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第3回 調査研究会
日時 平成15年1月16日(木)11時〜
出席者 委員9人
内容 議事録より抜粋
 
1. 報告事項
(1)第二回打ち合わせの確認について
(1)展帆の時期は10月上旬が望ましい。(2)帆の製作にかかる発注に関して、西條委員と事務局で打ち合わせをして進めること。(3)展帆に関して、風速等、安全面では問題なし−が前回の検討ポイントである。
(2)の帆の製作について、帆の丈を従来より1メートル短くすること。ヤードの高さについて、係留船のバランスを考えて本来の位置より下げていることに関して、展帆はこのままの位置で行う。この2点についてご了承いただきたい。
 
(2)第二回打ち合わせで出された課題について
 ・ 地域の気象データは10月に絞ってまとめたもの。参考まで当協会で測定したデータ(前回提出分)を添付している。A4版のメンテナンスデータには船内各箇所の温度・湿度が記載されている。船の上部、下部の風向について、目視だがほとんど変わりないことを確認した。
 ・ 帆の寸法を詰めるという説明あったが、当時の慶長遣欧使節船そのものの帆の長さの記録等がないので帆柱(マスト)の大きさからスタンダードな設計をした。史実に忠実にと言っても、この程度のこと。1メートル縮めても差し支えないと思われるが、委員の方如何か。(異議なし)
 ・ 帆の丈、1メートル縮めることを承認する。
 ・ 現在のヤードの位置で展帆することについても了承していただきたい。(異議なし)
 ・ 新しい帆に取り替えるため、ヤードをはずして降ろすのか。
 ・ ヤードを降ろすことのメリット・デメリットを検討した。降ろすとなった場合、取り付いている多くのロープを切断しなければならないこととなる。ヤードは現在、ワイヤーで固定しているので動かさないほうがいいのかと考えた。ゴンドラに乗って古い(現在の)帆だけ降ろし、新しく作った帆は竿(ポール)のようなものに括り付け、クレーンと滑車で中央部から吊り上げてヤードまで持っていく方法がいいのではないか。風速が増した場合は、即座に縮帆(リングを取り付ける)できるようにしたい。取り付け作業はヤードの上に乗せず、ゴンドラで行うという案ではどうか。
 ・ この研究会で細かい議論は難しい。ここでは安全性の確認に止めておく。装帆を見るか、形を見るかということ。展帆ボランティアとなる人は装帆作業に興味はあるだろうが、今は形を見せることに重きをおくべきではないか。つまり、「展帆して見て楽しむ」ということ。
 ・ 安全・確実な方法で展帆した姿を見せるべき。
 ・ 展帆を終えたら帆だけはずしダミーセイルを取り付ける。はずした帆は畳んで収納しておくという計画になっている。
 
2. 協議事項
(1)展帆にかかる諸課題について
 ・ 前々回、前回と意見をいただき、今回まとめということで集約したい。事務局としては、(1)展帆の時期(2)展帆の方法(3)誰が最終判断をするのか、その総責任者(4)展帆作業の指揮者(5)業者委託か、ボランティアの活用は(6)PRの方法(7)風速・風向(8)ロープの耐久度についての意見と、(9)展帆にかかる条件設定(基準)を明文化しておく必要がある。ご検討いただきたい。
 ・ データからして「気象情報に気を配り、展帆は10月に行う」で良いか。
 ・ 10月は風向きがベストではないが、準備の時間やイベントと関連付けると仕方がない。
 ・ 中旬に3連休があるので、この頃をと目論んでいた。
 ・ 事故が起きた時の責任者とかを決めておく必要がある。指揮者に責任を負わせるのは大変だ。
 ・ 主催者が責任者となる。安全基準のマニュアルがあるので、これを主催者側が整理しておくこと。
 ・ 前回展帆時のマニュアル、判断基準があるはずだ。それで前回は展帆の許可が下りている。
 ・ 展帆の判断基準を設定しておくこと。展帆の是非に迷った時、観客等に煽動されることなく、判断できる明確な基準が必要だ。
 ・ 展帆するか否かの判断が難しい。大勢の観客が来ることを考えると特に安全性を最優先してもらいたい。観客のことを考えると、どうしても展帆したい衝動に駆られるのが人情というものだ。
 ・ 展帆は業者委託するとして、どのようにして決定するのか。また、ボランティアについては追々に育成されたい。
 ・ 3社ぐらいによる競争入札としたい。
 ・ 原則として競争入札だが、帆のメーカーによっては装帆していないところもある。手間がかかると具合が悪い。経験のあるところにやってもらうと心強い。総責任者は館長、装帆の指揮者は西條委員、そのコンサルタントとして今井委員というのは如何か。(賛成)
 ・ 確認したい。総責任者に館長、安全管理者に業者、指揮者に西條委員、プロデューサに今井委員、委員長には館長のアシストということでよろしいか。(異議なし)
 ・ 風向の基準は、北と西風で良いか。
 ・ 風向きの範囲はもっと広くなる。マニュアルに定めるが、技術的に360度で見て、細かく設定する必要がある。
 ・ メンテナンスデータについて、説明願いたい。
 ・ 開館日は毎日計測している。温度・湿度はデッキ、船首、船尾等々、各所で計測している。風向ももちろん毎日計測している。
 
