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5.2 接遇の基本的考え方
 人的対応の「接遇」に関して一般的に「丁寧に対応する」ことが求められるが、「丁寧に対応する」ことの具体的対応として以下に示す。
 
(1)「丁寧に対応する」ことの具体化
 「丁寧に対応する」ことは基準がなく駅員のそれぞれの対応にばらつきがあることは必至である。障害者と言えば車いす利用者を意味し、ともすればエスカレーターの車いす対応のことを連想する人は少なくないはずである。また、事故などでの緊急時、改札口に乗客が殺到するため、混乱の中で、聴覚障害者や視覚障害者をはじめとする情報障害者は取り残されがちである。
 ちなみにISOガイド71では
「良くデザインされた製品やサービスは、説明情報がなくても、その形状や状態から、使い方が分かるようになっており、また、説明情報に全く注意を払わない利用者も存在するが、特に危険の警告等の情報がある場合には、製品やサービスのすべての利用者に届くものでなければならない。」
と記述されている。
 「丁寧な対応」について、まず基本として以下のことをあげることができる。
 
※ 聴覚障害者、視覚障害者への対応ができるように教育を行う
※ いつでも筆談のできる体制を整えておく
※ (いやな顔をしないで)直ぐに駆けつける、または対応する
※ 相手の唇を読むことが出来る人もいるので、顔を見てゆっくり唇を動かして話をする
※ 手話や筆談、外国語などができますということを視覚的に表示すること
※ 「指差しボード」の考案及び、導入の提案(郵便局で今後実際に、各窓口に「指差しボード」を常設する案が進行中であり、対象となるであろう方は「聴覚障害者」「高齢者」「外国人」「知的障害者」「子供」などだと思われる。また、このアイデアは、ホテル協会、日本トイザらスも賛同し、独自の「指差しボード」を考えはじめている)。
 
(2)人的対応に関する場面別情報提供の現状と問題点それに対する提案
 
 以下に場面別の具体的な接遇による対応例を提案する。
 
対象者:聴覚障害者及び難聴者、高齢者、外国人、知的障害者など音声の入手や言葉の理解が困難な人
 
【自動券売機で切符を買うとき】
 トラブルが発生した時、券売機横のインターホンを通して駅員が対応している。
<問題点> インターホンで会話できない
<対応可能な課題> 駅員による丁寧な対応
⇒ 聴覚障害者への配慮のメッセージを掲示する
例:「聴覚に障害がある方は、このマイクを軽く叩いてお知らせください」)
⇒ 駅員:筆談用具を携行する(メモ用紙でも良い)
(いやな顔をしないで)直ぐに駆けつける
⇒ 駅員呼び出しボタンの設置など
⇒ 障害者割引切符を買うときの方法を分かりやすく明示する
 
【改札口、みどりの窓口などで質問をしたい時】
<問題点> 忙しいとき、駅員に対応してもらえないことがある。
駅員が筆談用具を出さなかったり、ほとんど会話することができない。
<対応可能な課題> 駅員による丁寧な対応
⇒ 駅員:筆談用具を携行する(メモ用紙でも良い)
手話ができることを知らせる(手話できますバッチなど)
⇒ 改札やみどりの窓口:障害者向けのコミュニケーション方法も準備してあることを明示的に示すこと(「筆談しますマーク」など)
いつでも筆談できる体制にしておく
目のつくところに筆談用具があると良い
(筆談用紙、筆談器、指指し会話ボードなど)
用具があることを掲示する(「筆談しますマーク」など)
読唇できるようにゆっくりとした口調で、顔を見せて対応する
 
【トラブルが発生した時】
<問題点> 忙しいとき、駅員に対応してもらえないことがある。
駅員が筆談用具を出さなかったり、ほとんど会話することができない。
放送による情報が主体であるため、放送内容と掲示板や張り紙の内容が違うことがある
掲示板や貼り紙がどこにあるのか判らない
<対応可能な課題> 駅員による丁寧な対応
⇒ 改札前:掲示板、貼り紙を複数設置する(定型様式を作成)
* 定型様式:(事故の状況、遅れ時間、振り替え輸送の有無など書式を各交通事業者で統一する)
情報内容は随時最新情報に更新する
⇒ 車内:可変式情報表示装置で情報を流す(英語でのメッセージも流す)
聞き取りやすいようにゆっくりと放送する(難聴者への配慮)
⇒ ホーム:可変式情報表示装置で情報を流す(英語でのメッセージも流す)
聞き取りやすいようにゆっくりと放送する(難聴者への配慮)
掲示板、張り紙を複数設置する(定型様式を作成)
情報内容は随時最新情報に更新する
⇒ 必要な場所への駅員の十分な配置。
 
【忘れ物を問い合わせる場合】
<問題点> 忙しいとき、駅員に対応してもらえないことがある。
駅員が筆談用具を出さなかったり、ほとんど会話することができない。
問い合わせ方法は電話での対応しか想定していない
<対応可能な課題> 駅員による丁寧な対応
 
⇒ 忘れ物センター:FAXでも対応できるようにする
⇒ 駅:忘れ物の問い合わせに関するパンフレット等、常備しておく
(電話番号、FAX番号、忘れ物センターが設置された駅名、英語バージョン)
⇒ 鉄道会社:電子メールやWEBでの問い合わせができるようにする
 
 「丁寧」を検証し評価するのは鉄道会社ではなく利用者であり、鉄道事業者は自身が丁寧な対応ができているかを積極的に把握する必要があり、その結果を改善に生かす必要がある。そのためには利用者からのフィードバックが必須のはずである。そこで以下のような利用者の声を集約する仕組みを設けることが必要と考えられる。
◆利用者の声を取りあげる
◆「お客様窓口センター設置」等のポスターを駅に張る&アナウンス
◆電話、FAX、メール、ホームページ等の複数の手段
◆情報弱者の利用者の声をどの程度反映したかを第三者がチェックする







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