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第2回調査研究会
日時平成14年12月12日(水)11時〜
出席者委員8人
内容議事録より抜粋
 
1.報告事項
(1)第一回打ち合わせの確認について
前回の検討内容は、展帆までの問題点を出し合い、今回まで検討することにした。
展帆については耐久度、展帆時期、経費等を各論ごとに検討した。
展帆は風速10メートル以下なら「可」という総意である。
特異な地形ということもあり、風速・風向のデータを別添のとおりまとめた。
帆の製作・発注にあたって、生地の厚さによって重量が違ってくるので、受注予定者に厚さと経費の対比について確認した。薄くすると多少軽くはなるが経費が嵩むという結果が得られた。
 
(2)2風向・風速調等について
別添のとおり、3か年の5月から10月までの風向・風速等のデータで、展帆時期を5〜10月になると予測して作成した。このデータは船に取り付けている計測器で当館の船大工が記録したもの。
この資料も貴重なものだが、適日を予測するとなると、一般的に出されている湾一体の気象データと、このデータを見比べると結果が出てくるのではないか。それと3年分のデータがまとめられているが、気象統計上5年分あると信頼できるデータになる。できれば5年分がほしい。
風の動きの分かる計測器があるといい。予測しやすい。これまで私は風の変化を見つめてきた。烏の旅立ちとかを風で予測してきた。
データを見る限り10メートル吹く日はほとんどないようだ。大きな心配はない。風速5〜6メートル以上を主に考えて、それ以下は考えなくてもいいのではないか。
10月下旬から西風が勝ってくる。10月の早い時期がいいだろう。
データ的に見ると風速はあまり問題なし。旗(逆さ卍)の向きと風力計のあるところに別の旗を上げて、どのくらい違いがでるのか調べてほしい。(何回か計測してほしい)
面倒でも、(1)広域の気象データ(2)船内各所の温度・湿度(3)風向の変化を見るために、マストの上、下での風向調査−を次回までに。
10月を見てほしい。平成12・13年は北・東風の日が多い。今年の7〜10月のデータには台風の影響が出ていて特異なケースだ。風向は北から東が「適」だ。となれば、10月上旬という選択肢も考えられる。
物理的な面も含めて絞り込むと、多少陸風になっても構わない。曜日やイベントの日に合わせることも検討の余地あり。また、風向の変化のデータを参考にして、前回展帆に関わった人にどの角度までだったらヤードを直せるのか聞いてみる。ロープの補強(15年度にメインマスト関係のロープ取替えを予定している)も必要だ。
 
(3)展帆にかかる人員の確保について
今井委員の意見を踏まえ、過去のデータを参考にしながら検討した。原則地元の3業者で指名競争入札を行い、委託先を決めたいと考えている。人員の確保は業務委託したところに一任したい。
毎年1回展帆するというのはどうか。
可能であればだが、難しいことだ。
最低20人、できれば30人ほしい。前回展帆時は24、5人だった。日本丸の指導者2人に専門業者3人、ほかに帆の製作に携わった人
 
2.協議事項
(1)展帆にかかる諸課題について
(1)帆の製作発注について
帆の製作は桑田テント(福井県小浜市/現在の帆を製作した業者)に製作業務を委託する予定。
今年度はバウスプリットセイル、フォアセイル、メインセイルを。15年度はミズンセイルにダミーセイル5枚を製作することとしている。助成金がつく、つかないの問題はあるものの、今のところこのように計画している。
また前回の課題の一つ、生地の厚さと重量、経費について確認したことを報告する。
4号(現在のもの)0.51ミリ298g/m2
5号0.40ミリ245g/m2
6号約0.40ミリ230g/m2
となっている。経費については、4号より5・6号は200〜300円高く、トータルで40万円ほど高くつく。
 
(2)展帆の時期について
展帆の時期については、気象データを補足して決定するが、今のところ10月が「適」ということでいいか。(同意)
 
(3)ロープ取替え工事との整合性(耐久度含む)について
フォアマストのロープ(シュラウド含む)、動索は新しくなった。メインマストの静索は15年度に取替える計画である。またシュラウド40ミリの強度については、9年を経過し紫外線劣化が出ているので、業者にロープを送って強度試験をしてもらうことにしている。(1月10日ぐらいに結果が出る)展帆・縮帆にかかるロープは展帆に合わせて新しくする。
 
