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III
調査研究会編
海につどい船に学び、木の文化を知る 2002
 
第1回 調査研究会
日時 平成14年11月20日(水)11時〜
出席者 委員7人
内容 議事録より抜粋
 
1. 委嘱状の交付
 
2. 報告事項
(1)帆の製作と展帆計画について
 昨年10月、海事思想の普及に関する事業の経費助成を日本財団に申請したところ、その計画が採択された。平成14・15年度の2か年で帆を製作し、進水10周年にあたる15年度に展帆する計画である。展帆は「縮帆して係留展示」という大前提があるため、このコンセプトや技術的な見地などの検討を行う「調査研究会」を14年度に立ち上げることとした。本日はその一回目である。また体験学習は体系化していなかったので、この事業に組み入れ、効果的な展開を図った。さらにはサン・ファン・バウティスタを核として、「木の文化」を発信することも意図している。今年度の総事業費630万円、このうち500万(およそ8割)が日本財団からの助成となる。
 
(2)体験学習の実施結果について
 6月23日に「ハダ打ち」、7月20日に「木工教室」「ボトルシップ工作講習会」、8月11日に「帆づくり・マストのぼり・甲板そうじ」、8月20日に「ハダ打ち(2)」と、4回に分けて実施した。そして、今後につながるように効果測定をそれぞれの担当者と検討・協議した。
 
 事業が理解されたか、親しみを持たれるものであったかとか。「木工教室」・「ボトルシップ工作講習会」は人気があるので別々に実施してはどうか。「帆づくり」をやめて、蒸し釜で木を曲げて小さな舟を造る「木の不思議発見」を新たに加えたりと。やはり、子どもたちをどれだけ巻き込んでいけるか。分かりやすく参加しやすいものにできるかが課題として出た。
 
 15年度は、帆の製作、展帆を中心に、体験学習のカリキュラム充実のほか、石巻工業港に日本丸の寄港を要請している。さらに、児童生徒を対象とした絵画コンクールの開催を予定している。
 
3. 協議事項
(1)展帆にかかる諸課題について
(1)法的な面からの可否
 ・ 史実に忠実にが大前提。強度について建造当時から船舶安全法上の条件を十分満足させている。

 船舶安全法では風速が40メートル。係留している状態でマストにかかる力は建築基準法を適用させることとしている。強度上の安全性(安全率を1.5倍して)を考慮して風速10メートルを目安としている。

 日本丸は昭和26年までヤードを撤去して復員船として使用していた。そのヤードを復旧する際に、ヤードと一緒にシーマンが落ちるという事故が起きた。展帆を10年もやっていないと感が鈍る。サン・ファン・バウティスタも年代が古いので、耐力の面でいかに安全に実施するかが課題だろう。日本丸の例もあるので、理屈だけではなく、装帆している人の指導を受けなければならない。装帆者がアテンドする。さらに展帆ボランティアがしっかりしていることが条件だ。展帆作業はコアになる人と展帆ボランティアをどう育てていくか、これがキーになる。具体的な装帆を念頭において検討していただきたい。

 今回は問題点等を出し合い、次回まで検討することとしたい。

 ・

新しいことをするとなった場合に、過去の規則の蓄積はあるが、それだけでは足りないものもある。まず安全が第一。安全規制の枠内なのか枠外なのか。

 どういう前提で、展帆が良しとなったのか説明できるようにしたい。防災マニュアルを整理して、安全規制面で改善の必要性があれば責任を持って対応したい。
 
(2)耐久度について
 ・ 各表(平成4年に作成)に基づき、通常のメンテナンスをしっかりしていけば問題はないと考える。船底はしっかりしている。この理由は、
  a 酸素の供給が少ないので腐食しない。
  b 船食い虫がつかない。
  c 水に浸かっている。

船底検査を毎年すべきか、隔年でいいのか。これは県の主務課と相談しながら考えたい。今回は提案に止めておきたい。

 ・

船底検査を毎年実施しているところは少ないようだ。

 ・

ひどいところだと15年に1回、この船は6年になるが、これまでの経過を見てこれからのことを検討すればよい。

 ・

ロープ関係は毎年点検、順次メンテナンスとなっているが、どうか。

 ・

フォアマスト分は現在取り替えている。メインマスト分については15年度に取り替える計画である。
 
(3)展帆の手法について
 ・ 風速10メートル以下でというマニュアルで、指導に航海訓練所から来てもらい展帆した。ロックセイラーに関する人間、プロと呼べる顔ぶれが20人ぐらいで。仮係留だったので、渡り桟橋が外れないように、杭を打ったピットの安全を考えた。20人が帆を担当し、その中からヤードに上がったのが10人、桟橋等の安全を守るスタッフが10人。

 今の帆はとても重い。できることなら帆を軽くすることを望む。また、できればヤードを短くしたほうがいい。帆も作り替えるなら短くしたほうがいい。負荷を軽くする方法も検討されたい。

 ボランティアを使って展帆するということになれば、安全である下の作業に限定される。人手をどうやって集めるかが課題の一つとなろう。展帆することになれば総点検が必要不可欠だ。

 ・

8月に登檣(とうしょう)したがロープは大分劣化している状況だった。化繊のロープは紫外線劣化がひどく、粉を噴く。また見た目にも悪い。ターリングしたほうがいい。シュラウド・デッドアイもちゃんとしておいたほうがいい。
 ・ 心配なのは風だ。帆を張ったとき、片側に寄せられたり傾いたりする。サン・ファン・バウティスタはドックの状況から心配なし。
 ・ 実際の展帆を想定して−ヤードを動かさない、下ろさないとすれば、また上がらなければならない。専門家(装帆経験者)は最低5人必要。それに熟練ボランティア4人(一般の展帆ボランティア30人)に、補助者10人。9人いれば帆一枚が上げられる。

  ・

バックデータとして調査しておくこと。
 
(4)時期について
  ・ 催事とぶつけるとすれば、サン・ファン祭り(5月)、海の日(7月)、出帆記念日(10月)となるが。
  ・ 新年度製作分の帆について、物理的に間に合うかという問題がある。後半にずれ込む可能性あり。10月あたりはどうか。
 
(5)経費について
 ・ 展帆費用について、2社から見積りを取っている。それに、以前に展帆経験のある業者の当時の見積りもある。これを参考として予算要求しているところだ。
 ・ クレーンは両サイドに必要か。
 ・ クレーンは伸びるので片側だけで十分。見積りの段階で帆の重さ(厚さ)を決めていないのではないか。金額は重さで変わってくるので、重さを先に決める必要がある。
 ・ 帆の製作にかかる契約のための仕様書を作っているところだ。重さ(帆の厚さ)はどれぐらいになるのか、どれだけ軽くできるのかなどについて問い合わせたい。
 ・ 絞り上げる方法はどうするか、帆の製作段階でリングを付けないとロープは取り付けられない。
 ・ 寳田、西條・今井委員の3人で意見を持ち寄りたい。その後、西條委員がコーディネートしてサポートすることにしたい。また装帆について、ボランティアなど人員の確保をどうするか、次回までに検討しておくこと。
 
(2)木の文化発信に向けて
・ 「木の文化発信」に向けて、技術の伝承が課題としてあるが、これまでの積み重ねを発信していきたい。なお、次回に意見交換をしたいのでそれまでに検討していただきたい。







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