日本財団 図書館


事例3 兵庫県
〜市町村との役割分担を目指して〜
1. これまでの取組み
■ボランタリー条例の制定
 平成10年兵庫県は「県民ボランタリー活動の促進等に関する条例」を制定し、「今後の本格的な成熟社会においては、県民一人一人から始まる自発的で自律的な活動が社会を支え発展させていく新たな原動力となる。」としてボランタリーセクターを社会の中に位置づけようとした。
 神戸・阪神地域では平成7年の阪神・淡路大震災をきっかけに、多様なボランティア活動が自然発生的に広がり、復興の過程でもNPO等の新たな市民活動団体が大きな役割を果たすようになったが、その一方、中山間地域等まちづくり活動は伝統的な地縁組織が大きな役割を果たしている。県では広くボランタリーセクターとして支援の対象としている。
 
■ひょうごボランタリープラザの設立
 平成14年6月、ボランタリー活動の全県的な支援拠点として「ひょうごボランタリープラザ」を設置した。プラザは交流サロン、セミナー室、パソコンコーナー、印刷コーナーなどからなる。利用は無料で、NPO法人の設立や運営に関する相談を受け付けている。土日・祝日も開館し、利用時間も平日・土曜日は夜9時までとし、利用する団体・個人の利便を考慮した運営を行っている。
 プラザの運営は、県社会福祉協議会が県から受託し、NPO代表・学識者等で構成する運営協議会を設置した。県社協に運営委託した理由は、市町社協とのネットワークを既に持っており、県内全域にボランティアセンターを置いて活動を展開していることから、県全域を対象として事業を行うのに十分な実績と基盤があると考えられたからである。
 県は、NPO等の提案に対し、公開審査で賞金を授与する「ボランティア・市民活動元気アップアワード」には特に力を入れている。企業・市民からの協賛金を原資としているため、景気低迷の影響で協賛金を集めるのに苦心しているが、あえて「企業や市民からの寄付」にこだわる。背景には、市民がNPOをつくり育てていくためには寄付の文化の醸成が不可欠であり、アワードをその「きっかけづくり」と捉えているからである。
 新規事業も企画されているが、プラザが開設されて間がなく、体制づくりや既存の事業の実施に追われている状態にあり、課題も山積している。たとえば、プラザでは個々の活動団体への支援ではなく、中間支援組織を通しての支援を基本としているが、具体的な中間支援組織との関係づくりはこれからである。農村部では地域ブロックごとの生活創造センターや文化会館が中間支援組織として想定されており、市町との連携が不可欠と考えているが、具体的な連携については今後の検討課題とされている。
 
ひょうごボランタリープラザの活動
(1)交流・ネットワーク
・ひょうごボランタリースクエア(県内のボランティア団体が一堂に集まるイベント、プラザが事務局を担う)
・ボランティア・市民活動元気アップアワード(企業、市民から協賛金を募って賞金とし、ボランティア団体に公開審査を通じて賞金を授与。平成13年度には26団体に10〜100万円が授与された)
・NPOと行政の協働会議(NPO代表者と行政の会合を毎月1回開催、プラザ運営等について意見交換)
 
(2)情報提供・相談
・月刊誌「コラボレーション」の発行
※現在、活動分野や地域を限定しないトータルなデータベースを目指して情報ネットワークシステムを構築中。
 
(3)人材育成
・NPO大学、ボランティアアドバイザー養成講座の開催
・市町ボランティアコーディネーター研修事業
 
(4)活動資金支援
・ひょうごボランタリー基金((財)ひょうご地域福祉財団にあった3つの基金を統合。児童施設入所児童支援等従来の基金事業をそのまま引き継いでいるが、協働事業支援のための助成をスタートしたほか新たなメニューを検討中。なお、阪神・淡路大震災復興基金による震災復興ボランティア活動助成も、平成16年度まで継続実施されている。)
 
(5)調査・研究
・神戸商科大学との共同研究による地域通貨実践支援事業
 
■NPOによる多彩な生活復興支援事業
 国の緊急地域雇用特別交付金を活用し、被災者の生活復興を目的とした事業をNPOが県の委託を受けて企画・実施するものである(平成12・13年度)。
 事業の募集は企画コンペ方式で行われ、12年度はNPO法人市民活動センター神戸が、13年度は市民活動センター神戸などによって構成される神戸・阪神NPOコンソーシアムが、それぞれ一括受託した。具体的な事業提案企画・実施については、個々の市民活動団体(13年度の場合27団体)が行っており、各団体の活動テーマは、障害者支援、高齢者支援、在日外国人支援、メンタルケア、DV防止、不登校児サポートなどであった。性格や機能の異なる団体が集まることで、多面的な生活復興支援が可能となると同時に、市民活動センター神戸が事務局機能を担い、全体の進行管理や県と各団体との調整役を引き受けることにより、県は個別の団体との連絡調整に係る事務が軽減される利点もあった。
 しかし、この事業においても、たとえば、一般管理費や企画料、技術料のような、領収書の発生しない、あるいはしにくい経費が認められないこと、民間企業に対して、委託単価が安いということ、また、申請をしてから採用の可否が決定するまでに数か月のタイムラグがあるケースが多く、助成事業を見越して要員を雇い入れることが難しい、といった不満が出されている。
 
2. 課題と今後の展望
■市町との連携などが課題
 県では、震災復興という大きなテーマが一段落しつつある今、改めて参画と協働のあり方について県としての考え方をまとめる「県民の参画と協働の推進に関する条例」(仮称)の制定を進めている。
 また、市町との連携も課題となっている。プラザが設置されたばかりであり、運営体制が完全には整っていないこと、また市町の側では合併論議の渦中にある自治体が多く中長期的な展望を立てにくい段階にあることなどから、具体的な取組みにはもう少し時間がかかると考えている。方向性として、プラザを運営する社協のネットワークを十分に活用しながら、各地域に支援拠点を整備するとともにその運営主体になり得る中間支援組織を育てていくことになると考えている。
 県とNPO側の意思疎通がまだ十分ではないという点も、こうした問題に起因していると考えられる。県では情報機能を特に重視しており、プラザが県全体の情報センターとしての機能を持つようになることを期待している。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION