日本財団 図書館


6 なぎさ水族館
潮だまりの生物観察
●ねらい
 潮だまりの生きものの観察を通して、生物の多様性に触れる。直接観察を通して、海洋生物が様々な形態と、それに関連した食性や生態等を持つことを知る。
●概要
 潮間帯、潮だまりの生きものを一時的に採集して水槽に入れて観察する。参加者の共同作業で海辺にその時だけの水族館を作る。
●背景
 潮だまりはきわめて生物の多様性が高い。単に種類が多いだけでなく、様々な姿や生活スタイルがみられ、分類群もまた多様である。自然観察において、もっとも楽しく、驚きに満ちているのは自然の「多様さ」に触れることであろう。多様性を知ることは環境教育においても非常に重要である。その意味で潮だまりは素晴らしいフィールドだといえる。潮だまりでの活動のメインテーマは「多様性」である。また、潮だまりでの活動は比較的安全で、泳げない人でも参加することができる。
 
●所要時間:1時間から3時間
●対象:幼児〜大人
●場所:危険が少なく、多様性の高いタイドプールのある海岸。採集行為に対してアレルギーがある場所での実施は難しい
●人数:スタッフ対参加者比率が1:5ぐらい。実施地によって環境への影響が大きすぎない程度の人数にする。
●季節:暖かい時期、干潮時
●科目:理科・総合的な学習
●技能:探す・触る・観察する・発表する
●準備するもの:水槽・たも網・テーブル・箱眼鏡・「なぎさ水族館」看板・「なぎさ水族館はこちら」サインボード(誘導用)・解説ボード(説明用のイラストが描かれた紙芝居的なボード)・ホワイトボード(せんせいorスケッチボード)・タープ・釣りセット・図鑑セット・耐水紙・マジック・水槽につけるネーム・ワークシート・救急セット・飲み物・3点セット・エアレーション
 
導入
(1)目標(水族館づくり)の説明。「みんなで協力してここに今日だけの水族館を作ろう!」投げかけの言葉として、たとえば「みなさん、なぎさ水族館へようこそ。・・・といっても、水槽に何も生きものが入っていません。本当のなぎさ水族館はあそこ(潮だまり)にあります。できれば、そーっとのぞくのが一番いいのですが、じっくり観察したり、小さい子にも見られるように、今日は一時的に生きものをつかまえてここに今日だけの小さな水族館を作ってみましょう・・・」
(2)その後、採集時の注意を説明。危険な場所、危険な生きもの、同じ生きものをたくさんとらない、採ったら死んでしまいそうな生きものはやめようなど。
 
展開
(1)小グループでの観察、採集。随時、解説を入れる。
(2)移動しながらできるだけ多くの種類をみつける。
(3)グループワークで水族館づくり。採集したものをいくつかの水槽に分けて展示する。分け方は、あらかじめ用意した水槽につけるネーム(泳ぐもの、はうもの・・・)等をリーダーが指定するか、もしくは参加者に決めてもらう。
(4)出来あがったら、じっくり観察しながら、いくつかの種類について、えさのとり方や、暮らし方についての解説を行う。このとき、参加者以外で興味を持って近づいてくる人も巻きこんで解説する。
 
まとめ
 本当の水族館と自然の海との違いを説明しながらまとめをする。例えば、「水族館では飼育係の人が餌をあげたり、水を換えたり、たくさんの手間をかけて魚を飼育しているけれども、潮だまりでは誰も餌をあげなくても生きものどうしが食べたり、食べられたりしながら、たくさんの種類が暮らし続けているんだね」など。また来た時に会える様に逃がしてあげて、水族館を閉館する。参加者に感想を言ってもらう。
 
準備
 タープをはり、その下にテーブルを設置、空の水槽を数個置いておく。「なぎさ水族館」の看板および、「なぎさ水族館はこちら」サインボードを設置しておく。
発展
 時間があれば参加者が「学芸員」になって近くを通る人に解説してあげるようにうながす。
達成目標
 参加者は生きものに直接触れる体験をする。潮だまりに暮らす生きものをいくつかあげられる。いくつかの生きものについて何をどうやって食べているかを説明できる。自然の潮だまりが水族館以上に魅力的であることを知る。
 
7 「プレイバックお絵かき」
ビーチコーミング
●概要
 海辺に落ちている様々なもの(かけら)から、以前の状態を想像して絵を描いてみる。
●ねらい
 想像力を働かせて、漂着物を観察する。自分の考えを表現してみる。
 
●所要時間:30分〜1時間
●対象:小学生〜大人
●人数:
●季節:いつでも
●科目:図工・総合的な学習
●技能:探す・観察する・想像する・絵をかく
●準備するもの:クレヨン・色鉛筆など・画用紙・クジラや動物の骨など
 
導入
 海岸でビーチコーミング(漂着物ウォッチング)を行う。
 
展開
 見つけた何かの「かけら」、例えば生きものの体の一部、食器の破片などから、想像力を働かせて、それが過去へ生きていたときの様子や、海岸に流れ着く前の様子を絵にしてみる。周囲の環境なども書くように促してもよい。ペアを作り、かけらを交換(プレゼント)して、自分以外が拾ったものについても描かせても面白い。
 
まとめ
 クジラの骨や、大型の動物の骨などのかけらを用意し、グループで砂浜に大きく実物大で「プレイバックお絵かき」をしてみる。
 
実施のポイント
●「想像力を働かせる」ことは、本アクティビティに限らず、ビーチコーミングを楽しむ際の大きなポイントになる。正解を出すことだけでなく、自由に発想することを促したい。
達成目標
 漂着物が流れ着いた背景を想像しながらビーチコーミングできるようになる。
 
