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2 大喰い!ブラックバス
川に関連したプログラムの例(1)
対象:小4〜高3
教科:理科・生物、算数・数学、社会、体育
技能:実践する、比較対照する、説明する、話し合う、一般化する、グラフの作成、運動能力を育成する、観察する、感動する
所要時間:30〜45分
対象人数:15人以上が理想
学習場所:野外および室内(走り回る場所が必要です)
キーワード:生息環境、制限要因、捕食者、獲物、個体数、自然のバランス、生態系
 
目標
1)食物、隠れ場所、生活空間が生息環境の3つの必須要素であることを認識し、それについて説明できるようになる。
2)動物にとって、よい生息環境が重要であることを説明できるようになる。
3)制限要因を定義し、その例をあげられるようになる。
4)生態系は絶えず変化するため、野生生物の個体数がある程度変動するのは当然であることを認識できるようになる。
 
方法
 「フナ」と生息地の3つの要素(食物、隠れ場所、生活空間)に分かれ、活発に体を動かしながら、フナが生き残りをかけて、欲しい物を探す。
 
背景
 長期間にわたり、野生生物が繁殖と個体数の維持に成功するかどうかを左右する要因は、数多くあります。例えば、病気、捕食者と獲物の関係、季節による気候条件の影響(例えば、早霜、豪雪、洪水、干ばつなど)、事故、環境汚染、生息環境の破壊や生息環境の質の低下などです。
 ある自然の(人為的なものでも)制限要因は、生息環境が支えられる個体数を超えないように働いています。しかし、制限要因がある一定の限界を超えると、動物の種全体に絶滅の危機をもたらしたり、絶滅に至らしめたりします。
あらゆる動物にとって、食物、水、隠れ場所、生活空間の適切な配置は、基本的に必要とされています。これらの必須要素がないと、動物は生き残れません。
 この活動は、次の事項を学習するために計画されています。
●よい生息環境は、野生生物が生きるための鍵である。
●制限要因が働くまで、個体数は増大し続ける。
●制限要因は、野生生物の個体数の変動に影響を与える。
●自然は「平衡状態」になることはなく、常に変化している(動的平衡状態)。
 野生生物の個体数は、一定ではなく、さまざまな刺激と制限要因に反応して、絶えず変動しています。私たちは、制限要因が1つの種に影響すると考える傾向がありますが、実際は1つの要因が複数の種に影響を与えています(自然の制限要因や自然界をモデルにした人為的な要因は、種の個体数を予測可能な範囲内に維持する傾向があります)。「自然のバランス」は不変ではありません。つりあうというよりは、シーソーに似ています。いくつかの種の個体数は、変動したり、一年周期で変化します。例えば、ウズラの場合、早春に100つがい(200羽)でも、春の終わり頃には1200羽になります。そして、冬に向けて次第に減少し、再び100つがいになります。この周期は、食物、水、隠れ場所、生活空間という生息環境の要素の影響と考えられます。生息環境の要素は制限要因にもなりうるのです。生息環境の要素は最も基本的な必須要素であるがために、最もきびしい制限要因となります。
 この活動は、次の基本的な概念を、簡単に確実な方法で理解できることを意図しています。
●自然の生態系のあらゆる要素は、相互に関係していること
●生き物の個体数は、絶えず環境からのなんらかの要素の影響を受けていること
●動物の個体数は何年も変わらないのではなく、自然の生態系が変化しながらつりあいを保とうとする中で、絶えず変化していること
 この学習の主なねらいは、適切な生息環境の重要性と、変化しつづける生態系で野生生物の個体数に影響を及ぼす要素について、理解することです。
 
準備するもの
 運動場など、子どもたちが走り回る広さのある場所(室内、野外のどちらでもかまいません)、黒板または模造紙、筆記用具、3色の色画用紙(オプション)
 
進め方1
1. はじめに、この活動は「動物が生きるために最も必要なものに注目した活動である」と子どもたちに話してください。生息環境の必須要素(食物、水、隠れ場所、生活空間とその適切な配置)について復習します。この活動では、そのうちの3つ、食物、隠れ場所、生活空間をとりあげます。ただし、動物には生きるための十分な水も必要であること、これらすべての要素が適切な配置になくてはならず、さもないと動物は死んでしまうことも強調してください。
 
2. 子どもたちに(1)から(4)までの番号を順に言ってもらいます。(1)の子どもたちは、1ヶ所にいてもらいます。(2)、(3)、(4)の子どもたちは共に他の場所にいてもらいます。10〜20mの距離をおいて、平行に2本の線を引いてください。(1)の子どもたちは、一方の線に並んでもらいます。(2)、(3)、(4)の子どもたちは、もう一方の線に並んでもらいます。
 
