であり、躾けであり、教育であり・・・。とすれば、子どもたちが喜ぶような内容に活動を持っていくのは逆効果であって、何かむづかしい事を達成した喜びとか、何かを習得した喜びを子どもたちに与え、指導者を団員が一緒に楽しめるように持っていこうと思います。
 
 まず、そのために、指導員がその訓練を楽しく思えるように自己の訓練をしなくてはなりません。例えば、ヨットを子どもたちに教えようとするのに指導員がヨットのイロハ程度の知識で風向きに対して帆はどうする、舵はどうすると卓上の理屈を恐る恐る子どもの実技にあわせて説明する程度でなく、子どもを舟に載せて十分満足するまで指導員が操縦して楽しさを体感させ、自分からヨットの操縦を覚えてたいと子どもに言わせる事から訓練を始める。基本訓練の手旗で言えば、一般訓練の時々に指導員同士が手旗で話し合うとか、手旗を現実に使ってみながら子どもの感心を引くなど。子どもに対して指導員が訓練を訓練として教えるのではなく、訓練の結果こんないい事があるぞ、こんな事ができるぞと示せるくらいの事を指導員各自が身につけていただきたい。
 そんな事を言っても、指導員が全員そのような専門家になるわけにはいかないので、まず1つ自分の特技を決めて、その内容なら子どもを指導できるぞと自己満足できる程度になっていただきたい。その後、ゆっくりでもいいので1つの特技をさらに深めるとともにその他の分野も少しづつ広く覚えていってもらいたい。
 
 さらに、現在各海洋少年団は同じおきて、同じきまりを持って活動をしているが、その訓練の方針、力点、方式などそれぞれ異なっているようなので、訓練ごとの内容、レベル教え方に差が出ています。自分の団の中ではその分野では上級指導者だと思っていたが、余所の団では初心者となる事もありうると思います。
 指導員のレベルアップのため、他(自)団の長所・短所を知るために、硬直化した訓練内容を見直おすため、より多くの仲間を得るため若手指導員同士の団を越えた交流と、さらに近所の団同士の交流を提案します。







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