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2.4 第2章のまとめ
(1)自治体の取り組み
(1)コミュニティバス
 自治体アンケート調査より明らかになった点は次のとおり。
・コミュニティバスは1995年の武蔵野市の「ムーバス」の運行開始以降に導入した自治体が多く、運行目的は「交通不便地域の解消(74%)」「病院、施設への交通手段の確保(67%)」「高齢者・障害者の外出機会の創出(61%)」が多い。
・1系統あたりの路線延長は「10〜20km未満」が39%と多い。人口1万人未満の過疎地域の自治体の1系統あたりの路線延長は「20〜30km未満」が38%と最も多い。
・運行時間帯は、「7時〜8時台始発」「18時〜19時台終着」が最も多い。
・人口1万人未満の自治体においては、1日の運行本数「5本未満/日」が約4割以上と最も多い。
・運行方法の工夫の内容で最も多かったのは「フリー乗降(26%)」で、特に人口1万人未満の主に過疎地域のコミュニティバスでは48%の自治体がフリー乗降を導入している。
・運行の課題と工夫の例は次のとおり。
 
【運行形態】
・運行日、時間帯の拡大(朝、有ラッシュ時の運行)
・運行時間の短縮
・発車時刻の統一化(パターンダイヤ)と複数系統の乗換円滑化
・過疎地域でのスクールバスとの統合化
・フリー乗降
【利用しやすい設備】
・ノンステップバス等アクセシブルな車両の導入
・バス停や車両、系統が識別しやすいように色や番号で標示
【利用者への広報、利用者からのニーズ収集】
・バスの愛称を住民の公募により決定
・バス停の場所、運行ルート、ダイヤを記した地図を配布
・アンケート調査等による利用者ニーズの継続的な把握
 
(2)移送サービス
 自治体アンケート調査より明らかになった点は次のとおり。
・移送サービスは、回答自治体の約半数が「実施中」で、運行目的は「病院への送迎(74%)」「高齢者施設への送迎(57%)」が多い。運行方法は「ドア・ツー・ドア」が66%である。
・導入時期は、2000年(平成12年)から導入した事業が最も多い。
導入の経緯は、次のa〜eに分類できる。
 「介護保険制度の開始(2000年4月)」、「デイサービスやショートステイとの連携」を導入の経緯として挙げた自治体は多い。
a. 移動制約者の外出支援
 多くの自治体で利用資格者となっている、高齢者・障害者、及び公共交通機関を利用できない重度の肢体不自由者の移動を支援することを導入目的としている自治体は多い。
b. 関連事業の代替、補完
 障害者へのタクシー券配布を廃止の代替、老人センター開設、地区診療所の廃止に伴い導入されたケース。
c. 事業の継続、支援
 社会福祉協議会、ボランティア活動を委託事業として支援するに至った経緯。
d. 介護保険制度の補完
 介護保険で移送が対象となっていないこと、介護保険の「非該当」となった高齢者への介護予防の目的。
e. 補助制度の活用
 車両の寄附、運行補助(例:へき地医療対策事業)を受けたので導入。
 
・運行時間帯は、「9時〜16時」「8時〜17時」「9時〜17時」が多く、この3パターンで全体の75%を占める。
・移送サービスの自治体の車両保有台数(委託分を除く)は、「1台」が55%を占め、「予約が取りにくい」という意見が多数みられた。
・移送サービス事業の運賃は、「徴収している」が44%、「無料(徴収していない)」が56.3%となっている。「会費を徴収している」のは8%である。
・自治体の移送サービス運営上の課題と工夫している点(自由回答)では、「運転ボランティア、介助者の確保が大変」、「利用者の安全確保」、「交通事業者、社協、NPOの独自事業とのサービス水準、料金のバランスを考慮している」等の課題が挙がった。
 
・アンケートで回答された運行の課題は次のとおり
・受益者負担の方法等が課題。
・通院者が重なり予約が取りにくい(平日午前の希望が重複し予約がとりにくい)。
・移送車両が1台しかない。
・運行目的を広げるか検討中。
・運行曜日・運行時間に制限のあることが課題。
・民間タクシー会社の参入希望があり、現在検討中。
・利用地域の拡大。(利用者から治療を行っている病院が他市にあるのでそこまで利用したい要望がある。)
・利用資格の範囲:普段は自立歩行ではあるが透析後のふらつき等の方は対象になるか。
・運転ボランティアの確保。
・運転事故防止のため、ボランティアの実務研修を行っている。
・市内バス事業者との運行連絡協議会があり、交通サービスの諸問題を協議会に提案。
 
・ヒアリング調査から明らかになった運行の課題は次のとおり
・高齢者・障害者の乗車に際して、言語障害者も含めて、介助者が運転する場合に意思の疎通等車内の安全的ネットワークが欠如する危険が大きいため、車両のみの貸し出しは中止すべきである。
・肢体不自由者のみならず、視覚障害者、知的障害者、人工透析患者の移動のニーズの保障が課題。
・隣町の病院に通院する等利用者の交通圏と自治体の行政エリアは必ずしも一致しないので、隣接した自治体等と連携した地域福祉交通サービスの提供が必要。
 
(3)その他のサービス
 高齢者・障害者に対して福祉タクシー券を交付している自治体が最も多く、バスの利用が可能な高齢者には、タクシー券に替えてバス券又はバスカードを支給している自治体もある。特に過疎地の一部の自治体からは、タクシー券、ガソリン券が支給されている。
 
(2)移送サービス団体(ボランティア)の取り組み
 利用者の多様なニーズに対応するため、ボランティア団体が受け皿となっており、次のような実態が明らかになった。
 運転ボランティア不足とボランティアの高齢化の問題を抱えている団体があり、STサービスを面白くてやりがいのある仕事である点を若年層にアピールする必要がある。
 規定時間以上のサービスの必要な人には、利用条件の特別ルールが必要である。
 運行の工夫としては、通院目的の利用者の調整により、運行の効率化が図れる。例えば、鷹巣町では、通院者を木曜日に統一し、予約窓口兼、運行管理者(ブロークリッジ)が病院との交渉を行っている。
 今後は、ボランティアもビジネス型とボランティア型に大きく分かれていくことが予想され、運営資金確保のため、ボランティアも実費は収受し、不足分は公的資金を補填するのが現実的と考えられる。介護保険利用も視野に入れた、ドライバーのホームヘルパー資格の取得もより一層奨励することが望まれる。
 
(3)タクシー事業者の取り組み
 介護保険を利用したタクシーの運行を行っている事業者があり、それらのタクシー事業者のホームヘルパーは不足しているため、ホームヘルパーの養成講座の受講を奨励している。介護タクシーのドライバーに利用者からお礼の電話が入る等、ドライバーの「生きがい」にも結びついている。
 介護保険を利用したタクシーの利用者にとってのメリットは大きい。例えば、一般のタクシーを使えば1時間以上かかるような地域からでも、210円(一部負担)の利用料負担で済む(平成14年度まで)。このような長距離の利用が集中するとタクシー会社には経営上厳しいが、トータルでは短距離の利用もあるので現状では採算のバランスは取れている。
 人材の確保については、2種免許のハードルが高く、一般教習所で門戸を広げつつあるので、女性等にも取得の機会が広がりつつある。
 今後は、既に利用のある介護保険の認定を受けていない利用者への対応、昼間の駅待ちタクシーの活用、車いすごと乗車可能なノンステップなタクシー車両の普及等が課題である。







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