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関東
NPO法人 青少年自立援助センター
セイショウネンジリツエンジョセンター
 
代表者名●工藤 定次[クドウ サダツグ] センター長●滝川 修三[タキガワ シュウゾウ]
所在地●〒197−0012 東京都福生市加美平1−12−5
電話番号●042−553−2575 FAX番号●042−551−6759
URL●http://home.interlink.or.jp/~ysc E−mail●ysc@interlink.or.jp
 
25年以上の経験をふまえて青少年とがっぷり四つに組む
●報告―小川誠[寄宿生活塾 五色塾代表]
 
 YSCの前身「タメ塾」は既に25年以上も前から、不登校やひきこもりなど社会的自立ができない子供たちを支援する共同生活塾として独自の活動を続けてきた。その大きな特徴の一つが家庭訪問だ。単なる家庭訪問ではない。まず部屋に閉じこもって会ってもらえない子供に会いに行く。ドア越しの話し掛けから始まり、根気よく訪問を続ける。タイミングが来たと思ったらちょっと心の後押しをして、さっと塾まで連れてくる。この辺の緩急、硬軟織り交ぜた子供の扱い方のノウハウについては今回の報告書でほとんど触れていないが、YSCの専売特許と言ってもいいのではないだろうか。
 
築30年の寮「第一遊游館」はYSCの前身タメ塾の歴史を感じさせる。一階には広い廊下の両側に寮生の個室・食堂・スタッフ部屋・相談室・トイレや風呂などがある。13室ある寮生の各個室は7畳半。
 
カーペット敷の大きな食堂は寮生とスタッフが気軽に触れ合える「人馴れ」の場として重要な役割を果たす。
 
食事はセルフサービスで。食後は各自が食器を洗い指定の場所へ。専属スタッフが約60名分の食事を賄う。
 
 寮に連れてきたひきこもりの子供に個室を与えたらまた出てこなくなってしまうのではないかと素朴な疑問があった。しかしそれは取り越し苦労だということが分かった。そうならないようにいくつかの仕掛けができている。確かに一人ひとり何をするかは本人に任されている。親がやるような介入や脅しは一切しない。その意味でひきこもるのも自由だ。しかし、例えば食事。自己主張のためストライキを起こして食べない子もいる。そんなときは放っておく。でも人間腹が減ったらやはり何か食べたくなる、飲みたくなる。結局、食堂で食事をしながらスタッフと会話を交わすことになる。トイレが一箇所しかないのも同じ仕掛けだ。でもそれ以上に優れた仕掛けは、様々なタイプのスタッフが自然体で寮生の側にいることだ。たいてい一人ぐらいは気の合いそうなスタッフ、話しかけてもよさそうなスタッフが見つかる。お互いになんとなく感じ合える相手が自然に接点を増やしていく。そこが「人馴れ」の突破口になる。その辺は絶妙だと感じた。ただしどんな子供でも必ず相性のいい相手がいるとは限らない。それで去っていく子も中にはいるようだが、致し方ないことではないだろうか。人間相手に機械のように100%を要求することは土台無理な話なのだから。
 それからもう一つ。YSCの寮生は10代後半から30代前半だ。YSCは傷ついた彼らの心を癒すことだけを目的とするのではなく、むしろそれ以上に重要な社会参加の可能性を真剣に追求しているのは特筆すべきだ。そこから「なんとか自分で自分の飯ぐらいは食えるようにする」という具体的な経済的自立を最終目標とする考え方が出てくる。そこへ向けて様々な活動や実習の場を設け、社会との接点を様々な形で作り上げてきた。これは素晴らしい。これには頭が下がる。しかし、コストもかかる。何も知らない素人の第一印象では入寮費が高いなと感じたが、活動の規模や実態を見て「これだけの内容と規模を維持、運営するには当然相当の経費がかかるだろうな。これでは安易に高いとは言えないな」という印象を持った。もう少し言えば、このような青少年の社会復帰事業とも言うべき社会福祉的意味合いの濃い事業は公的な性格が濃い。しかし、YSCのように一人ひとりに照準を定めて、きめ細かに小回りを利かせて24時間体制で青少年とがっぷり四つに取り組むようなことは到底公的機関では不可能としか思えない。ならばせめて行政側はYSCの公的役割を認識して活動場所を提供するなどの設備・施設上の援助や資金的な援助を積極的にするべきではないだろうか。そうすればもっと多くの子供たちが救われるはずだ。[調査日―2002.02]
 
新しく設置された会議室はゆったりスペース。スタッフのミーティングや父母会がここで開かれている。
 
第一工場では、ペットポトル、ダンボール、古着、新聞や古雑誌などのリサイクル可能な資源回収・整理を行う。
 
施設の一角を生かし新しくリサイクルショップの経営を始めた。店長はその道のプロ。
 
寮生が自立するための様々な用途に使われている武蔵野台研修施設。
 
整頓された古着棚。バザーなどでリサイクル可能な古着を出展する。女子寮生が楽しそうに裁縫・整理していた。
 
入学試験が終わったばかりで学習室はほとんど生徒がいなかった。壁には各人の学習スケジュール表。







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