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2. 滝沢村公共交通総合計画策定事業
(1)滝沢村の概要
 滝沢村は岩手県の中部に位置しており、県都盛岡市の北西部に隣接し、面積は約182.32km2である。人口は、平成12年国勢調査時点で51,241人、平成15年2月末現在で52,080人となっており、町村の中では日本一の人口を有する村である。
 盛岡市隣接部の本村南東部における人口集中地区と、本村北西部の酪農・山間地区の二つに分けられ、交通利便性においても両者の間には格差が存在する。
 なお、観光面においては、「チャグチャグ馬っこ」が有名であり、発祥地の蒼前神社が本村の中央部にある。
 
(2)事業の目的
 滝沢村における公共交通の課題として、次の(1)〜(4)が上げられている。
(1)村内公共交通網の整備の必要性
  村内各主要地区間を結ぶ公共交通網は発達しておらず、盛岡市方面へのアクセスが主流となっているが、現実的に通勤通学者の移動の約40%が村内移動である。このことが要因の一つとなって道路の渋滞などを引き起こしている。
(2)駅を核とした公共交通網整備の必要性
  村内各駅と住区を結ぶバス路線などがあまり整備されていない。一方、パーク・アンド・ライドのための駅周辺駐車場の不足も生じており、整備要求が高まっている。また、平成17年度にIGRいわて銀河鉄道の(仮称)巣子新駅の新設が予定されていることもあり、バス交通と鉄道輸送との結節が求められている。
(3)バス交通の変革による再編の必要性
 盛岡市が行なっているオムニバスタウン事業などにより、盛岡市内のバス交通がゾーンバス化へと向かっている。このため、村内のバス路線の一部についてもこれに併せた再編が必要であり、利用者主体の路線設定とするべきだと考えられる。
(4)村によるバス事業の効率化の必要性
  現在、村では、福祉バス、患者輸送バスを運行させている。しかし、事業費や利用者のニーズなどを掘り下げて研究するとともに、既存路線バスとの競合について検討する必要があると考えられる。このことから、広く利用者のニーズに合わせた路線設定と効率の良い事業とするように検討を進める必要がある。
 このため、滝沢村における公共交通網の検証を行い、住民の利用しやすい公共交通網として再編成し、利用増進を図るとともに、交通渋滞や環境問題への対処の一環として取り組む必要がある。
 よって、利用状況に合わせた路線設定やダイヤ編成を行い、効率化と利便増進を図るとともに、交通空白地帯の解消や交通弱者への配慮をした総合的な公共交通計画を策定することを目的としている。
 
(3)全体作業手順
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(1)村内交通課題の把握
 公共交通機関の現状と道路網の状態などを調査し、現在における物理的な課題や傾向を整理する。
(2)現況交通に関するアンケート調査
 現在のバス利用者、公共公益施設利用者を対象とした現況意識調査と、一般住民を対象とした潜在需要に関するアンケート調査を行い、現在の公共交通網への課題などを整理する。
(3)将来交通体系ビジョンの作成
 現況における課題を整理し、目標を設定した上での解決策を提起するとともに、利用増進策を考察していく。また、これまでの調査、施策等を交通体系ビジョンとして取りまとめる。
(4)仮将来交通体系の作成
 ビジョンを基にして将来的な公共交通ネットワークの作成を行なう。この段階では、具体的な路線などを仮設定した上で利用予測などを行なう。
(5)住民ニーズの把握
 仮将来交通体系に基づき、アンケートなどにより住民意見の反映を行なう。
(6)公共交通ネットワークの作成
 ニーズ把握、実現施策及び将来交通をもとにした公共交通ネットワーク案の作成を行なう。
(7)実現化案の作成
 公共交通機関の運行経路及び運行ダイヤを作成し、利用推計を行い、公共交通機関の実証試験に向けた調査を行なう。
(8)実証試験
 実現化案に基づく運行実証を行なう。併せて、利用者アンケートなどを行なう。
(9)検証による修正項目の洗い出し
 運行実証における課題をもとに、修正ポイントを考察する。
(10)滝沢村公共交通計画の作成
 滝沢村公共交通計画の作成をおこない、公共交通関係機関への協力要請など、実現化を目指す。
 
(4)平成14年度事業内容
(1)村内交通課題の把握
イ. 村内のバス路線網
 村内のバス路線は、岩手県交通(株)の滝沢営業所、巣子車庫、雫石営業所から盛岡市内に向かう路線と岩手県北自動車(株)の西根・八幡平方面、沼宮内方面、滝沢村北部から盛岡市内に向かう路線が基軸となっている。その他、岩手県立大学や盛岡大学の通学用路線や村内の集落間を結ぶ路線などがある。
 村内での一日当たりの運行本数は、岩手県交通(株)が約350本、岩手県北自動車(株)が約60本である。
 また、村の事業として高齢者への配慮を目的とした福祉バス事業、村北西部の既存集落と医療機関とを結ぶ患者輸送バス事業を行なっている。福祉バスは、週3日(月、水、金)の1日1往復、4路線を運行しており、患者輸送バスは、各地域に週2日2路線の運行を行なっている。
 村のバス路線の特徴は、前述した通り、盛岡市へ向かう路線が中心となっていることから、鉄道駅との結節が脆弱で、人口集中地区と鉄道との連絡が未発達であり、今後の課題と捉えている。(図III−2−1 滝沢村バス交通路線図参照)
 なお、鉄道の路線、ダイヤ編成については、平成15年度に調査整理を行なう。
ロ. 公共交通の利用状況
 本調査は、バス路線ごとの利用者を調査し、ダイヤ編成や路線設定に役立てようというものである。平成15年3月中に事業者と調査手法の調整を行い、4月上旬の実地調査、4月中の調査とりまとめを予定している。
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図III−2−1 滝沢村バス交通路線図







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