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九州地域における「リサイクルポート」形成に向けた実証実験の提案
 九州は、大きな島としての特性があり港も数多くあり、昔から発達してきた内航海運があります。また多くの離島があり多くの船舶が様々な物資を輸送しています。また関係者による積極的な取り組みがあり、「リサイクルポート」形成の可能性が高い地域であると思います。
 ただ、そうとはいえ、放っておいても港湾を舞台にしたリサイクルが次々展開される状況ではないでしょう。EMMTの方々の取り組みでは、まさしく実際のビジネスとして行おうと思ってもなかなか物が動かない、貨物の確保や採算性の確保の難しさが指摘されています。加えて、制度なのか法律なのか縦割りなのか、実際に港で扱おうとすると出来ない場合もあります。例えば、港湾管理条例で、廃棄物を扱ってはいけないと書いていないので、これを運んでいいかと港湾管理者に聞きますと、「市なり県なりの環境の方の了解を取っているか」と言われる。そこで、今度は環境の方に行くと、「住民への説明や了解を取っているか」、あるいは「周りの企業の了解を取っているか」など、法律とは別のことを求められる。そうこうするうちに、民間企業は、時間、費用や見通しがつかないことから断念することになってしまう。法律や条例というより縦割り的な運営等により実際にはなかなか廃棄物の取扱いが実現しづらいという傾向もあります。
 
資料3 「九州地域・循環資源海上輸送プロジェクト構想」の概要
■目的
 古くから海上輸送、港湾の発達している九州地域において、港湾におけるリサイクル等の関連施設の集積を検討するとともに、廃家電、使用済み自動車等の循環資源の海上輸送の可能牲を検討し、内航海運、港湾運送等の民間事業者、港湾管理者、国等の行政関係者の協力の下で、循環資源の海上輸送の実証実験を行い、九州における循環型地域社会形成に資することを目的とする。
 
■拠点港湾、地域
・北部九州地域(北九州港、博多港等)
・西部九州地域(水俣港等)
・南部九州地域(鹿児島港、志布志港等)
・東部九州地域(宮崎港、細島港等)
 
■対象資源
 廃家電、OA機器、使用済み自動車、蛍光管、一般廃棄物等
 
■検討項目
・九州地域主要港湾におけるリサイクル等関連施設の集積の現状、可能性
・同上、循環資源の海上輸送の現状、可能性、間題点等
・循環資源の海上輸送の実証実験計画の策定、実施
 
■ポイント
・廃家電とともに、可能性のある循環資源を対象とする。
・離島からの輸送も対象とする。
・海上輸送とともにJR輸送も可能性を検討する。
 
■参加メンバー
(1)民間
(1)輸送関係
・港湾運送事業者 ・内航海運事業者 ・JR貨物
(2)リサイクル事業者
・廃家電 ・使用済み自動車等
(2)行政
・港湾管理者
・国の機関(地方整備局、運輸局、経済産業局等)
 
 そうした現状に対し、私どもは、関係行政機関に対し、九州で実際にリサイクル資源、あるいは廃棄物などを実際に海上輸送するといった実証実験のプロジェクト(資料3、図4)を提案をしています。ここでは、「北九州エコタウン」を中心に輸送プロジェクトを考えています。他に水俣や離島でのプロジェクトも考えられます。ただ、これまでの検討結果から廃家電だけでは難しいので、使用済み自動車等の他のリサイクル資源も含めて検討する必要があります。
 リサイクル資源や廃棄物の海上輸送は、社会的に必要であるが、実際にはなかなか実現しない。九州が最も可能性が高いにもかかわらず、なかなか実現しない。こういった状況に対し、実際にリサイクル資源や廃棄物をまず実証実験として輸送し、問題点を洗い出す。また実証実験を通じて、関係者の取り組みの気運を醸成することが重要です。
 関係者として、中央省庁よりも、例えば九州地方整備局とか九州運輸局、九州経済産業局といった九州を管轄する局がありましょうし、港湾管理者とともに、各県・市の環境のセクションの方々の参加も必要でしょう。また、民間の港運、内航海運、あるいはJR等に参加していただくことが必要です。
 実証実験ということで、廃家電なり、使用済み自動車なりを離島などから、北九州エコタウンなどに輸送するといったことをまずはやってみせる、そういう形で道筋をつけることが大事だと思います。決して、自然に海上輸送を活用した循環型社会の形成が実現するとは考えられません。
 
