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第2部
総合的な学習でぜひやってみたい水辺の自然体験プログラム
ここからは、水辺で環境教育の視点を大切にしたプログラムの例を紹介します。
表現したり、観察したり、考えてみたり、いろいろなタイプの活動が紹介されています。
水辺での活動には危険が伴うこともありますので、必ず先生(大人の指導者)と一緒に行動することを、
子どもたちに徹底しておきましょう。
 
0 プログラムの作り方について
(株)自然教育研究センター
小林毅
 近年、インタープリテーションや環境教育のプログラム集が盛んに発行されるようになってきました。海外のプログラムも合わせるとかなりの数になります。こういったプログラム集は、環境教育の活動を計画する際に、ねらいにあったプログラムを選んで使うのに大変重宝です。しかし、適切に既存プログラムを活用するには、やはり、自らがプログラムデザインのコツを知っていることが大切になります。既存のプログラムでも、参加者や場所などに合わせてアレンジしながら実施する必要があるからです。以下に、簡単にプログラムの作り方(流れ)について紹介します。図もご参照下さい。
 
(1)ねらいを考える
 活動を通じてどんなことを参加者に伝えたいのか、何を学んだり、得て欲しいのかを考えます。ねらいは、漠然とした「思い」ではなく、できるだけ具体的にします。ねらいの書き方としては、「〜を体験する」「〜を観察する」というのではなく、「○○を通して○○を知る、○○を理解する」といった書き方をするとよいでしょう。
 また、ねらいの設定では、できるだけ環境教育の目標段階(自ら問題に気づいたり発見できるようになる→自らその問題の理由を知ることができるようになる→自ら判断ができるようになる→自ら決断し、行動できるようになる)に沿ったものにすることがポイントです。
 
(2)参加者を把握する(参加者理解)
 参加者がどんな人なのか、つかんでおきましょう。年齢層は? 参加経験は? どんなことに興味をもっているのか? 何人参加するのか? こういったことを事前に把握しておくことは、プログラムを考える上で大変重要です。特に参加者が子どもの時など、自分と異なる年齢層だったり、自分と経験の異なる人の場合には、慎重にプログラムを構成していく必要があります。
 
(3)下見(調査)
 下見では、ルートの確認や危険な場所を把握することも大切ですが、プログラム計画のために必要な情報を調べます。つまり、(1)で設定したねらいを、(2)で把握した参加者に伝えるのに適した素材を探します。
 
(4)気づき
 本で知ったり、人に聞いたりするのではなく、インタープリター自らが直接、自然からのメッセージを感じとっていることが大切です。どのような体験を通じて発見や気づきがあったのかについて意識しておくことがプログラム計画の一番の基本となります。もちろん、インタープリターの普段からの自然体験や経験の蓄積もとても大切です。
 
(5)プログラムを作る
 (1)〜(4)をふまえて参加者がねらいを自ら感じ取ってもらえるような体験活動を考えます。プログラムでは、「導入」「展開」「まとめ」といった流れを意識しましょう。また、それぞれの段階での、参加者の気持ち(心)の動き、学びの流れをイメージし、それに指導者としてどのようにかかわっていったらいいのか、考えておきましょう。
 
(6)プログラムを実施する
 参加者に自然体験をしてもらいます(7)。インタープリターとしては伝えたいことを教えてしまうのではなく、体験を上手に促すことが大切です(8)。具体的にどのような声かけをしたらいいのか考えておきましょう。また、参加者の学びの瞬間を見逃さないようにしたいものです(9)。タイミングよく参加者の反応や気持ちを受けとめてあげることができれば、参加者の学びはとても印象深いものになるでしょう(10)。
 
(11)参加者からのフィードバックをうける
 プログラムは、上手に進められた場合でも、ちょっと失敗してしまった場合でも、次の機会につなげることが大切です。そのためには、プログラムの実施中に参加者の反応を敏感に感じ取り、次回のプログラムづくりにいかしていくという意識が、インタープリターには必要です。また、参加者からの感想を聞くことで、自分では見えない部分についてのフィードバックを受けることができるでしょう。
 
(12)記録しておこう
 活動の内容や参加者の反応は、他の記録と合わせて必ず残しましょう。自分で気づいた改善点、参加者からのフィードバックも忘れずに。こういった蓄積ができれば、あなたはきっと、素敵なインタープリターになれることでしょう。
 
(拡大画面:23KB)
 
下記の表は、今回紹介するプログラムの一覧です。
 
アクティビティ 切り口 タイプ ながれ 対象学齢
1. ストーンペインティング 河原 表現する 導入的 幼児〜中学生
2. ともだちの石 川原 調べる 本体的 小5〜小6
3. 好き?嫌い? 感性 導入的 小1〜中学生
4. 水いでる森 水源林 観察する 本体的 小4〜小6
5. 川の合唱団 表現する 導入的 小4〜小6
6. なぎさ水族館 観察する 本体的 幼児〜中学生
7. プレイバックお絵かき 海岸 表現する 本体的 小1〜中学生
8. 一握りの砂の中に 海岸 調べる 本体的 小4〜中学生
9. 海辺アート 海岸 表現する 本体的 幼児〜中学生
※各アクティビティはアレンジによって高い年齢にも適合させることができます。
 
プログラム提供
(株)自然教育研究センター:小林毅・古瀬浩史
プログラム出典
・山のふるさと村ビジターセンター平成12年 環境教育活動報告書(1・3)
・山のふるさと村ビジターセンター平成13年 環境教育活動報告書(2・4・5)
・賀茂村自然体験プログラムティーチャーズガイド(6)
・体験的に学ぶ「サンゴ礁」ティーチャーズガイド(8・9)
・自然教育研究センター未発表資料(7)







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