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事例4 神戸市(兵庫県)
〜NPOを含む市民活動との協働を目指す〜
1. これまでの取組み
■総合的な支援窓口、地域ごとの活動拠点の設置
 神戸市は、震災後活発化した市民活動の総合的な支援窓口が必要であると考え、平成10年4月に市民活動支援課を設置した。同課は14年4月、分室として市役所内に「協働と参画のプラットホーム」を開設、(1)情報機能(情報誌の発行、ホームページによる情報発信など)、(2)支援機能(パートナーシップ活動助成、ワークショップスペース提供など)、(3)編集機能(人・モノ・金・情報などの資源を最適編集)、を担うこととなった。
 一方、地域では、閉鎖した老人いこいの家を活用して市民活動拠点(サポートステーション)づくりを進めている。小学校区ごとに地域福祉センターを整備するのにあわせて、老人いこいの家の機能も同センターに集約することとなり、その活用策として考え出されたものである。中間支援を行う団体に入居してもらい、その活動を間接的に支援することにより、地域の市民活動が活発化することを期待している。現在3か所がオープンしており、その一つの小野柄老人いこいの家は、市民基金KOBEが入居している(平成8〜10年度に行われた阪神・淡路コミュニティ基金による市民活動支援を継承発展させるため、NPO、学識者、神戸JCなどにより設立)。
 
■パートナシップ活動助成事業
 NPOに限らず市民全体を対象として、市民提案型で地域課題解決を目指す事業に助成する制度で、1件あたりの助成限度額は200万円。14年度は32件が採択されている。市では、各局が実施している助成のすき間にある分野で、特に初動期の活動を支援するのが目的としている。今後の運営については、地域的な課題については各区で対応することとし、03年度から助成事業の一部について選定から決定まで各区役所で対応することを検討している。
 市の市民活動支援に関する基本方針は中間支援組織を通じての側面支援だが、パートナーシップ活動助成事業では直接支援に乗り出している。これは、1つにはどのような事業で協働が可能か、また助成による効果はどうかといった点を見極めるために行うものであり、また、地域力・市民力の強化を図るために市民の積極的な提案を促すという意義もある。
 
■事業委託の推進
 さらに市では事業の委託や共同化などを通じて、市民活動団体の自立と専門性の伸張を促し、市との良好なパートナーシップづくりを図ることをねらっている。ほぼ順調に事業の数も委託額も伸び、平成14年度は、在宅介護支援センターの運営委託など16件で総額約2億1千万円に上る見通しである。
 市ではNPOと神戸市の協働研究会というNPOと行政の定期的な話し合いの場を平成13年度に設けている。行政とNPOが協働して公共公益サービスを進めていくために、相互理解を図りながら協働の基本的な枠組みを検討していくことを目的とするもので、中間支援NPOの代表者・研究者・行政からなる世話人会を核としつつ、完全公開型で会議やワークショップ、事例研究フォーラムを行っている。
 
2. 神戸市における協働
■市民活動実態調査での協働
 神戸市では、県よりも早く市民活動センター神戸との協働が始まっている。平成10年度は市民活動実態調査、11年度からは緊急地域雇用対策事業の一環としてNPO支援アドバイザー派遣事業(市民団体の要請に応じてアドバイザーを派遣し、パソコンや経理・労務の指導・相談などに当たる)を開始し、現在も継続中である。
 神戸市と市民活動センター神戸との連携については、震災復興に手をとられてNPO・ボランティア支援が後回しになっており、その解決を目的として市民活動支援課を設置したが、市内の市民活動の現状が把握できておらず、どのような分野から手をつけるべきか判断できない状態であった。そのため震災復興からの実績があり、市民活動に関する情報を多く持っている市民活動センター神戸に相談したのがきっかけであった。
 一方、市民活動センター神戸にとっても市民活動実態調査は初めての委託事業であり、工程管理がうまくいかず大幅な赤字になるなど、とまどいもあったが協働事業の経験がNPOとしての能力を高めていった。また調査結果についても、行政による調査では得られない実態をすくい上げることができるなど、双方にとってプラス面があったと、市・NPOともに評価している。
 
