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長崎空港勢力圏・九州圏域の貨物をターゲットとする場合
 特に基礎需要を開拓し、取扱い利便性を高めることが最も重要となる。旅客需要を活発化させ、貨物の動きに適応した運航・路線構成への展開を図る必要がある。
 
【貨客両面からの基礎需要の掘り起こし】
 
●ベリーの活用
・当面は、上海、ソウルの既存路線のベリー貨物の有効活用が重要である。中国や韓国側でのプロモーションなどにより、積極的に固定荷主の開拓を行い、より低廉な運賃で貨物が運べるような仕組みを検討する必要がある。また、長崎県内における事業者を取り込んだロットのとりまとめも必要である。
・長崎観光の活性化による旅客需要の開拓が必要である。観光地の魅力向上、観光ルートの整備、特産品などの物産流通の活発化と需要の拡大も重要となる。
 
【長崎空港の特性や優位性を生かした中・長期的な視点での需要開拓】
 
●便の多頻度化・機材の大型化の促進
・現行の運航体制では、機材が小さいこと、便数が少ないことなどにより、貨物の定着は極めて難しい。
・便の多頻度化、機材の大型化を促進し、ベリーの利便性を高めるために、長崎県を中心とした長崎空港勢力圏における消費市場の形成、長崎への国際観光旅客の取り組みなど、中・長期的な展望に立った旅客航空需要の増大が不可欠である。
 
●特色ある東アジア路線誘致
・生産拠点、消費地として大きな市場性の成長が期待できる中国市場の開拓を積極的に行う必要がある。
・当面は、アジア需要路線(ソウル、上海、香港等)の補完機能向上が重要であるが、主要路線は供給過剰傾向にあり、近い将来、中国各都市の複数都市間の多様なネットワークの構築が必要となるものと考えられる。そこで、広州等の他の空港にはない長崎空港オリジナルな東アジア定期路線の誘致を図り、他空港との差別化を図る必要がある。
 
●北部九州圏での役割分担の仕組みを構築
・2003年以降に再び航空需要が増大基調に転じることになれば、近い将来、貨客双方から再び福岡空港の過密問題が浮上してくることが考えられる。その場合、福岡空港において国際航空貨物の一部が処理できなくなる可能性が高く、福岡新空港の整備が実現したとしても供用開始は10年以上先となるため、福岡空港の補完的な役割を担う空港が必要となり、長崎空港を活用する機会が拡大することが考えられる。
・そこで、九州の各方面から集荷された貨物を鳥栖などの物流拠点でとりまとめ、アジア路線を有する福岡空港と長崎空港、熊本空港等を巧みに使い分けることにより福岡空港への一極集中を避けることも考えられる。
 
成田空港・関西空港の代替・補完機能として需要地の貨物をターゲットとする場合
 
 需要地の貨物を取り扱う場合には、特化したサービスが求められる。すなわち、特別なサービスを提供できるようなビジネスモデルを構築することや、欧米につなぐ輸送ルートを創り出すことが重要である。そのためには、国内航空転送システムの構築や、特定荷主に対応した輸送サービスが必要となる。
 
【貨客両面からの基礎需要の掘り起こし】
 
●国内航空転送システムの構築
・長崎空港を経由して需要地である東京へのスムーズな転送を行うためには、国内定期路線との接続利便性を確保し、需要地までの直送時に匹敵するリードタイムを提供する輸送システムを構築することが必要である。また、輸出においても成田空港や関西空港の国際線との接続を前提とした輸送ルートの構築が必要である。
 
●東アジアの拠点空港を活用した欧州・北米輸送ルートの構築(仁川空港等の活用)
・欧州・北米向けの貨物は、今後、アジアの大規模空港を経由して輸送される傾向が強まる可能性が高い。当面は、既往の定期路線を活用することにより、仁川空港や上海空港などアジアのハブ空港を経由して欧米までのスムーズな輸送が可能となる輸送ルートを構築する必要がある。
 
【長崎空港の特性や優位性を生かした中・長期的な視点での需要開拓】
 
●特定荷主に対応した輸送サービス
・中国という巨大市場と日本間の国際貨物需要を取り込むため、中国等に立地する特定のメーカーをターゲットに特化したサービスを提供することにより、長崎空港を経由あるいは拠点とする独自のメリットを創り出し、日本向け出荷貨物の日本への窓口としての役割、中国向け貨物の最終加工地としての役割を担えるよう、特定荷主のSCMに組み込まれたゲートウェイとしての活用を検討する。
 
●長崎空港発着の北米または欧州路線の構築
・現在、地方空港からの欧米路線は非常に少なく、長崎空港において欧米路線の誘致ができれば、確実に貨物輸送も期待できる。
・長崎空港が他の九州の空港との差別化を図るためには、アジア路線とともに欧米路線の誘致が最も効果的と考えられ、長崎空港を北米・欧州路線など国際長距離路線の寄港地ネットワークヘの組み入れの可能性を模索するなど、中・長期の視点に立って、アジアのみならず、欧米への観光旅客誘致を促進し、欧米路線を実現させることが望ましい。
 
●24時間空港運用可能性と施設・用地の最大活用を検討
・長崎空港では、現時点においても相当の貨物処理能力を有しているうえ、海上空港である長崎空港は24時間運用の可能性が高い。将来的には既存の貨物施設に加え、未利用の空港用地を活用して24時間対応の流通加工基地を整備するなど、新たな付加価値を付けた航空輸送サービスを提供できれば、空港自体が物流拠点化し長崎空港独自の空港活用が実現する。今後は、このような可能性を需要動向やニーズを分析しつつ、検討していく必要がある。
 
(4)長崎空港における24時間運用の可能性
【24時間運用の条件と課題】
・24時間運用に係る条件としては、空港施設・貨物ターミナル施設の運用、CIQの体制整備等にかかる国の支援、騒音に対する周辺地区の理解などが挙げられるが、最も大きな課題は、夜間供用に伴って発生するコストに見合う収益性の実現であり、そのためには、長崎空港を利用するメリットを作り出して相当量の貨物を確保することが必要となる。
 
【長崎空港における24時間運用の考え方】
・深夜早朝におけるフレーターを運航させるためには、深夜早朝の利用でなければならない必然性が求められる。さらに、定期便化していなければ、24時間運用は困難である。
・相当量の貨物量が確保されることが前提となるため、特定の荷主から相当量の貨物が定期的に出荷または調達されることや、輸出の場合には、長崎空港を拠点として複数の荷主から深夜早朝に出荷配達される貨物を積み合わせることなどが求められる。さらに、輸入の場合は、深夜早朝における国内転送手段の確保も必要となる。
・現在の荷動きや企業ニーズからみて、直ちに24時間運用を行う必然性は低いものと考えられるが、福岡空港の容量限界や将来の航空利用の増大を見据えて、中長期的な展望に立った深夜早朝活用の可能性についても検討していくことが必要である。
 







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