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第1部
自然体験プログラムの指導法
自然体験プログラムを行うときに押さえておきたいことと、自然体験プログラムを実施する際に、基本的に押さえておくべき点について、まとめられています。
自然と親しむ活動とはいっても、私たちが活動したことにより、知らず知らずのうちに自然を傷つけてしまうこともあります。
そうしたことを防ぐために、プログラムを行うときには、なるべく自然に対してインパクトを与えない方法を探る必要があります。また、どんな活動にも危険はつきものです。
なおこの部分は、昨年度作成した「小学校での『総合的な学習の時間』に役立つ身近な自然から気づくきっかけプログラム集」のp4〜15をそのまま流用しています。
 
1 自然体験を一緒に楽しむために
1)プログラムを行う際の指導者の心構え
●危険予知と自己回避
 自然体験活動は、野外活動という性格上、白然から得る感動も大きいとともに、様々な危険をはらんでいます。
 安全対策は、『危ない』からと子どもの行動を制御するよりも、あらかじめ危険を予測して、危険をなくす、あるいは緩和する方向で考えましょう。同時に、万が一の対策を講じ、他の先生との打ち合わせを徹底しましょう。
 子どもに対しても、どこに危険が潜んでいるかを伝え、自己回避の考え方を伝えましょう。
 
●フィールドマナーを守ろう
 自然体験の実施は、少なからず自然環境にインパクトを与えてしまいます。良い自然体験を持続的に実施できるように、正しい自然とのつきあい方を伝えることも大切です。
・ゴミを捨てない(フィールドにゴミが落ちていたら拾って帰ろう!)
・植物や生きものをむやみに傷つけない
・立ち入り禁止の場所に入らない
 
2)危険な動植物とその対処
●ヘビ! ヘビに噛まれたら、とにかく病院へ!
※たとえ毒ヘビではなくても、バイ菌で化膿する場合があります。
予防法
ヘビに危害を加えないこと(ヘビは本来臆病な生きものです)。
薮や木の穴、石の陰などに安易に手足を入れないこと。
 
●ハチ! ハチに刺されたら、患部を水で洗い、抗ヒスタミン軟膏を塗る!
※ミツバチに刺されたら、先に針を取り除くこと。
※応急処置後は病院へ行って、症状を診てもらいましょう。
※過去にハチに刺されていると、身体がハチ毒に過剰反応します。致命傷になる可能性もあるので、子どもの被害経験を知っておきましょう。
予防法
ハチの姿や巣を見たら近づかない。
ハチが近づいてきたら動かない。
 
●ダニ! 手当てに慣れていない場合は、無理に除去せず病院へ!
※無理にダニを除去すると、口器が体内に残り、細菌の二次感染の原因に。
※除去を行った場合は、傷口を良く消毒し、抗ヒスタミン軟膏を塗る
予防法
肌の露出を少なくすること。薮の中にむやみに入らない。
(首筋や頭は帽子やバンダナで保護すると良い)
 
●かぶれる植物! かぶれたら、掻かずに、冷やして、抗ヒスタミン軟膏を塗る!
予防法
肌の露出を少なくすること。種類を覚えて、近づかない。
※植物のかぶれは、季節差や個人差があるので、子どもの体質を理解しておきましょう。
 
2 活動前の注意点
1)活動の流れの作り方
 自然体験プログラムを実施するときには、子どもの心の変化を意識しながらプログラムを組み立てることが重要です。
●まず、子ども達のやる気を刺激しよう
 プログラムを実施するときは、まず第一に子ども達のやる気を刺激しましょう。動き回りたい子どもを無理に静かにさせようとしても、うまくいきません。遊びの要素が高い活動で、楽しい活動が始まることを伝えることが大切です。
 
●次に、意識を自然に向けて集中させてあげよう
 子ども達が活動に熱中してきたら、その熱意を何か一つのことに集中させていきましょう。五感を使って集中することで、より深い気づきを得ることができます。
 
●最後に、一人ひとりの気づきを共有しよう
 子どもの気づきを受け止めることを、重視しましょう。各自の気づきは、友だちや先生と共有することで確認され、広がり深まります。そして子ども達の熱意から生まれた気づきは、その後の学びの原動力となります。
 