(4)展帆の手法について
人員がはっきりしないと議論できない。
 
(5)経費について
展帆の体制、人員の配置が確定しないと議論できない。
ロープの強度はミズンマストでチェックすればいい。ところで見積りの中に展帆にかかるロープや滑車は入っているのかどうか。
展帆・装帆を想定して造ればよかったが、県の方針はあくまで「史実に忠実に」だ。利活用するとなると、現実的には船体関係を多少変形してもいいのではないかと思っている。
史実に忠実にするとなると近代設備は付けられない。どの程度加味できるか許容範囲が難しい。「史実に忠実に」と言っているから、手を加えるなら理事会に諮らないといけない。帆を上げるとなると安全性が第一条件。安全性をクリアするための加味がどの程度になるかが問題だ。
史実に忠実にするとなると近代設備は付けられない。どの程度加味できるか許容範囲が難しい。「史実に忠実に」と言っているから、手を加えるなら理事会に諮らないといけない。帆を上げるとなると安全性が第一条件。安全性をクリアするための加味がどの程度になるかが問題だ。
集中的に重くなるため、巻き上げの時の負担を軽くする方法はないか。ある場合には現代的な形が見えないようにできるか。大きな改善も求められるが、それに伴って小さな改善がでてくる。帆の巻き上げは機械と併用して人員も確保しなければならない。発注した内容と史実とに違いがそれほどなければいいが、かけ離れるのであれば考えなければならない。
帆の製作にかかる仕様書は委員長、西條委員、今井委員と協議して作成し、発注することとしたい。生地は4号として発注したい。(同意)
 
(2)木の文化発信に向けて
「木の文化」の原点は、村上棟梁と田中文男氏(宮大工)との対談にある。建築家や普通の大工は木を曲線的には使わない。船大工だけだ。この曲線文化を維持・継承していくことはできないだろうか。これまでのメンテナンスの蓄積を発信していきたい。
仙台藩の木造船の歴史・技術が現代に語りかけるもの。(1)政宗が米沢から仙台に入った時期に名護屋まで船(石巻の)で行ったこと(2)サン・ファン・バウティスタの建造(3)御座舟を造り始めて塩竈と松島を往復した(4)ベザイ船の発展(5)幕末の開成丸(6)洋式の造船−といった流れの中で、どのように捉え、木の文化を発信していくかが問われる。
その地域でどのような木が取れるか。そしてどのような道具で細工するか。漆器や木工品などに違いが出てくる。名前の付け方もそれぞれに違って面白い。サン・ファン館とすれば船、ここから拡げていけばいい。枝、木の実、樹液まで含めて考えてもいい。合わせ鋸、引き鋸など、切り身を入れて合わせる。赤穂の塩を運ぶ船は水漏れもしないで運んだという。合わせ鋸の効果だ。
すり合わせの技術、キゴロシ・合わせ目をわざと潰して水を吸わせて膨張させる技術。水漏れなし。和船の造り方を見てとても驚いた。
木のいろいろな応用を効かせてサン・ファン・バウティスタを造り得た。木の特性・不思議さ・魅力という原点からスタートさせるといいものになる。日本の大工はノコギリの使い方が器用だ。

劣化している木を展示するなど、『木は生きている』ということを示すのも大事だ。


つくるものがあるなしで、宮大工は後継者あり船大工は後継者なしだ。受け継がれるシステムづくりが重要だ。体験学習(技術伝承・教育等)のプログラム、「ハダ打ち」体験も反応が良かった。当該施設を木の伝承館的なものにしていければいい。滑車づくり工房というプログラムはどうか。
最近、杉板を曲げる蒸し釜を再現した。一般の人に興味を持たせることは容易でない。サン・ファン・バウティスタは壮大な実験材料だ。何とかして消えようとしている船大工の技術を伝承していきたいと思う。県で文化条例を作るという話を聞いたがどうか。
これまで宮城県は文化をあまり大事にして来なかった。まず文化の情報収集を行い、それから発信する。サン・ファン館を「木の文化」の発信基地としたい。
日本人はいいものを潰していて、それに気付くのは外国人。この木の文化をインターネット等により、日本国内への発信にとどまらず、外国人にも発信してはどうか。
さて、次回が最終の研究会となるのでまとめなければならない。事務局で準備しておくものと各委員にお願いするものを再確認するように。
課題3点((1)広域の気象データ(2)船内各所の温度・湿度(3)風向の変化を見るために、マストの上、下での風向調査)を整備することと、帆の製作業務の委託を西條委員に相談しつつ契約・発注すること。さらには木の文化発信に向けての提言をいただきたい。







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