■スポーツNPOを育成・支援
 「健康・スポーツ都市こうべ」を掲げる市は、身近で、誰でも、正しく、楽しく、スポーツ・健康づくりができるまちづくりを目指して神戸アスリートタウン構想を策定し、あらゆる世代の市民が気軽にスポーツを楽しめる神戸総合型地域スポーツクラブの育成を推進している。地域住民が主体となり、誰でも参加できる開かれたクラブで、これを行政、神戸を拠点に活躍するトップアスリートやスポーツNPOが支援するものである。
 こうした構想の重要な担い手として、市のバックアップも受けながら幅広い市民層が結集して神戸アスリートタウンクラブを設立した。
 神戸アスリートタウンクラブは、市からの委託事業として市内体育館利用実態調査を実施し、正しい走り方教室や24時間リレーマラソン大会、「スポーツ夢フェスタinウイングスタジアム」というイベントの企画運営などを実施している。スポーツ夢フェスタでは、ワールドカップで使用された神戸ウイングスタジアムが、芝生の張り替え等の工事に入るまで数日間空いているため、これを利用して市民参加の催しができないかとの神戸アスリートタウンクラブの発想により考えられたものである。
 張り替えのために剥がされる芝生や、撤去される仮設スタンドの椅子を神戸アスリートタウンクラブでは、「ロナウドの芝生売ります」「ベッカムの座った椅子が見学できます」とPRし、予想をはるかに超える市民を集めることができた。
 神戸アスリートタウンクラブはボランティアで成り立っている部分が多く、財政的な自立には至っていないが、互いに何をしてほしいのかについて意見交換をすることにより、神戸アスリートタウンクラブと市との役割分担が明確になり、具体的な支援策を立ち上げていくことにつながると市は考えている。
 
3. 課題と今後の展望
■区役所とNPOとの連携なども課題
 神戸市においても、県と同様に基本条例の制定が議論になっており、まず「協働とは何か」について各層の見解をとりまとめている段階である。区ごとに「市民参画とは何か」をテーマにしたワークショップが行われており、これらの成果も踏まえて14年度中には理念的な部分で一定のまとめを行う予定である。
 区といえば、神戸市のような政令指定都市では、協働における区の役割も大きなテーマとなっている。市ではより住民に近い位置にある区役所を、パートナーシップの最前線の窓口として考えており、パートナーシップ活動助成事業については、前述のように区役所との連携を図っていく意向であり、この方向性は今後も強まっていくだろう。
 
■市民がNPOを評価する
 個々のNPOをどう評価していくかという難しい課題もある。極端な例では暴力団系の組織がNPO法人を隠れ蓑にするというケースも出てきており、本来の趣旨で設立されたNPOを正しく評価するためにも両者の峻別は不可欠である。
 市は、地域住民がNPOを評価するという風土を定着させていく必要があると指摘している。
 
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神戸市市民事業研究会報告
「市民活動支援について」(平成10年3月)から
(1)NPO法の趣旨に沿い、市民活動団体の多様な価値観、自主・自律性を尊重する。
(2)市と市民活動団体との良好なパートナーシップづくりを目指す。
(3)補助金などの直接支援でなく、活動の場や情報の提供・交流促進、また中間支援団体を通じての支援など、間接支援を中心とする。
(4)NPO法人を目指す目指さないにこだわらず、幅広く支援していく。
 
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NPO法人「神戸アスリートタウンクラブ」
 神戸市の神戸アスリートタウン構想基本計画(平成11年3月)をムーブメントとし、市民レベルで有志が集まり、神戸アスリートタウンクラブを任意団体として設立。2年間の活動後、NPO法人化。平成13年9月11日現在で、正会員106名、賛助会員21社、スポーツボランティア数43名と広がりを見せ、市民スポーツ活動支援以外にも様々な調査研究、スポーツNPOサミットの開催などを行っている。
 
NPO法人「市民基金KOBE」の概要
 平成11年7月、市民の公益的活動の基盤づくりを市民・企業市民が自発的に寄付を出し合い、支えていく仕組みを備えるべく、「しみん基金・こうべ」を設立、後にNPO法人化。
 平成12年には被災者救護、被災地復興・災害救援活動を目的とする活動に対する助成(特定助成)と、基金が認めるもの(一般助成)の二種類の助成を行った。その他、市民による募金活動「こうべiウォーク」等を行っている。
 
NPO法人「市民活動センター神戸(KFC)」
 震災の直後、「震災・活動記録室」として発足し、平成10年に「震災しみん情報室」と改称、翌年さらに改称して現行の団体名になった。名前の通り民設・民営の市民活動支援センターとして自ら位置づけており、情報提供、人材育成、相談・支援・ネットワーキング、コーディネート、調査研究と多彩な活動を展開している。







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