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2.3.10 自治体B(九州のK町)
 
(1)団体特性
運行拠点都市人口:3万人
車両台数:3台(29人乗り)
 
(2)施策の背景・経緯
 東西地域を結ぶ住民サービスとしての足の確保が必要になった。
 具体的には、昭和47年頃から開発され発展してきた町の北西側にある団地(約1,500世帯)が町役場と鉄道路線を挟んで反対側にあり、町を横切る路線バス3系統が団地を通っていない(3系統すべて鉄道路線線の南側を通る)。さらに町の総合施設である総合交流施設も鉄道路線の北側にあるため、公共交通機関で行くことができない。このため、人口の増加が著しい地区と、町役場、総合施設を結ぶ公共交通サービスの要望が、住民からもあった。
 
運行の目的・意義必要性
【町】高齢者等の日常的な足として地域内の移動支援
【事業者】町との円滑な関係の維持
 
(3)路線概要
 平成14年9月に運行を開始したコミュニティバス。町内全地域を廻る6系統を設定。各2路線ずつの3系統を週2回(月、水、木、金のうち2日)、各路線1日2往復で運行を開始。既存路線との料金格差の調整等により、降車場所は限定された。
 
(1)路線数 6系統
(2)総路線延長 1系統あたり、11〜12km、15km等
 
(4)運行内容
 
(1)運行時間 始発8:50〜終着17:30
(2)運行本数 2往復/日/系統
(3)運行日数・曜日 6日/週
(4)車両台数 3台(29人乗り)
(5)利用資格 条件なし
(6)運賃 100円均一(割引等は設定しない)
(7)利用者総数 5人/日/系統/片道(予想)
(8)運行方法 路線バス方式(フリー乗降等はなし)
(9)運営方式 全面委託
(10)委託先 バス事業者
 
(5) 事業者
運行主体:Aバス 2ルート 1台
Bバス 4ルート 2台
貸切バスの乗合運送許可
 
(6)関係機関
【町】事業主体
【バス事業者(2社)】運行受託、車両の確保
 
(7)事業費
委託料:4,200万円/年(3台あわせて)(6日/週 運行の場合)
 
(8)助成
 なし。町の一般会計より全額を拠出。
 
(9)施策の実施に際して工夫した点
・きめ細かいサービスを行うために、既存のバス停約56箇所に加え、半数の38箇所を新設した。
・6系統で、全ての行政区を網羅できるようにルートを設定した。
・住民の要望があった、町役場と総合交流施設(農産物直売所、温泉等の施設の総称)を結ぶルートを中心に設定した。
・自治体によると、コミュニティバス運行に伴う既存バス路線の廃止、統合等は一切ないが、一部競合する部分で既存路線との乗客の取り合いが起きた場合の対応をどうするかは今後の課題。
 
(10)本施策の課題
 導入前に十分な調査、検討を行っておらず、行政、地域住民、交通事業者の連携が見られないが、運行後は次のような施策で努力している。
 
(11)運行開始3ヵ月後の事後評価(施策の効果)
 運行開始後3ヵ月間で、系統により利用状況に大きな差が出てきた。これは、既存路線があった地域と路線を持たなかった地域で利用の差が出たものと考えている。
 また、降車場所を公共施設に限定していることから、利用が伸びない一因となっており、住民からの要望等も多く寄せられているため、事業者との検討を重ね、フリー乗降を図り、路線の再検討も予定している。
 平成15年1月中に巡回バス利用に関するアンケートを実施しており、その結果を反映させていく方針としている。
 また、中型バスに代わり、細街路に入るために小型バスの導入を検討しており、タクシー会社への委託も視野に入れている。
 
表2−37 系統別の乗車実績
系統 業者A(1) 業者A(2) 業者B  
運行日数 27日 26日 27日 延べ 80日
乗車人員 184人 340人 609人 1,133人
 
2.3.11 東京都内の自治体のSTサービス
 以下は、平成15年2月3日に東京都福祉局で実施された「福祉移送サービスの役割に関する報告会」に参加した自治体(社会福祉協議会含む)担当者へのヒアリング結果である。東京都においては、本来は多様な形態のSTサービスが存在するが、サービスの提供事例としては6例のみの紹介となる。
 
表2−38 町田市やまゆり号(東京都内STサービスの例−1)
(1)運転日、
(2)時間
(3)車両台数
(4)運転手
サービスの要点
利用実態と課題
(1)毎日
(2)午前8時30分から
午後5時まで
(3)3台
(4)13人
サービスの要点
・運賃は無料。但し、通行料、駐車料金は除く。今後、運賃負担を求める可能性がある。(地元ボランティア団体は有料)
・利用回数制限はなし。利用資格はあり。
利用実態
利用形態はベッド→ベッドの利用が多い。箱根、小田原、新宿等の遠距離利用があると、1日貸切になってしまう。当初の利用目的は、高齢者・障害者の外出機会の拡大であったが、現在の利用目的は7〜8割が通院。利用件数は、4,376件(利用件数)/2,780人(登録者)。
課題
・申し込み人数に対して60%の要望に対応するのが限界。
・近距離は方向が合えば効率化できる。
・重度の人が優先して利用し、軽度の人は利用できない傾向がある。
・民営化(委託)を視野に入れた検討も行っている。
 
