日本財団 図書館


3. 広島 わかりやすく使いやすい公共交通の実現
(1)プロジェクトの背景と目的
 広島市街のバスは、多くの事業者が競合しているため、路線やダイヤ、バス停表示の統一や標準化が行われず、非常に分かりにくく使いにくい(図III−3−1)。特に、郊外路線と市街地路線とが入り乱れる広島の都心市街地では、「分かりにくさ」が利用を阻害してさえいる。施設面だけでなくソフト面などを含めた、公共交通全体の「バリアフリー」が必要である。
 
図III−3−1 広島市中心部(「本通り」バス停)でのバス停時刻表表示。ひじょうにわかりにくい。
 
 都心市街地や公共交通の衰退は、広島は他都市ほど深刻ではないとはいえ、明らかにその方向に進みつつある。まちと公共交通に体力のあるあいだに、都心市街地や公共交通の活性化を行い、過度の自動車依存化を抑制していかねばならない。幸い広島では、市民、行政そして事業者が連携した「NPOによる交通社会実験」などの実績をいくつか重ねており、「市民主導型」の公共交通活性化への活動を具体的にすすめていく下地が出来ている。
 そこで本研究会では、広島市中心部を対象に、「わかりにくい公共交通」から「使いやすい公共交通」への転換を図る様々な施策を、利用者の立場から「市民主導で」提案し実行する。具体的には、バス停表示の共通化と充実化(時刻表/路線図/乗り継ぎ情報等)を足がかりとして、複数事業者の乗り継ぎを考慮したダイヤ調整、路面電車や新交通システムも含めた乗り継ぎ情報の充実化を検討し、都心市街地の活性化施策と連携して、NPOを主体として公共交通への利用促進施策を実施する。
 バス時刻表の標準化の乗り組みは、複数の事業者が競合し、かつ需要密度の大きい都市では初めての試みのように思える。さらに一元的に集約することで、公共交通情報をインターネットサイトに活用でき、乗り継ぎも含めた詳細な情報を適用できる。
 
(2)プロジェクト内容
(1)見やすく使いやすい「バス停表示共通フォーマット」を提案する。すなわち、複数事業者/路線の時刻表や路線図を、共通の様式に統合した標準フォーマットを提案。同時に、バス停および駅で提供すべき情報の列挙/整理も提案する。
※14年度で終了
(2)市民を核として、複数の行政主体/事業者を巻き込んだ「共通のテーブル」づくりを行う。
※14年度で終了
(3)各バス停の統一時刻表を作成するために必要な、情報の一元的管理や、不断に変化するバス時刻表の改訂への対応、などの技術的な仕組みづくりを行う。そして、パソコン/携帯端末から、乗り継ぎを含めた情報獲得を可能とする技術的な仕組みづくりを行う
※別途 中国運輸局のプロジェクトと協同して実施。14年度で技術的課題整理を終了。
 ただし申請時にあった「既存の情報提供ページとの統合」については未定。
 来年度は、独自ページによる提供(実証実験)を行う。
(4)特に路線/事業者が入り乱れる「広島の都心市街地」を対象に、実際に共通フォーマットの時刻表をバス停に設置し、わかりやすさや使いやすさを検証するための、小規模な実証実験を行う。この際、同時にホームページ(携帯電話にも対応)による情報提供も行う。またこの実験を通じて、ダイヤそのものの共通化もできる限り検討する。その成果をもとに本格的実施を事業者/行政とともに行う。
※15年度に実証実験を実施(7月〜8月を予定)。現在、実験準備中
 ダイヤ改訂は行わないが、ダイヤ調整されていないために生じる問題を整理。
 対象地域は、予算削減を考慮して当初予定より規模を縮小。
 都心部から伸びるある高密度運行路線を対象に実施(面ではなく線で実施)
(5)本格的な実証実験の際には、広島市の都心商店街と連携し、買い物の金額に応じて「環境乗車券」の提供を通して利用者調査を行う。これらの施策により、「知らない人でも利用できる公共交通」のイメージをつくり、消費者のマイカー指向や郊外指向の転換を促す。
※15年度は実施せず。15年度中に検討を行い、16年度に実施予定
 
(3)推進委員会のメンバー構成
 ひろしまNPOセンター、広島市で活動する市民団体(タウン誌代表、LRT研究会代表等)、都市計画関連のコンサルタント、交通事業者(広島電鉄、広島交通等)、国土交通省(中国整備局、中国運輸局)、広島市道路交通局都市交通部、広島大学 
 
(4)3カ年のスケジュール
(拡大画面:18KB)
 
(5)今後の進め方
 小規模な実証実験を、15年度の半ば(7〜8月を予定)に実施し、利便性評価を行う。この実験では、エコモ財団からの助成金とともに、研究会の自主研究資金を使用して実験を行う。また、バス事業者や中国運輸局からの人的/物的支援をお願いしている。
 この結果をもとに、16年度以降の本格的実証実験(本格実施を前提とした実証実験。エリアの拡大、提供情報内容の拡充を行う)の設計を行う予定。
 
(6)15年度 バス停時刻表提供サービスの実証実験の概要
 
 多種の路線が行き交う広島市内のバス停では、バス停での時刻表表示が複雑でかつ便数が多いことから文字も小さくなっており、自分の利用したいバス便を探すことに時間がかかり、バス利用を敬遠する要素の一つとなっている。
 そこで、バス停に複数社同時掲載型の時刻表を掲示するとともに、パソコン用のホームページおよび携帯電話の端末を利用して目的のバス時刻を簡単に得る手段を提供した社会実験をおこないその有用性を体験者のアンケート等により検証する。
 以下では、携帯電話を使った情報提供サービスについてのイメージを中心に記述する。
 
イ. 実験期間
 2003年度前半の1ヶ月程度の期間(秋のダイヤ改正前を予定)
ロ. 実施場所
 市内中心部から北部方面への路線数の集中する「紙屋町」〜「大芝町」とする(図2)。この区間は、広島電鉄/広島交通/広島バス/中国JRバスの4社が運行。対象とするバス便数は以下の通りである。
 397本×21(バス停)×上下線×3(平日/土曜日/休日)
(拡大画面:170KB)
図III−3−2 実験対象区間の一部(太線枠内)







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION