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■代表者に訊く
滝川 修三さん
●NPO法人 青少年自立援助センター センター長
●団体の特徴
 ここの施設は基本的に社会参加が苦手な子供たちが社会参加できるようにすることを願って設立しました。ですから対象は不登校やひきこもりの青少年だけではなく、知的障害や精神障害を持った、あるいはその傾向のある子供たちも受け入れています。ただ、今ひきこもりの子供が増えているのは事実です。
 ひきこもりの場合、先方から来ることはまずないので、こちらから出向く家庭訪問の形式を取っています。通常月一回訪問します。次の訪問までの間に本人もあれこれ考える時間を取ることに意味があると思います。(ドア越しでの)本人への語り掛けから始まるのですが、すぐにすんなりと話し合えるようになるとは限りません。その点で、スタッフも精神的にきつい部分があるので、必ず二人でチームを組んで行きます。
 
自立が間近に迫った寮生の宿泊施設「第二遊游館」。ここに入ったということはそれだけで社会人に近づいたことを意味し、寮生としても自信と誇りを持つようになるそうだ。水道・光熱費は自分の稼ぎで払わなければならない。個室は全部で18室。
 
開設間もないが好評なのが一般の方へのパソコン教室。寮生で得意な子はアシスタントで関わる。
 
民間の漬物工場で漬物の第一段階加工を任される第二工場。朝9時から午後5、6時まで現場の社員として働く。
 
 入寮が決まるとその子に合わせて個別の日課を考えます。一人ひとりが異なった日課を組めるところがYSCの大きな特徴の一つです。また、男子だけではなく女子も受け入れています。
 寮生活ではまず「元気になろう」と語り掛けます。それは子供が本来持っている元気を取り戻すためです。そのために、その子の生活環境や対応するスタッフ、作業プログラムなどを考えます。そして、日々の生活の目的を見つけられるようにアドバイスしたり、行事等に誘ったりします。しかし「○○をしなさい」とスタッフの方から押し付けることはしません。本人がしたいと言い出すまで待ちます。
 また、「話すだけでは元気にならないよ」とも言います。「頭で考える前にやってみようよ」と。そして最終的には自分の体を使って自分で稼ぐ。そうして誰にも頼らないでやっていけるようになる。そのようにして自立支援を行っています。
 寮生はたいてい身の回りのことは自分でやれるので、あまり生活管理は問題にしていません。それよりも共同生活で社会性を身に付けることを重視しています。それをここでは「人馴れ」と呼んでいます。「人間ってそんなに怖いもんじゃないよ」と実感して欲しいと思っています。
 そして、ここではリサイクル作業や漬物工場での実習など幾つかの具体的な社会経験を実習生という立場で模擬的に経験できるようになっています。これも自立へ向けての有効な手段となっていると思います。
●卒設の基準
 自分で自分の飯が食えること、つまり経済的に自立することです。もう少し具体的に言えば、一人暮らしをして敷金などは自分でお金を貯め、長期間仕事が続けられるだけの精神力と体力、社会性を身に付けること。そのような実力が付いた子はたいてい自分から「ここを出ます」と言ってきます。
 
寮(武蔵野台研修施設2階)には、ホテルを思わせるような寮生の個室が全部で18部屋用意されている。
 
推定200坪強の農園は無農薬でやっている。とれた野菜はほとんど自家用となる。
 
ゆったりとした食堂兼談話室。ここで生活をする寮生は第一遊游館から配達される食事を食べることになっている。
 
多摩川の河川敷でサッカーを楽しむ寮生たち。この日は15名が夢中になってボールを追いかけていた。
 
●年代別目標
 [10・20・30代]卒設の基準を満たすか、長期的に学校生活が送れること。
●施設における自立の定義
 精神的自立というのは分かったようで分かりにくいものです。YSCでは具体的に先ほど述べたように経済的な自立を目指しています。
●在籍生の就職状況とその支援体制
 寮生が個人的に就職活動を行っています。YSCとしてはコミュニティーアンクルプロジェクト(YSCのサイトを参照して下さい)という新しいシステムを作り、寮生の就職活動支援体制の確立を急いでいます。
●在籍生のアルバイトの可否・その状況と支援体制
 自分で探して決めることができるのならば可能です。スタッフの方から止めることはありません。
●作業(有償/無償)の有無・その内容と状況
 農業実習と第一工場(リサイクル作業)が基礎ですが、それらは無償です。第二工場(漬物工場)、ハウスクリーニング、老人ホームのヘルパーの仕事は奨励金がでます。
●教科学習の必要性とサポート体制
 希望者を対象に通信制高校の学習サポートを中心に行っています。本格的に大学や専門学校へ行きたい子には、予備校を勧めています。
●在籍生の心理的サポート体制
 スタッフが日々の生活や作業、その他の活動の中で個人個人の様子に気を配り、必要が感じられたときに「これではまずいのでは」と働きかけをします。具体的に「○○をしよう」というアドバイスが効果的なときが多いようです。相談も受けますが圧倒的に女子が多いです。話し合いが明日につながるように気を遣っています。
●外部医療機関との連携
 精神内科などに通っている子もいます。医者が往診に来ることもあります。近隣には協力的な医者もいてしっかりと連携と取っています。
●在籍生の保護者へのサポート体制
 入寮して最初の一週間は毎日保護者(親)に電話を入れます。それ以降は必要に応じて連絡を取ります。また月1回は書面で生活報告を出しています。2ヶ月に1回保護者会(父母会)を開いています。







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