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■代表者に訊く
西田 篤さん
●愛育園代表(精神科医)
●団体の特徴
 愛育園は広島市の外郭団体で、社会福祉法人である広島市社会福祉事業団が運営する児童療育指導センターの5部門(1.「診療所」小児科、精神神経科、整形外科、眼科、耳鼻咽喉科、歯科、2.「育成園」知的障害児通園施設、3.「二葉園」肢体不自由児通園施設、4.「山彦園」難聴幼児通園施設、5.「愛育園」)の一つで、軽度の情緒障害を有する児童を、短期間入所させ(寄宿制)、または保護者の元から通わせて(通所制)、その情緒障害を治療することを目的としています(情緒障害児短期治療施設)。当園は治療、教育、生活という3つの領域を重ね合わせて、多様なアプローチによるバランスのとれた援助を目指しています(総合環境療法)。
 
館内・・・清掃は、個人の居室以外は業者に委託しています。
 
食堂・・・料理は委託業者から配送されます。三々五々好きな場所に座って食べます。
 
洗面所。
 
カウンセリングルーム・・・カウンセリングのための静かな部屋が館内にはいくつか用意されています。
 
個室・・・一人用、二人用、三人用の部屋があり、ベッド・ふとん・机などは園の備品です。
 
風呂。
 
【治療面】週一回、1:1の人間関係を通じて、子どもが自分自身の問題を解決し、発達していくことを援助しようと、個人心理治療を行っている。また、治療的な協力体制を作り、子どもの気持ちや行動への理解を促すため、家族(多くは母親)とも週一回50分程度の面接を重ねている。
【教育面】寄宿児は入園前の原籍学校に通学するケース、隣接する校区の小・中学校へ通うケース、当園内の施設内分級で授業を受けるケース、高校、専門学校へ通うケースがある。通園児は園内の教育委員会が運営する「ふれあい教室」(適応指導教室)に通所し、現籍校への登校を併用する場合と、併用しない場合がある。いずれにしても教育形態は幅を持たせて選択できるようにしている。
【生活面】入園してくる子ども達の多くは、自分で自分の生活を前向きに作り出していくことが困難であるため、当園では様々な日課を用意するとともに、いくつかの約束事を決めている。約束事は、子どもにとっては自分で判断したりコントロールできない事柄への行動基準や歯止めとなる。結果として子ども間での必要以上のトラブルを未然に防ぎ、彼らの不安を少なくする。ただし、すべてをそれで押し切るのではなく、個々の子どもの状態や治療の進み具合に応じて話し合いの場を持ち、約束事を組み立て直す生活援助を大切にしている。
 当園の特徴として、なるべく週末帰宅をするように促しているということがあります。土曜日の午後に帰宅し、月曜日の朝に園に帰ってきます。週に一度家庭に帰ることにより、地元や家族との距離ができず、退園後の本来の生活にスムーズに戻って行けます。
 
くつろぎの部屋・・・大きなテレビがあり、夕食後は園生が集まってきてテレビやビデオを見てくつろぎます。
 
分級・・・隣接している市立の中学校の分級が園内にはあり、学校へ通えない子はここで勉強をします。
 
音楽室・・・ドラム、和太鼓、ピアノなど立派な楽器が豊富に揃えられています。
 
カウンセリング用の箱庭とパーツ・・・言葉で自分を表現できない子どもには有効なカウンセリング法だそうです。
 
図書室・・・外部の利用者も受け入れています。
 
 園では医師、心理療法士、看護師、保育士、児童指導員等のスタッフが常駐し、子ども達の悩みや不安を一緒に考え、彼らの力が十分に発揮できるようお手伝いします。また、園の持つ治療機能や蓄積されたノウハウを広く地域に還元すべく、各種の地域サービスを実施しています。市民公開講座を開催したり、家庭訪問や相談活動を行ったりして、多面的に子どもと家族を支援していきます。ボランティア向けには研修講座を開催したり活動の場を提供しています。学校へは、スクールサポー卜(校内研修会等への講師の派遣や教師からの相談窓口の開設)を行っています。
 以上、いろいろな角度からの子ども達のより良い生活を援助すべく努力しています。
●卒設の基準
 学齢期の児童、生徒を対象としています。
1. 良好な学校適応もしくは、社会適応状態にあること。
2. 1の基礎条件となる、他者との関わりが可能であること。
●年代別目標
 [10代]その子本来の望ましい生活が送れること。[20・30代]在籍無し
●施設における自立の定義
 長期的に見て、成人として良好な社会適応ができること。自己決定ができること。
●在籍生の就職状況とその支援体制
 20歳未満の在籍生のみですが、高校生の一部がアルバイトを行っています。アルバイト先は本人が探してきますが、その是非については担当職員とあらゆる角度から検討します。中学校卒業者の就労については、職業センターやハローワークを利用しており、その利用や職業決定に関しては担当職員が本人や保護者の相談相手となっています。
●在籍生のアルバイトの可否・その状況と支援体制
 寄宿生は、基本的にはアルバイトはしていませんが、週末帰省時に地元でアルバイトをしていた例があります。通所生はスケジュール調整しながら行っている者もいます。現在、対人関係の良好な高校生がアルバイトを希望しており、本人と担当職員や保護者との間で枠組み(例えば園に帰る時間など)を確認して、可能な方法を考えています。
●作業(有償/無償)の有無・その内容と状況
 生活指導上の農作業(収穫物は文化祭等で販売)等はありますが、本来、施設が行うべき業務を課すことはありません。
教科学習の必要性とサポート体制
寄宿生・・・原則として当施設のある校区の小・中学校に在籍します。その他小・中学校には園児のための分級が設置されており、そこに通うこともできます。
通園生・・・学籍は地元の学校になります。通園日には、午前中、適応指導教室(施設内)で学習をしています。
●在籍生の心理的サポート体制
 当施設は心理的に行き詰まっていたり、解決の方法が見出せないでいる子どもの心理治療施設であり、大きく分けて2つのサポートを行っています。
1. 心理療法士による個別の心理治療(カウンセリングなど)。
2. 生活指導スタッフによる日常生活場面における現実的な問題の解決への援助。
●外部医療機関との連携
 当施設は診療所(児童精神科、小児科、整形外科、耳鼻科等)を併設しており、医療的ケアを行っています。その他、外部医療機関に対しても、当センター常勤医のネットワークがあります。
●在籍生の保護者へのサポート体制
 子どもの心理的問題を解決するためには保護者の協力は欠かせません。そのために、心理療法士による保護者面接を行っています。面接の中では、どのように子どもに接すればいいのか、子どもの行動をどのように考えたらいいのかなどを一緒に考えていきます。また、保護者会や親の会を支援し、保護者へのグループサポートも行っています。







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