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進め方1
1. これは「食物連鎖」に関する学習であることを、説明してください。「食物連鎖」という言葉についてよく知らない場合は、用語の定義を説明してください。(食物連鎖とは、ある地域の生き物の「鎖」のようなつながり、すなわち「連鎖」のことで、ある生き物を食べる生き物が、それを捕食する生き物に食べられるという関係が繰り返されるものです。例えば、ケイソウがミネラルなどの栄養分を食べ、ミジンコがケイソウを食べ、カキ・ホタテがミジンコを食べるという具合につながります。)
 
2. 子どもたちを3つのグループに分けます。26人のクラスでは、「カキ・ホタテ(魚貝類)」が2人、「ミジンコ(動物性プランクトン)」が6人、「ケイソウ(植物性プランクトン)」が18人の割合が適当です(ミジンコはカキ・ホタテの3倍、ケイソウはミジンコの3倍の割合にします)。役割を簡単に区別できるように、「カキ・ホタテ(魚貝類)」「ミジンコ(動物性プランクトン)」「ケイソウ(植物性プランクトン)」に目印をつけます。例えば、「ケイソウ(植物性プランクトン)」は緑の腕章をつけ、「カキ・ホタテ(魚貝類)」は赤いバンダナをつけ、「ミジンコ(動物性プランクトン)」は茶色の腕章をつけるか帽子をかぶります。
 
3. 「ケイソウ(植物性プランクトン)」一人ひとりに、小さな封筒か同じような袋を配ります。この紙袋は生物の「胃袋」を表します。
 
4. 50m×50m程度の広い場所に、「栄養分」を表す無色のチップと色のついたチップを、各々の色ごとにエリアを決めて散布します。子どもたちに目を閉じてもらうか、その他の方法で、チップをまいた場所を知らせない工夫をしてください。体育館で実施したり、机やいすを移動させて室内で実施してもよいでしょう。
 
5. 子どもたちにゲームのルールを説明します。最初に「ケイソウ(植物性プランクトン)」が餌を探しに行きます。「カキ・ホタテ(魚貝類)」と「ミジンコ(動物性プランクトン)」は指導者と同じラインに集まり、静かにケイソウを観察します。これはつまり、捕食者である「カキ・ホタテ(魚貝類)」と「ミジンコ(動物性プランクトン)」が餌を観察しているということです!合図に従い、ケイソウは活動区域に入り、餌を集めて胃袋(紙袋)に入れます。ケイソウは、急いで30個以上の栄養分を集めなければなりません。30秒後には、ミジンコがスタートします(この時、カキ・ホタテとミジンコがカウントダウンを行うと、臨場感があります)。
 
6. 次は、ミジンコがケイソウを捕まえる番です。ミジンコは、チップを集めながら、逃げなければなりません。カキ・ホタテはまだサイドラインで待機します。ミジンコがケイソウを捕まえる時間は、活動場所の広さと状況を考慮して決めます。教室では、10秒程度、これより広い場所では30秒程度がめやすになります。が、それぞれのミジンコが、1匹から2匹のケイソウを捕まえたところで、カキ・ホタテをスタートさせます。ミジンコに捕まった(ミジンコにタッチされた)ケイソウは、その場で、栄養分の入った紙袋をミジンコに渡してサイドラインに座ります。ミジンコは、紙袋を受け取ってから、次のケイソウを捕まえに行きます。
 
7. 次はカキ・ホタテが獲物を捕まえる番です(15〜60秒程度、状況を見ながら設定します)。ルールは次のとおりです。引き続き、生き残っているケイソウはミネラルなどを表す栄養分チップを集め、ミジンコはケイソウを捕まえます。カキ・ホタテはミジンコとケイソウの両方を捕まえます。カキ・ホタテに捕まった(カキ・ホタテにタッチされた)ケイソウは、その場で、栄養分の入った紙袋をカキ・ホタテに渡してサイドラインに座ります。カキ・ホタテは、紙袋を受け取ってから、次の獲物を捕まえに行きます。カキ・ホタテがミジンコを捕まえたときは、カキ・ホタテはミジンコからすべての紙袋を受け取り、ミジンコはサイドラインに退出します。生き残りのミジンコが2人程度になったらストップをかけ、栄養分の入った袋を持ったまま集合します。
 