2)下見の方法
 プログラムを実施するためには、事前の下見が不可欠です。下見を充分に行うことで、事前準備や当日のプログラムの充実度が違います。
下見を行う目的は、
 
●プログラムとの照合
 フィールドに予定している場所は、プログラムが行える条件を満たしているか確かめます。
 
●危険の回避
 子どもの安全を確保するために、動植物や地形、交通事故や迷子などの危険を予測して、その対策を検討します。
 
<下見チェック項目>
3)備品の準備
 下見を行い当日のイメージが固まったら、備品をリストアップしましょう。
 
●子どもの持ち物を連絡する
 子どもの持ち物と服装は、事前に連絡してあげましょう。必須の備品は、忘れ物に備えて指導者が予備を用意する必要があります。
 
!服装3点セット! 長そで・長ズボン・帽子
(肌の露出を防ぐことで、大半の危険から身を守ることができます)
※時期に合わせて、水筒や防寒着を用意させましょう。
 
●プログラムに必要な備品を用意する
※救急用品も忘れずに!
 
3 活動中の注意点
1)活動中の心構え
●チャンスを逃さない
 自分の伝えたいことだけを重視するのではなく、思いがけない自然現象や子どもの発見を大切にしましょう。
 
●一緒になって楽しむ
 先生自身が楽しんでいないと、子どもへの言葉が表面的になってしまいます。自然の中で子どもと一緒に楽しむことを忘れないようにしましょう。
 
●説明は短く
 長い話は、子どもの集中力を奪います。結論を先に話して、説明を補足していきましょう。ルール解説は要点をまとめて話しましょう。
 
2)分かりやすい説明をするためのポイント
・「百聞は一見に如かず」というように、口で伝えるよりも、具体的なやり方をデモンストレーションして視覚的に説明するように心がけましょう。
・絵本や小物を見せながら説明すると、子どもの興味を指導者に向け、短い時間で説明を済ませることができます。
 
4 ふりかえりの重要性
 「ふりかえり」は体験学習で最も重要な部分で、子ども達の気づきを整理する時間となります。活動後にふりかえりを行うことで、子ども達は体験を記憶や記録として定着させ、自分のものにすることができるのです。
 「ふりかえり」は個人で行うだけではなく、関わった全員で「分かちあい」を行うことで全員のものになります。相互作用によって、より高い効果を期待することができます。
 自然体験プログラムから「総合的な学習の時間」が発展していくためには、
という、末広がりの終わり方が必要です。
 
●ふりかえりでは、以下のステップを踏むことが大切です。
1)思い出す
 「体験や気づきを思い出す」ことは、プログラムの実施から時間が経てば経つほど、実施が困難になります。「思い出す」作業は、プログラム実施から時間をなるべく置かないように実施しましょう。
その際には、
 
・子どもに思い出す時間を充分に与えること
・子どもが自然体験を思い出せる言葉がけ
 
を意識して下さい。
 
「はじめに何をやったかな?」
「○○を見つけたのは誰だっけ?」
「〜がきれいだったよね。」
 
など、全体像を思い出せる言葉がけが良いでしょう。
 
2)表現する
 体験は、思い出したことを形にすることで、より具体的に記憶として残ります。
学年やプログラムに合わせて、
 
・声に出して発表する
・文章や絵で表現する(作文、アンケート、詩など)
 
などの方法が考えられます。
 いずれにおいても大切なことは、子どもが『自分の思いを率直に表現出来る』雰囲気を事前に作っておくことです。「表現する」段階で先生が意識したいのは子ども達の気づきの内容であり、表現の巧拙ではありません。
 
3)分かちあう
 体験を「分かちあう」ということは、自分以外の体験や気づきを「共有する」こと、と置き換えることができます。
 他の人の気づきに触れることは、子ども達の視野を広げ、感性を刺激します。自分が体験したことを、より深く、興味をもってとらえることができます。
このとき先生は、
 
・子どもの気づきを否定しないこと
・一人ひとりの良さを強調してあげること
を意識してください。そして、
 
「みんなはどういうふうに感じた?」
「他に同じように思った人はいるかな?」
 
など、1人の子どもの気づきを、全員の共通認識として広げられる言葉を返してあげましょう。また先生だけでなく、子ども達が他の子どもの気づきを受け止め、肯定する姿勢を持てるように促す努力をしてください。







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