図4 
北九州エコタウンヘの循環資源・海上輸送ネットワークのイメージ
 
 まずは、日本海側から瀬戸内地域から、あるいは離島から、北九州エコタウンヘの輸送という取り組みが想定されます。次に鹿児島や沖縄の離島を含めた南九州からも考えられます。繰り返しになりますが、港湾や内航海運が発達し、離島も多く抱える九州は、リサイクル資源の海上輸送(船舶による静脈物流)の可能性が最も高い地域です。九州で実現しないならば、日本全体でも実現は難しいといえます。その九州で日本全体のテーマに取り組み、切り開いてみせるという気概の下で、リサイクル資源の海上輸送をテーマとする実証実験と、その後の円滑な事業化が実現できればと願っております。
 
討議について
 栃木講師の講演後の討議では、参加者から活発な意見交換が行われました。ここでは、その一部を紹介します。
 
・(リサイクルポートヘの取り組みは)決してバラ色ではないが、いろんな人が集まって前向きに検討するに値するものである。
 
・家電リサイクル法施行以前は、(中古の)テレビ、洗濯機、冷蔵庫が海外に輸出されリユースされていたが、施行後は輸出業者が売りさばけなかった場合に処理費を自己負担する必要が出てきたため、リユースが激減している。その意味でも、リサイクルとリユースを分けて考える必要がある。
 
・(廃家電の)指定引取場所からリサイクル工場までの輸送コストは(海上輸送より)トラックの方が安い。海上輸送を考えるならば、その前後の陸送区間を極力短くしなければならない。
 
・離島航路は本土から出港する場合は荷物があるが、帰りはない。(廃棄物、リサイクル輸送は)それを利用していかにコストを下げるかが重要。
 
・(リサイクル事業を軌道に乗せるには)ある程度取扱品目を特化して、スケールメリットを出さないと無理。そのためには国土交通省が旗振り役を務め、選択と集中をすべき。
 
・リサイクルで人手がかかるなら、工業製品などと同じように中国などに技術指導し、国際分業をすることも検討する段階にきているのではないか。
 
九州運輸コロキアムとは
 「コロキアム」とは、討議集会あるいは共同討議という意味です。
 当センターでは、運輸に関する事業者、研究者、行政に携わる皆様が知恵を出し合い、対話を行う場として「九州運輸コロキアム」を開催しています。
 セミナーや講演会とは異なり講演を聴いていただくだけでなく、ご参加の皆様方からのご発言により参加者全員で問題意識を深め、問題解決の糸口を探る絶好の機会ですので、多くの方のご参加をお待ちしております。
お申し込み・お問い合せ先 (財)九州運輸振興センター TEL:093−332−3160 FAX:093−332−3180 e−mail:ktrc@nifty.com
 
平成14年度 九州運輸コロキアム 今後の開催予定
 
通算
回数
日時 場所 講師 テーマ 内容
4 8/6(火)15:30〜 ホテルセントラーザ
博多
TEL 092−461−0111
(株)富士通総研
PPP推進室長
臼井 純子氏
これからの観光とIT戦略 昨今のITの進歩により観光ニーズと観光サービスのあり方が大きく変化している。また、観光客自身のニーズも様変わりしつつある。このような観光ニーズに対応するために、ITをどのように活用していけば良いのか事例報告を踏まえながら討議を行う。
5 10月下旬 福岡市 九州大学大学院
教授
山? 朗氏
(仮)グローバル経済における九州の地域戦略 (仮)グローバル経済化の進展とともに、産業空洞化が懸念される現在、かねてよりアジアと経済的に繋がりの強い九州が競争力強化に向けて取るべき方策と、その実現に向けた課題・解法について報告・討議する。
6 12月下旬 福岡市 (株)UFJ総合研究所
主任研究員
原田 昌彦氏
九州圏における国際港湾の発展戦略について 多くの地域において港湾振興の主眼が置かれているコンテナターミナルについて、国内外の港湾との連携のあり方を中心に、九州圏における戦略的な発展の方向性について報告・討議する。
 
 







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