日本財団 図書館


◆スタッフに訊く・・・1
原井 龍太郎さん
●28歳 男性 正規スタッフ 勤続年数1年半
●施設と関わるようになった理由
 ハローワークを見て興味を持ちました。以前から人の相談に乗ったり、人と話したりするのが好きで、ひきこもりや不登校は他の子と比べて運が無かったからではないかと考えていました。そういう子供に自立の手助けができればと思ってスタッフに応募しました。
●施設について
 以前にも個人的には似たようなことをやっていたので、特別にどうという意識はありません。
●在籍生の変化に気づくとき
 みんなそれぞれ少しずつ変わっていくと思います。ある日突然ころっと変わることはあまりないと思います。長い時間が経ち、振り返って見るとやっぱり変わったなあって分かることが多いです。
●在籍生との関わりで注意している点
 みんな一人ひとり違いますが、心の拠り所と言いますか、どんなことがあってもここに来れば必ず受け入れてもらえると感じてもらえるように心がけています。
●ここで働いて喜びを感じるとき
 ここを出て行くときは「とりあえず」という感じです。それよりも、例えば入寮時には精神的に弱かった子が社会に出てアルバイトができるようになったと聞いたときなんかは嬉しくなります。
●辛いと感じるとき
 どんな仕事にもそういうことは付き物だと思います。ただ、寮生が将来のことで悩んでいて、この子だったらここまで行けるとわかるのにいろいろな条件からその一歩、二歩手前までしか後押ししてあげられなくて、最後の目的地まで辿り着けなかったときなんかは非常に残念ですね。
●施設での自分のポジション(役割)
 うーん、何ていったらいいんでしょうか。一言で言うのはとても難しいですね。各作業場間の情報をまとめて、全体の調整なんかもやってはいるんですが、寮生の一人ひとりにも気を配っているし。ここの生活全体がうまく回るようにするのも仕事だし・・・。
●施設の今後について
 言いたいことはいろいろとありますが、一つはこのような施設のことを一般社会に認知して欲しいと思っています。それからこの施設のように、「生きるのが苦手」な子供たちの受け皿がもっとたくさん増えて欲しいですね。そして、こういう問題に行政がもっと首を突っ込んで欲しいと思います。
●代表・その他のスタッフについて
 ここにはいろんなタイプのスタッフがいるのがとてもいいと思います。そうでないと、スタッフがかかわる事のできる寮生も偏ってしまうと思います。誰でも相性とか好き嫌いとかありますから。いろんなタイプのスタッフがいれば寮生も必ず誰か話しやすい人がいると思うんですよね。
 
