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9 水質を調べよう(4) 亜硝酸を調べよう
総合的な学習の時間でのテーマ:環境、健康
他の教科との関連:理科
 亜硝酸は水の汚れの指標のひとつです。亜硝酸があることは近くに汚染源があることを意味します。
 
測定方法
GR変法(Griess Romijn改良法)
 
準備するもの
パックテスト:亜硝酸 WAK−N02 測定範囲0.02〜1ミリグラム/リットル
試料:別々の箇所から採取した川の水や湖沼の水
器具:きれいな容器 試料の数+1(水道の水とくらべます)
 
実験
1. 試料をそれぞれの容器に半分以上入れて並べる。
2. ピンでチューブの端の方に穴をあける。
3. 指で強くつまみチューブの中の空気を追い出す。
4. そのままチューブの小穴を試料の中に入れ、スポイト式に半分くらい吸い込む。
5. よく振りまぜ、2分後に比色する。
6. 記録用紙に結果を記録する。
測定結果の予測
0.05〜0.5ミリグラム/リットルの範囲
 
測定結果の生かし方
 河川・湖沼の亜硝酸の値が高いことは、家畜のし尿や生活排水などが流れ込んでいる可能性を意昧します。原因をしらべてみましょう。
 
解説
 河川や湖沼などに亜硝酸が混入する経路は、生活排水、し尿排水が代表的なものです。
 
パックテストの標準色の見方
 標準色の上の数値と下の数値は、濃度の表現方法が異なります。上の数値は<イオン表示>で、下の数値は亜硝酸性窒素として亜硝酸の中の窒素分だけを表した<窒素表示>です。イオン表示の約3分の1が窒素表示となっています。測定結果を記録するときには、どちらの数値を採用したか明記してください。
 
10 水質を調べよう(5) リン酸を調べよう
総合的な学習の時間でのテーマ:環境、健康
他の教科との関連:理科
 川や湖、池の水の中から、自然の状態では一般にわずかしか存在しないりん酸が検出されることがあります。家庭排水、肥料などが流れ込むとりん酸が増えます。水中のりん酸をしらべてみましょう。
 
測定方法
モリブデンブルー法
 
準備するもの
パックテスト:りん酸 WAK−P04 測定範囲0.2〜10ミリグラム/リットル
試料:別々の箇所から採取した川の水や湖沼の水
器具:きれいな容器 試料の数+1(水道の水とくらべます)
 
実験
1. 試料を容器に入れて並べる。
2. 検水をビンの線(3ml)までとる。
3. 滴ビンのK−1試薬8滴(約0.5ml)を加える。
4. 蓋をしてよく振りまぜる。
5. ピンでチューブの端の方に穴をあける。
6. 指で強くつまみ、チューブの中の空気を追い出す。
7. そのままチューブの小穴を試料の中に入れ、スポイト式に半分くらい吸い込む。
8. よく振りまぜ、1分後に比色する。
測定結果の予測
0〜1ミリグラム/リットル。きれいな川では、0.1以下。
 
解説
 りん酸は自然界の水中にはわずかしか存在しません。りんは植物プランクトンや藻類の成長には必須栄養素なので、それらに吸収されて、それほど増加しないのです。
 しかし、過剰にりん酸が水環境中に入る「富栄養」の状態になると、植物プランクトンや藻類が増殖し、赤潮やアオコの発生の原因となります。りん酸は加工食品の食品添加物中に多用されていますので、台所からの排水にも気をつけてください。
 かつて、合成洗剤にりん酸が含まれていて多量に河川に流れ込みましたが、国内メーカーの家庭用洗濯洗剤の99%以上が無りん洗剤になって、この問題はほとんど解決しました。ただし、外資系の洗剤、国産メーカーのボディーソープなどには、りん酸が配合されている商品もあります。表示に注意してください。
 
パックテスト標準色の見方
 標準色の上の数値は<イオン表示>、下の数値はりん酸の中のりんだけを表した酸性りんとしての表示です。
窒素のところで説明したアンモニア性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素と同じように、りん酸の表示にも2通りあり、りん酸とりん酸性りん(りん酸の形になったりん)と表示してあります。
 P04・・・分子量は、P(りん・・・31)と04(酸素・・・16×4=64)の合計量95になります。
これに対して<りん表示>はP/P04=31/95=0.326となります。したがって、りん酸<イオン表示>×約0.33=りん酸性りん
 測定結果を記録する時にはどちらの数値か、はっきり明記しておいてください。
 
豆知識
●りん酸は防腐の効果があり、食品添加物として加工食品に多用されています。
●土の中のりん酸は土壌に吸着されていて、水を加えただけでは、溶出・抽出ができないので、土壌中のりん酸の検出は簡単にはできません。
 