(2)「木の文化」発信に向けて
 ・ 文化財指定について、個人的にまとめたものが先程のレジメだ。復元船は歴史資料と建造物に当てはまるが、前例のないケースではある。価値を備える必要と学術的に耐えられるかどうか。県が中心となって木造船建造技術のいろいろなデータを収集し、教育・方向性・歴史的なものを明確にする必要がある。国には最近の傾向だが、単なる歴史というばかりでなく、科学技術も取り入れていくという方針がある。だが、復元したものが指定された例は過去にない。特殊な事情・特殊性を売り込み、総合的に説明する。従来にない、現在の技術を文化財として指定される方向へもっていく。文化財に指定された時のリスクについて、展帆は無論、クギ一つ打つにも面倒くさいものとなる。県の所有物が文化財に指定される例も出てきている。県であれば、自ら資料を出して審議できるため、比較的簡易だ。審議委員が新しい考え方に対応できるかが鍵だ。
 ・ 2度と造れないという立場から申請したい。木の文化を発信させる起爆剤として指定がほしい。
 ・ 寿命がある。前例はないが時代の変化の中で広い視野から認めてほしい。その最初の事例となるだけの価値のある船だ。
 ・ まず県(文化財保護課)に相談したい。
 ・ 新しい文化行政の方向がある。
 ・ これをきっかけにいろいろなものが掘り起こされるのではないか。これを宮城県は自覚すべきだろう。
 ・ 話が前後するが、木の文化をどう伝えていくか。提言あればお聞きしたい。
 ・ 技術の伝承は具体的に何かを造っていく、造り続けていく仕組みがあるといい。
 ・ とても難しいことだ。樹木の分布(県内の)等を把握することから始めるべきだ。縄文時代は栗の木に依存していた。その実を食べたり、建築物に用いたりした。また、いい材料(木)が遠方に見つかると、そこから取り寄せたりもした。大工道具から探る手もあるが、漆器とかからでも探ることができる。
 ・ 石巻圏域の植生を調べること。昔生えていたものを調べる。当時、どのような木材を重宝していたか。一番知っているのは船大工だ。木の性質・特徴をうまく見い出して、それをサン・ファン館から発信していけば良い。
 ・ 「木の文化」と言っても漠然とし過ぎている。「船大工の技術」を中心に据えるなど、どこかで線引きが必要だ。
 ・ 何れ形がなくなってしまうものをどう残すか。例えば設計図だけ残して意味があるのか。
 ・ 木を使う、扱うという需要がない。また、同じものを造るとすれば、形を似せるのが精一杯で今のやり方でやらざるを得ない。
 ・ 常に新しいことにトライしないと途絶えてしまう。
 ・ ウニ・アワビ漁にFRP船ではホバーリングがひどくて大変。木船のほうが良い。ご存命の船大工は多くいるが、実際に船を造れる人となるとそういない。船大工の技術は見て覚えるものなので実際に携わらないと覚えられない。それぞれに流儀があるので、人によって打つ音から何から全然違う。
 ・ ヒビ割れしない打ち方、音、各自承知していた。ほかに何か。なければ本日でこの調査研究会を終了とする。







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