◆スタッフに訊く・・・2
三好さん
●女性 正規スタッフ
●施設と関わるようになった理由
 小児科医であった知人の紹介でここのことを知りました。
●施設について
 こういう施設がなくて済むのなら無い方がいいんでしょうが、現実にはひきこもりや不登校など自立できない子供が増えている訳ですからとても必要な場所だと思います。これからも増えていくだろうと思います。
●在籍生の変化に気づくとき
 いろんなタィプの子がいますからそのタイプによってピンと来たり来なかったりはするんですが、寮生が自分を受け入れてくれるようになったとき「この子は変わったな」って感じます。そういうときは心で何か決心できた時だったりして、それは行動にも出ます。言葉も感情のこもった言葉を話すようにもなります。
●在籍生との関わりで注意している点
 相手が入ってくるまで待つことですね。相手のペースを乱してまで、自分が相手の中に踏み込まないように注意しています。もちろん疎遠な子にも声をかけたり挨拶をしたりはするんですが、子供の心が開くまで待つようにしています。私には私の人付き合い上快適な距離感というのがあり、寮生には寮生の距離感があるわけで、どちらもそれを尊重できるようにならなければ良好な人間関係は築けません。特に女の子は距離の取り方が苦手で、入って来過ぎることがあります。そういうときは逆に少し距離を取るようにする事もあります。
●ここで働いて喜びを感じるとき
 寮生と友達になれたときですね。それは卒設した後の方が多いです。というのは、寮にいる限りはなんだかんだ言ってスタッフと寮生という立場上の違いがあるからです。それが社会に出て社会経験をする中で、私という存在を前とは違った存在として捉えるようになるんでしょうね。そして社会の中で友達の必要性を前よりずっと切実に感じるようになるんだと思うんです。それで私のことを友達として捉え直すんでしょうか。そういう時は本当に嬉しいですね。
●辛いと感じるとき
 いろいろなスタッフがいるので普通は寮生が話し易いタイプがいるんですが、そういうタイプがいなくて、寮生がどのスタッフにも“ひっかかれない”ときは辛いですね。
●施設での自分のポジション(役割)
 小間使いです(笑)。今は組織がだんだん大きくなってきていて若いスタッフも増えてきました。そういう人たちも精一杯やっていますが、どうしても隙間が出てしまいます。そこでそういう隙間を埋めるのことが私の仕事だと思っています。
●施設の今後について
 組織が大きくなるとどうしてもシステムが必要になってきます。そうすると、組織の持つ問題も出てきます。でも一方でスタッフが多いということは寮生にとってとても良いことだと思います。ですからそのメリットが活かせるような組織作りができたらいいなと思っています。
●代表・その他のスタッフについて
 理事長や副理事長は前の世代の人間でとてもパワーがあります。私達のようなその下の世代は、やっぱり休みは週二日欲しいとか、仕事は何時から何時までだとか、前の世代ほどのパワーがありません。そうすると、今後はどんな組織になっていくのだろうか、公務員化していくのだろうかなんて考えたりもします。私たちの世代の良さを見つめてそれを引き出していかなければいけないなと思います。
●その他
 今の活動ができるのは地域との繋がりがあるからです。現代人は人間関係が希薄になっていて、地域の繋がりも乏しいです。それがひきこもりや不登校などの原因の一つです。ですから、私はそれぞれの地域で人が繋がっているようなシステムができるといいなと思います。
 
◆スタッフに訊く・・・3
工藤 祐介さん
●27歳 男性 正規スタッフ 勤続年数1年半
●施設と関わるようになった理由
 以前はコンピューター関係の仕事をしていましたが嫌気がさしてしまい、人間を相手にする仕事がしたいと思っていたときにここの存在をハローワークで見つけてやってきました。
●施設について
 最初はギャップが大きかったです。カルチャーショックでした。寮生への接し方一つとっても、戸惑ってしまい引いていました。性格に合わないのかなと悩んだりもしましたが、今では自然体で行っています。友達感覚で寮生の遊び相手になっています。
●在籍生の変化に気づくとき
 かなり頻繁に見かけます。例えば、入寮当初は「僕は何もできない」と毎晩弱音を吐いてばかりいた子が、今では外でアルバイトをやっていたり。みんなそれぞれに成長しているなと感じます。
●在籍生との関わりで注意している点
 人間ですから合う合わないっていうのはあるんですけど、自分の心構えとしては誰であろうと平等に接し、特別扱いはしないようにしています。今では彼らが特別な存在だとは思いません。ちょっと道を間違えれば、誰だって陥ってしまう危険があるようなことだと思います。
●ここで働いて喜びを感じるとき
 訳が分からずここへやって来た子が自分のことを話すようになったときに働く喜びを感じます。遊びのときに笑顔を見せてくれたり、彼は成長しているなって感じたときなどが一番嬉しいですね。自分も少しは人の役に立っているんだなって感じられるからです。
●辛いと感じるとき
 宿直がきついですね(笑)。1週間に5日出勤してそのうち2日は宿直をやっています。その夜、何も起こらなければぐっすり寝れて文句はないんですけれど、なんだかんだと起こされるんですよね。それで次の日は結構きついですね。それからもう少し給料が良ければなあって思います(笑)。
●施設での自分のポジション(役割)
 第一工場(リサイクル作業場)の責任者です。
●施設の今後について
 今、YSCはめまぐるしく変化している最中だと思います。そしてすべては順調に行っていると思います。今のところ第一工場での作業には奨励金がつかないんですが、少しでもついたらなあと思います。
●代表・その他のスタッフについて
 僕は遊んでいますが、他のスタッフはみんなまじめで、仕事熱心で頼りになります。みんな欠けてほしくないと思います。スタッフ同士の関係も良いと思います。
●その他
 ここに来る子を特別視しないで欲しいと思います。世間の認識はまだ浅くて寮生のことを病気だとか知恵遅れだと見なしがちですが、正しく見て欲しいと思います。







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