8 一握りの砂の中に
海岸の砂は何でできているのかな
●概要
 海岸の砂を少量採取し拡大鏡で調べてみる。いろいろな海岸の砂を比べてみる。
●ねらい
 砂粒の中からいろいろな形を探し出してみる(多様性)。海岸によって異なり、様々なもので構成されていることを知る。
●背景
 海岸の砂の成分は一般に、その地域の環境を反映している。砂の供給源となっている場所(崖や川など)の地質によって、堆積岩であったり、火山岩であったりする。例えばサンゴ礁地域の砂は、波で砕かれたイシサンゴ類の骨格や有孔虫が主成分となっている。
 海岸の砂の多様性に気づき、海辺の自然について学習するきっかけとする。
 
●所要時間:50分〜1時間30分
●対象:小学生〜大人
●場所:海岸と教室
●人数:
●季節:いつでも
●科目:理科・生活・総合的な学習・図工
●技能:観察する・絵をかく・想像する
●準備するもの:砂のサンプル・ルーペ・実体顕微鏡など
 
導入
(1)「砂って何でできているのかな?」
 
展開
(2)いろいろな地域の海岸の砂を拡大して観察してみる。
(3)どんなものが見えたか発言してもらう。
(4)砂の観察から、海岸の風景を想像して絵を描いてみる。
 
まとめ
(5)「海岸の砂はどこからくるのかな?」「今度でかける海岸の砂はどんなだろうか?」と、思いを巡らしてみよう。
 
発展
 実際に近くの海岸に出かけ、砂や周辺の自然を観察する。インターネットなどを利用し、他の地域の学校と交流して、それぞれの地域の砂を交換するなどして、いろいろな海域の砂を比較してみる。
評価
 
9 海辺アート
砂浜をキャンバスに絵をかいてみよう
●概要
 海岸に落ちているサンゴや貝の殻、流木などの漂着物を使って、砂浜の上に作品をつくる。
ねらい:海辺の自然素材を使った遊びの楽しさを体験する。自然物の形の多様性を知る。(多様性)視点を変えてみることの面白さや、人それぞれの感じ方や表現方法の違いに気づく。
●背景
 環境教育では、自然科学的な視点からのアプローチが中心になる傾向があるが、自然科学的なものの見方は、人の自然観を形作る要素の1つにしか過ぎない。持続的な社会を実現するための環境教育においては、科学的な視点だけでなく、自然の素晴らしさに感動する感性や、言葉や絵で表現する力、他の人の言葉に耳を傾ける態度などを育むことも重要であろう。今日の環境教育の取り組みでは、科学だけに偏重するのではなく、感性を豊に働かせる活動や、芸術的な手法で表現する活動など、幅広いアプローチがとられている。本活動は、特別な道具を使わず、大人から子どもまでもが楽しめる海辺の自然素材を使った簡単な表現遊びである。
 
●所要時間:30分〜1時間
●対象:幼児〜大人
●場所:河原、湖畔
●人数:5人(1セット)
●季節:いつでも
●時間帯:昼間
●科目:図画工作・理科
●技能:さがす・さわる・描く・感じる・見つける・表現する
●準備するもの:レンタルボックス(説明書・ポスターカラーマーカーペン・見本の石、発表会用シート)
 
導入
(1)浜辺にある素材でアート作品をつくる動機付けをする。投げかけの言葉として「いつも、絵を描くときにはどんな道具を使いますか」「ここ(砂浜)にはキャンバスも絵を描く道具も無限にあります。」「海辺には面白い形や模様をした物がいっぱい。周りにある面白い形のものを、1つひろってみましょう・・」
(2)海辺に落ちているもので絵を描くことを説明する。
(3)テーマを設定する。テーマはプログラムの流れを考えて適宜設定する。たとえば、「自分の好きな海」「海の思い出」「海の中」「ともだち」「今日印象に残ったこと」など。また、参加者が相談して決めてもよい。
 
展開
(1)素材になるものを探す。
(2)各自が十分に落ち着いて作業ができるような場所に移動する。作品を作るのは、礫質の浜より砂浜の方が(キャンバスとして)適している。
(3)砂の上に集めてきた材料で作品を作る。場合によっては流木などで枠を作った方が取り組みやすい。
(4)各自の作品にタイトルをつける。簡単なタイトルであれば、枝上のサンゴなどを使って文字をつくっても楽しい。
※作成しているとき、材料を見つけるのが苦手な参加者がいたり、表現が苦手な参加者いる場合もある。指導者は状況に合わせて、参加者が楽しく実施できるように、言葉をかけるなどの援助をしたい。
 
まとめ
(1)作品ができあがったら、それぞれの作品の周りに集まり、製作者にタイトルを発表してもらう。(わかちあい)
※指導者は工夫したところをたずねたり、よくできた点を誉めたりしながら話をする。他の参加者も自由に発言できるような雰囲気をつくるとよい
※まとめの時間は作品の善し悪しの評価ではなく、それぞれの表現したものや、創ってみた感想を分かち合う時間であることに留意し、積極的によい点をひろってコメントしたい。
※海辺での表現活動のよさは、波の音や、海や空の風景などが背景としてあることであろう。そのような点も気づかせるような言葉を投げかけたい。
※「海辺アート」はその場限りである点も、面白い点ではあるが、デジタルカメラ等で作品を記録しておくと、他の活動で利用したり、その場に居合わせなかった人に見てもらうことができる。
 
発展
●個人での作品作りの後に、今度はグループで大きな作品を作ってみる。
●漂着物に目を向けて歩いてみよう(ビーチコーミング)







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