3. (1)の番号の子どもたちが「フナ」になります。すべてのフナには生きるためのよい生息環境が必要です。生息環境の必須要素について、再び子どもたちにたずねます。食物、水、隠れ場所、そして適切な配置の生活空間です。この活動ではフナは十分な水を確保していることを前提とし、食物、隠れ場所、生活空間の確保に的を絞ります。フナ((1)の子どもたち)は、生きるために食物、隠れ場所、生活空間を見つけなければなりません。「食物」を探すときは、フナは手でおなかを押さえます。「隠れ場所」を探すときは、フナは頭の上で両手を合わせて三角形(屋根の形)をつくります。「生活空間」を探すときは、フナは両腕を横に伸ばします。フナは、フナ以外の要素に変わることはできませんが、各ラウンドで探す要素は変えることができます。ただし、そのラウンドが終了するまでは、探すものを変えられません。そのため、他のものを見つけても手に入れることはできません。生き残った場合は、次のラウンドで探すものを変更できます。
 
4. (2)、(3)、(4)の子どもたちは「食物」、「隠れ場所」、「生活空間」になります。それぞれの子どもたちは、各ラウンドの開始時に、どの要素になるか決めます。生息環境の要素になる子どもたちは、フナがそれぞれの要素を探すときと同じ方法で、自分がどの要素であるか表現します。例えば、おなかに手を置いて、食物であることを表します。
 
5. すべての子どもたちがそれぞれの線に並び、ゲームを開始します(フナが一方の線、生息環境の要素は他方の線)。まず、互いに背を向け合います。
 
6. 進行役の指導者が、最初のラウンドをはじめ、まず、すべての子どもたちにサインを決めてもらいます。例えば、フナには探すものを、また、生息環境の要素の子どもたちには、どの生息環境の要素になるかを決めてもらいます。そして、おなか、頭、体の横に手や腕を出してもらいます(普通は、食物、隠れ場所、生活空間のサインを、子どもたちがそれぞれバラバラに出すはずです。活動を進めるうちに、子どもたちが相談して、みんなで同じサインをすることも考えられます。お勧めはしませんが、それもかまいません。例えば、すべての子どもたちが隠れ場所になった場合、これは食物や生活空間が欠乏する人口過密を表すと解釈できます)。
メモ:ラウンドの途中でサインを変更するのを防ぐためには、食物、隠れ場所、生活空間を表す3色の異なる券(色画用紙片)を生息環境とフナの両方の陣地に用意します。各ラウンドの開始時、相手の顔を見る前に、子どもたちに券を1枚選んでもらいます。
 
7. 子どもたちの準備ができたら、「1、2、3」と数えます。3と数えた時にフナと生息環境の要素は互いに向き合います。食物、隠れ場所、生活空間を表すサインをはっきり出します。
 
8. フナは自分が探している生息環境の要素を見つけたら、その子どもに向かって走り寄ります。フナは、サインを出しながら、自分と同じサインを出している生息環境の要素を捕まえに行きます。探している生息環境の要素を確保したフナは、その子どもたちをフナの陣地に連れかえります。これはそのフナが自分の自分の必要なものの確保に成功し、その結果、繁殖にも成功したことを表します。食物、隠れ場所、生活空間を確保できなかったフナは、死んで生息環境の要素となり、生き残ったフナの食物、隠れ場所、生活空間となります。
メモ:複数のフナが同一の生息環境の要素を捕まえた場合は、最初に捕まえた子どもが生き残ります。フナに連れて行かれなかった生息環境の要素は、そのラウンドが終了するまで、生息環境の線上に留まります。生息環境の要素役の子どもたちは、ラウンドが変われば、自分が表す生息環境の要素を変更できます。
 
9. 進行役の指導者は、活動開始時、または各ラウンド終了時にフナの数を記録します。大体15ラウンド行います。子どもたちが楽しめるように、てきぱきと行ってください。
 
10. 数ラウンド終了したら、子どもたちを集めて、この活動について話し合います。子どもたちが体験したことや見たことについて話し合うように促してください。例えば、「フナの必要なもの(例えば隠れ場所)が、フナが必要とする以上にありました」という具合です。この活動の2ラウンドか3ラウンド目には、フナの個体数が増大して生息環境の要素を使い果たし、ついに食物、隠れ場所、生活空間が不足する事態になります。その時、フナは飢え、隠れ場所や生活空間の不足のため、死に至り、生息環境の一部となります。このようなことは自然界でも起こります。
メモ:実際に、大型の哺乳類の個体数では、子どもの死亡率が高くなったり繁殖力が低下したりします。
 
11. 模造紙または黒板を使用して、活動中に記録したデータを示します。活動開始時のフナの数と、各ラウンド終了時のフナの数を貼り出します。活動開始時は最初の年、各ラウンド終了時はそれぞれ1年が経過したときを表します。フナの数は、5匹刻みの段階に、実数を記入します。例えば、次のとおりです。
 子どもたちは、このグラフを見ることで、活動中に経験したことを思い出すでしょう。フナの数は年ごとに変わります。個体数の制限要因が、動物が繁殖できなくなるほど極端な値とならない限り、自然ではこのような変動が見られます。よい生息環境があり、繁殖が可能な数の固体がいるかぎり、野生生物の個体数は、頂点に達し、減少し、再び増加し、頂点に達し、減少し、さらに再び増加するという過程(動的平衡状態)を繰り返します。







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