11 川の自然浄化力を調べる
総合的な学習の時間での関連テーマ:環境、健康
他の教科との関連:理科
 昔も河川を汚す工場排水や、家庭排水などが川に流れ込んでいたはずです。でも、川の水はきれいでした。川には白然浄化の力があったからです。自然の川の浄化力がどう変化するか、しらべてみましよう。
 
測定項目
pH、COD、アンモニウム、亜硝酸、硝酸、りん酸
準備するもの
パックテスト:
pH WAK−pH 測定範囲pH5.0〜9.5
CODWAK−COD 測定範囲0〜100ミリグラム/リットル
アンモニウム WAK−NH4 測定範囲0.1〜5ミリグラム/リットル
亜硝酸 WAK−NO2 測定範囲0.02〜1ミリグラム/リットル
硝酸 WAK−NO3 測定範囲1〜45ミリグラム/リットル
りん酸 WAK−PO4 測定範囲0.2〜10ミリグラム/リットル
試料:川の水・・・5リットル程度
小石・・・川の底から拾った表面がぬるぬるした、少し緑色をした石が最適。ビーカーに入る程度の大きさなら1つ、小さければ5〜6個。
器具:きれいな容器500ミリリットルまたは1000ミリリットル程度のガラス製ビーカー。同じ大きさのものを2個。
 
実験
1. 採ってきた川の水を小さなビーカーに取りわけてパックテストで上記6項目を測定し、その値を記録します。
2. 残りの川の水を小さなビーカーに取り分け、片方に小石を入れます。
3. 2つのビーカーを同じ場所に置きます。必ず、昼間太陽が当たる場所に置いてください。
4. 4〜5日間24時間くらいおきに各ビーカーから30ミリリットルを取り分けて、パックテストで6項目を測定します。
5. この間の天候、気温なども記録します。測定時間の少々のずれは、結果に影響を与えません。
注意
 ビーカーをそのまま放置しておくと蒸発して、試料の水が少なくなります。その状態の試料を測定すると濃度が高くなります。ビーカーにラップで蓋をするなどして、蒸発を防ぐ工夫をしてください。短期間なら無視することもできますが、長時間の場合は、水面をビーカーに印しておき、減った分だけ蒸留水を加えてから測定してください。
 
測定結果の予測
 実験結果はなかなか予想がつきにくいものです。
 まず、川の水の汚れ具合、ビーカーに入れた小石の状態、太陽の当たり具合、水温などによって条件が変わるからです。
 次の予測はこの通りにならないばあいも多いと思います。そのときには他の原因を探ってもう一度挑戦してみてください。
(1)何も入っていない川の水はほとんど変化しないはずです。
(2)小石がはいっている方は理論的に以下の傾向を示すはずです。
●pHは時間経過による変化はなく、測定時の明るさ(太陽光の量)で変化します。浄化作用とは関係なく、炭酸同化作用による影響が大きいのです。
●アンモニウムは一番最初に減少の傾向が出ます。
●亜硝酸はほとんど変化がありませんが、水中にアンモニウムがなくなってから減少の傾向が出ます。ただし、アンモニウムから亜硝酸に変化するものと、亜硝酸から硝酸へ変化するものとのバランスがとれると、あまり変化しません。
●硝酸はあまり変化しません。亜硝酸から硝酸に変化しますが、量的には微量なので、あまり変化は現れません。
●りん酸は減少の傾向が出ます。石に付着している藻類がりん酸を吸収するためで、藻類の活性度によって減少の度合いが異なります。
●CODは変化が予想できません。放置しておくと水の表面から酸素が吸収され、酸素は飽和状態になります。本来ならば酸素で有機物は酸化され、CODの測定値は低くなるはずですが、低くならないときもあります。
 
解説
 6項目のそれぞれの変化は、河川に自浄作用があることを示しています。しかし、河川の自浄作用には限度があり、一定以上の汚染物質が入ると川の自浄作用だけでは汚れを分解できなくなり、水が汚れてしまうわけです。川の自浄作用の力を高めていくために、どんなことが必要か、どんな方法があるか、考えてみましょう。
 
豆知識
●川の小石に付着した微生物、藻類などが重要な自浄作用を持っています。
●小石だけではなく河川敷に生えるアシなどの植物、土壌中の微生物などが働いて汚染物質を分解していきます。
●河川の底には酸素を好むバクテリア(好気性バクテリア)がいて、有機物を分解します。酸素だけでは単純に酸化されない微細な浮遊物質などが、微生物などによって酸化されやすい状態にされ、あらたに有機物(COD)として追加されていくこともあります。
●川底の泥の中にもたくさんの微生物がいて、有機物を分解してアンモニアにしたり、アンモニアを亜硝酸に、亜硝酸を硝酸に、一部は窒素ガスにして、水質を浄化しています。







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