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事例5 我孫子市(千葉県)
〜ボランティアセンターと市民活動センターの統合による協働の推進〜
1. これまでの取組み
■「市民公益活動・市民事業支援指針」を策定
 我孫子市は平成12年3月に「我孫子市市民公益活動・市民事業支援指針」(以下「指針」という)を策定し、「市民・企業・行政との協働のまちづくり」の方向を示している。
 我孫子市には水質汚濁の著しい手賀沼があり、市民たちの手による水質浄化への取組みがなされていたため、市民活動が活発なまちであった。現在では、そうした環境保全をはじめ、福祉・教育などさまざまな分野で活発な市民活動が展開されている。市は、介護保険の始まる1年前に先行して、市のホームヘルプサービスや痴呆性高齢者のデイサービスを市民事業者に委託、さらに集会施設を地域住民に管理委託したり、手づくり公園事業を地域住民に委託するなど市民活動の育成と支援を行っていた。
 そうした市民活動を踏まえ、行政が行う支援の方向性を具体的に明確にしたのが、指針である。
 
■自発的な市民の取組みを広く対象とする
 我孫子市では指針を策定するにあたり、支援の対象とする市民公益活動と市民事業の定義を明確にしている。
[市民公益活動とは]
 ボランティア活動や社会貢献活動のような市民活動のうち、(1)自主性・自立性に基づく活動、(2)市民の生活の向上や改善に結びつき社会に貢献する活動、(3)継続的な活動、(4)営利を目的としない活動、(5)市民に対し常に活動内容が開かれた活動、のいずれにも該当する活動を「市民公益活動」と定義し、支援の対象とする。
[市民事業とは]
 NPO活動や企業法人をめざす起業活動のうち、(1)市民が起こす、地域課題の解決や、地域のニーズに対応した、物・サービスを提供する事業、(2)事業により得られた利益が配分され労働の対価を得る事業、の2つに該当する事業を「市民事業」と定義し、支援の対象とした。
 
■「指針」に基づく推進施策
 推進施策としては、(1)場の提供、(2)情報および機会の提供、(3)活動助成の充実、(4)庁内体制の整備の4つがあげられた。
(1)場の提供
(1)総合的な市民公益活動・市民事業支援のための拠点機能の整備
 総合的な支援施設として「(仮称)我孫子市民活動支援センター」整備をする。
(2)「既存施設」の有効活用
 市内にある既存の市民会館や近隣センター等の活用を図る。
(2)情報および機会の提供
(1)情報の提供
 支援センターにさまざまな媒体を活用した情報センター機能を設け、効果的な情報を広く提供したり、利用団体の情報発信を支援する。
(2)機会の提供
 講演会やシンポジウムなどの開催により、市民公益活動への参加のきっかけづくりを進めたり、市民事業の立ち上げに関する研修会や講習会を開催する。
(3)活動助成制度の充実
 財政的支援について、補助金公募制の導入や新たな融資制度も含め、活動にあわせた効果的な支援のあり方を検討する。
(4)庁内体制等の整備
(1)市民活動支援課の設置
 市民公益活動の庁内調整や市民窓口を明確化する。
(2)市民公益活動・市民事業支援体制の整備
 支援を進めるため、庁内の合意形成・連絡調整、情報の集積、市民活動と庁内のコーディネート等を行うしくみづくり。協働に向けた職員研修の実施、研修プログラムの確立をする。
(3)(仮称)市民活動支援条例の制定
 協働によるまちづくりを進めるための実効性のある条例の制定を検討する。
(4)新たな推進主体の検討
 市民公益活動・市民事業をさらに拡充するため、市民・企業・行政の連携による新たな推進主体の設置を検討。
 
 こうした具体的な施策を盛り込んだ指針に基づき、平成12年4月に市では、市民活動支援課を設置し、さらに6月には指針を推進するために庁内に「我孫子市市民公益活動・市民事業支援指針推進委員会」を設置している。
 その年の8月には、指針に基づき市民活動団体の実態を把握するため、「市民公益活動・市民事業団体(グループ)実態調査」を実施している。その結果をみると、必要とするサービスとしては、市役所内の連絡調整がもっとも多く、次に印刷機等の備品設置への要望であった。この点について市では、行政のタテ割り組織の対応を反省させられたとのことであった。
 
■市補助金公募制度の設置
 我孫子市は、平成11年度をもって既存の補助金をすべて廃止し、12年度から新たな制度による補助金交付制度をスタートしている。
 この制度は、(1)これまでの既得権を除くこと、(2)公募制の導入、(3)3年間の交付期限という3つの特徴を持つ。補助金を「国・県の上位制度があるもの」「市の政策として交付するもの」「公募によるもの」の3区分に分類し、交付の是非は市民5名による補助金等検討委員会で審議して決定する。
 交付のサイクルは原則3年間(平成12〜14年度)とし、15年度分からは再度見直すこととしている。この見直しにあたり、公募補助金についての事務が市民活動支援課に移管され、財政担当と共同で事務を行う体制となっている。「公募した補助金の目的・必要性を十分に精査し、必要と認められるものには、補助金を交付する」という姿勢を改めて明確にした。
 我孫子市では、市民ニーズをとらえた事業を企画し、市民委員で構成される委員会で評価されれば、過去の実績に関係なく補助金を受けることができる。
 市補助金公募制度も、基本は市政への市民参加を目的としたものであるが、団体にとっても一種の財政支援につながるものである。
 
■市民活動センターの整備
 平成13年、指針で位置づけられた市民公益活動・市民事業を総合的に支援する拠点施設「市民活動センター」を整備するにあたり、センターのあるべき姿や運営体制を検討するセンター設立準備会が市民活動団体代表9名により発足した。後に公募の市民19名、市内事業者3名を加え、31人体制で検討が始まった。
 運営の検討にあたって、市は委託による運営の形態をまったく考えなかった。あくまでも「協働によるまちづくり」の姿勢を貫くため、市民と市が共に主体的に関わっていくことが基本にあった。
 活発な議論を経て、市民活動センターは平成13年6月に市民会館内にオープンしている。







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