8. 「死んだ」子どもたちに何の生物になっていたか、何に食べられたか質問します(子どもたちに目印がついている場合は一目瞭然です)。次に、「生き残り」の子どもたちの胃袋の中身を自分の前に出し、栄養分を表すチップがいくつあるか数えてもらいます。子どもたちは、紙袋(胃袋)の中の無色のチップの合計と、色のついたチップの合計を数えます。「生き残り」のケイソウの数と、それぞれが持っている無色のチップと色のついたチップの合計を出します。「生き残り」のミジンコの数と、それぞれが持っている無色のチップと色のついたチップの合計を出します。最後に、「生き残り」のカキ・ホタテの数と、それぞれがもっている無色のチップと色のついたチップの合計を出します。
 
9. 「ミネラル」と呼ばれる物質が自然界に存在することを子どもたちに説明します。政府や各県が耕地面積を増加して食糧の増産政策を進めるために、一部の山林では、落葉広葉樹林が伐採されたと想定します。落葉広葉樹林が減少すると、木の葉が腐って堆積した「腐葉土」が減少し、その中に含まれるミネラル等の栄養分が減少します。ミネラルは海洋性植物プランクトンの成長に必要な栄養分で、川の上流にふった雨が川に溶かして海に運んでいます。この活動では、無色のチップが広葉樹の森から流れ出すミネラルを表し、森林伐採により供給されなくなったことにします。ミジンコに食べられなかったケイソウも、紙袋の中に色つきチップが30個以上ない場合は、死んだことにします。紙袋の中に60個以上の色つきチップがないミジンコも、死んだことにします。色つきチップが90個以上ないカキ・ホタテも、この場では死なないこととしますが、ミネラルが不足したため、体が小さく弱くなり、病気にも抵抗できません。この時点では、残りの栄養十分なカキ・ホタテには、まだ明らかな影響はありませんが、餌場にミネラルが不足する可能性を指摘します。
 
10. この学習で経験したことについて話し合います。食物連鎖がどのように機能しているか、ミネラル等の栄養分がどのように生態系に取り込まれ、さまざまな役割を果たしているかという点について、この活動でどのようなことを体験したか子どもたちに質問します。この活動で模擬体験したケイソウ、ミジンコ、カキ・ホタテという食物連鎖のように、他の生き物の例を、子どもたちに指摘してもらうのもよいでしょう。
 
オプション(模型を使ってのデモンストレーション)
1. 底の平らな盆か容器に底から2.5センチのところまで水を入れる。
 
2. 2個のスポンジを水を入れた透明容器の中に置く。このスポンジは、模型の川(または海)に接する「山(または陸地)」となる。
 
3. 一つのスポンジの上にスプーン一杯分のミルクココアをのせる。
 
4. この模型は川(または海)で、スポンジは山(または陸地)であることを生徒に説明。
 
5. どちらの山(または陸地)にも同じ保水能力があるが、一方は禿山で、もう一方の山林には腐葉土が堆積していると説明する。
 
6. 計量スプーン(またはシリンダー15ml)一杯の水を見せる。それぞれの山(または陸地)に、これだけの「雨」が降ったらどうなるか予測させる。
 
7. それぞれの「山(または陸地)」にスプーン一杯ずつの水をたらす。観察したことを生徒に尋ねる。[ほとんど答えがないか、「地面(スポンジ)が水を吸収した」と言うだろう。]土中に徐々に浸みていって、地中を流れていく水を地下水と言うと説明。
 
8. この2つの山(または陸地)に、もう一度スプーン一杯の「雨」が降ったらどうなると思うかと聞く。もう一度水をたらし、観察させる。必要なら、スプーン一杯ずつ水をたらし続ける。どちらの山(または陸地)にも同じ量の「雨」を同じように降らせること。
 
9. 実際には、雨がたくさん降ったら、地面の水は溢れて出てくる。それ以上水を吸収できなくなり余分の水は腐葉土と共に流れる。これにプランクトンの成長に必要な栄養分が多く含まれているのです。
 
10. 生徒達に、この実験から何がわかるか尋ねる。[もし生徒達が、「川の上流にふった雨が、腐葉土の中の養分を川に溶かし海に運んでいる」と気付いたら、川の流域に落葉広葉樹(ブナやカエデ、ナラなど)の森を守り育てることが、カキやホタテの成長にとっても大切なことなのだと説明する。]
 