表2−39  品川区社会福祉協議会・移送サービス(東京都内STサービスの例−2)
(1)運転日、
(2)時間
(3)車両台数
(4)運転手
サービスの要点
利用実態と課題
(1)月〜土
(2)午前9時から
午後5時まで
(3)2台
(4)協力会員85人
(実働20人/月)
サービスの要点
・1人1回につき4時間以内の時間制限あり。
・運転者の安全教育を実施。
利用実態
利用件数は80件/月。600〜800回/年運行。利用目的は、車両に余裕がある時は、最も多い通院以外に、買物、お花見も可能。
課題
・区外への転出者の利用希望に応えられない。ドライバーの高齢化でドア・ツー・ドアの介助が困難。
品川区の提供しているその他のサービス
・リフト付ワゴン車の貸し出し
・リフト寝台付福祉タクシー事業
 
表2−40 江東区・リフト付福祉タクシー(東京都内STサービスの例−3)
(1)運転日、
(2)時間
(3)車両台数
(4)運転手
サービスの要点
利用実態と課題
(1)毎日
(2)午前8時から
午後8時まで
(3)3台
(4)事業者委託
サービスの要点
・利用資格:登録制で、65歳以上の高齢者と65歳以下の移動制約者が登録番号で整理されている。
・23区内、三鷹市、武蔵野市内に1回の利用の発着地のいずれかがあることが条件。
・車両:リフト付。車いす2台又はストレッチャーに対応。定員4人。
利用実態
事業費は平成12年は2,700万円、平成13年は2,300万円。
利用料金は、3,150円/片道(介助者料金含む)ストレッチャー付は迎車料金(出庫〜入庫)必要。
利用者へは1人あたり約8,000円の補助を行っていることになる(27149千円/3577件)。利用者のタクシー料金は2,000円。タクシー券は1人あたり月3,500円程度で、月1回は無料で外出できることを保証している。
課題
・料金は中型タクシー料金。今後は小型タクシー料金で車いす対応も検討。
・利用時間帯が通院時間に集中する。
江東区の提供しているその他のサービス
・ハンディキャブ車両の貸し出し
 
表2−41  中央区社会福祉協議会・ハンディキャブ運転事業(東京都内STサービスの例−4)
(1)運転日、
(2)時間
(3)車両台数
(4)運転手
サービスの要点
利用実態と課題
(1)必要に応じて
(2)原則午前9時から
午後5時まで
(3)2台
(4)利用者で確保、
又はボランティア
サービスの要点
・2泊3日までの車両の貸し出しが基本。運転ボランティアも登録している。
・利用目的に制限はない。
・利用料金:600円/年。ガソリン代は負担(満タン返し、又は30円/kmで換算)。年2回以上利用者には社協会員となることを勧めている。
・利用条件の確認は信用貸しで、書類審査は不要。
利用実態(年間利用件数)
車両の貸し出し
運転ボランティア
合計
課題
・運転ボランティア不足と高齢化が課題。登録者は18名で、自営業の合間に運転している。
中央区の提供しているその他のサービス
・リフト付ハイヤー(事業者に委託)
 
表2−42  北区社会福祉協議会・ハンディキャブ運行事業(東京都内STサービスの例−5)
(1)運転日、
(2)時間
(3)車両台数
(4)運転手
サービスの要点
利用実態と課題
(1)毎日
(2)必要に応じて
(3)3台
(4)利用者で確保、
又はボランティアを紹介
サービスの要点
・車両及び運転手の貸し出し。ドア・ツー・ドア。介助者の同乗も可。
・登録運転ボランティアは15名、うち毎日乗務可能な者は10名。
・専任職員はおらず、社協のアルバイト1人と区の職員(常勤)1人。
・運転ボランティア付の利用が9割を占めるまで高くなった。その理由は、家族が運転できない、平日に運転者がいない等。
・ガソリン代は負担(満タン返し、又は距離換算)。
利用実態
利用者(歩行困難者)の利用回数制限はある。月2回の運転ボランティア付STサービスと、月2回のタクシー利用が可能。
利用目的は通院、通所が多い。利用者は車いす使用者が多い。
年間利用件数は370件(平成14年度)、400件(平成13年度)である。
課題
・運転手不足、ドライバーの高齢化が問題。若年層は、職のない人でも心理的に支えてあげないといけない。
・助成金は580万円。諸経費は車検等。社協では事業を縮小する予定。事務改善、コーディネートを民間にまかせたい。区の財政状況からみて、500〜600万円の補助は困難。
 
表2−43  杉並区(社)友愛の灯協会、ハンディキャブ運行事業(東京都内STサービスの例−6)
(1)運転日、
(2)時間
(3)車両台数
(4)運転手
サービスの要点
利用実態と課題
(1)祭日含む7日間
(2)午前8時30分から
午後6時まで
(3)6台(内寄贈車両は5台)
(4)ボランティア30人
サービスの要点
・ドライバーは30〜32人(15人が固定メンバー)。うち女性は3人。平均69歳、最高71歳。運行管理者は72歳。
・事務所は4人がパートで交替勤務。
・利用料:300円/1時間。ガソリン代:満タン返し又は30円/キロ。
・車両貸し出しの際の事故は自己負担。
利用実態
利用登録者は190人。利用件数は、5,300件/年、多い1日は30件/日。10日前〜1週間前の予約が多い。
利用目的は8割以上が通院、通所目的。目的地で最も遠い人は伊東。遠出は休日を勧めるが、土曜日に予約が集中する。近距離では、新宿、東京女子医大、大久保等が多い。
課題
・1人あたりの利用頻度が多い事が問題。
・車両貸し出しの場合、初心者ドライバーは事故が多い。
杉並区の提供しているその他のサービス
・リフト付きタクシー運行事業(利用者の選択肢が広がった)
・「杉並げんき会」ハンディキャブ運行事業







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