進め方2
 森を作る漁師さんの話をしてください。
 日本で森を育てている漁師さんがいます。宮城県の畠山重篤(はたけやましげあつ)さんです。畠山さんは、気仙沼湾でカキやホタテの養殖をしています。
 1980年代のはじめの頃、気仙沼では海が汚れて赤潮が発生しました。このため、養殖しているカキの身が赤くなる「血ガキ」の被害が続いていました。当時、畠山さんは、視察に訪れたフランスのカキ養殖場で、あることに気づきます。「川の上流にあるブナやクルミの森。その森がきれいな海を守っているんだ!」。
 日本に帰った畠山さんは、さっそく気仙沼湾上流の室根山に木を植えようと呼びかけました。それから12年、これまでに植えられた木は、3万本にもなるそうです。「漁師が山に木を植える運動は、今では日本各地に広がっているんですよ」と、畠山さんは教えてくれました。
 カキやホタテは大量の植物性プランクトンを食べて育ちます。プランクトンが多く発生するには、海水の中に窒素やミネラルが豊富でなくてはなりません。これらの養分を海に補給しているのが「森」であることが最近わかってきました。木の葉が腐って堆積した「腐葉土」の中に、プランクトンの成長に必要な養分が多く含まれているのです。川の上流にふった雨が、腐葉土の中の養分を川に溶かし海に運んでいます。ですから、川の流域に落葉広葉樹(ブナやカエデ、ナラなど)の森を守り育てることが、カキやホタテの成長にとっても大切なことなのです。
 こうして、だんだんと森と川と海のつながりがわかってきました。畠山さんは、「森は海の恋人」を合い言葉に森を守る運動を続けています。森を大切にして、人間が川や海を汚さないよう気をつければ、これからもずっとおいしいカキやホタテを食べることができそうです。
 
ふりかえり
 海が森とつながっていることがわかりました。では、日本や外国の森や川、海を守るために私たちは一体どんなことができるのでしょう?
 
森と川と海を守るためのエコライフヒント
(キッチンで)
●食器の油はまず拭き取ってから洗おう。
●油を使う料理を減らしてみよう。
●食器用洗剤の使用量を減らそう。米ぬかや、生分解されるエコ洗剤も試してみよう。
●間伐材(かんばつざい)でできた食器を使ってみよう。
 
(洗面所やオフロで)
●シャンプーや歯磨き粉の量も考えて使おう。
●カビやぬめりを取るのに塩素系の洗剤が本当に必要かどうか考えてみよう。
 
(テレビや新聞や雑誌を見ている時)
●川や森や海のニュースがないか目を向けてみよう。
●シベリアや中国など日本に近い国々の森に関する情報に目を向け、日本とのつながりを考えてみよう。
 
(山や川に行ったとき)
●森と川がどのようにつながっているのか調べてみよう。
●森の大きさだけでなく、森の健やかさにも目を向けてみよう。
→たとえば、木が多くて豊かに見える森も、よく見ると傷ついていたり元気がなかったりします。
●森を元気にするためには何が必要か、地元の人に聞いてみよう。
●森や川の生きものが昔と比べて減っていないか、地元の人に聞いてみよう。もし減っているとしたら、何が原因なのか考えてみよう。
 
(その他にも)
●NGOの会員になろう!
→環境保護活動に取り組んでいるNGOの会員になって活動したり、寄付をすることで自然保護に積極的に参加することができます。
→主な環境保護団体は、こちらをご覧ください。
●家を建てる時は、外国産の木材ではなく国産のスギやヒノキを使おう。
→これまでは「国産の木材は値段が高い」と言われてきましたが、よく調べてみると住宅を建てるコストに木材の占める比率はそれほど高くないことが分かります。
 
詳しくは、つぎのホームページを参照ください。
■地球の友ジャパン住宅プロジェクト
■(財)日本木材総合情報センター
 
●専門の機関を作って森林破壊や環境破壊の少ない森で育った木材を認証するという制度づくりが進んでいます。近い将来、消費者や企業が「環境に優しい」と表示された木材を選んで買うこともできそうです。
■森林認証に関するサイトWWFジャパン







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